中編5
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指輪の精

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少女の名前は、村崎 紫(ムラサキ ユカリ)

小学二年生。

この年頃の子は紫をユカリと読めない子が多く、クラスメイトからはムラサキという読みから、むーちゃんと呼ばれていた。

そんな少女のお話。

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両親が共働きであまり家に居ないため、祖母がゆかりの面倒を見ており、ゆかりはお祖母ちゃん子だった。

休日になると、祖母に散歩や買い物に連れて行ってもらったりしていた。

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ある休日、ゆかりはお祖母ちゃんと一緒にショッピングモールへ買い物に出かけた。

いろんな服や雑貨などを見てまわり、そろそろ帰ろうかという時、色とりどりの天然石が並ぶ店を見つけた。

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ショーケースに飾られた、赤、緑、黄、青、紫の石達。

ネックレスやブレスレット、ストラップ…ゆかりは初めて見る輝きに心奪われた。

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商品を眺めていると、店の奥に木製の箱の上面にガラスがはめられたケースが目に留まった。

中には天然石の指輪が並べられていた。

横には『天然石シルバーリング全品2000円 サイズ#5~#15』と手書きのポップが貼ってある。

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ゆかりは紫色の石がついた指輪を手に取り、中指にはめた。

自分の名前にもなっている紫。大好きな色。

指輪自体は凝った装飾などついていない、円形の石台に天然石がはめられただけのシンプルなデザイン。

輪の部分に糸でつけられた小さな札には【アメジスト(紫水晶)】と書かれている。

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(アメジストって言うんだ…すごくキレイ)

手を傾けると照明の光を反射しアメジストがきらりと光る。

ゆかりはこの指輪を気に入り、祖母にねだった。

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「あらあら、ゆかりもお洒落する年頃になったんだねぇ…そうだねぇ、誕生日ももうすぐだし…どれ、少し早いけど誕生日プレゼントに買ってあげようねぇ」

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買ってもらった指輪の入った紙袋を大事そうに抱えるゆかりを見て、祖母は優しく頭を撫でた。

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「石にはねぇ…不思議な力があるんだよ、大切に大切にしてあげれば、石の妖精さんがお礼を言いに来てくれるんだよ」

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ゆかりは祖母の言葉を信じ、常に指輪を身につけた。

学校へ行く時はこっそりランドセルに忍ばせ持って行き、帰ってくると指にはめて飽きることなく眺めた。

寝る前には欠かさず柔らかい布で磨いて、小物入れにしまってから眠った。

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ある晩。

時刻はとうに日付を越えた頃、ベッドで眠っていたゆかりは物音で目を覚ました。

体を起こしじっと耳を澄ますと、どこからかカタカタと物音がする。

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(何の音だろう?窓は開いてないし…)

しばらくその音を聞いていると、どうやら机の方からなっているようだった。

ゆかりはそっとベッドから降りると暗闇の中、物音を立てないようにゆっくり机へ向かった。

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徐々に暗闇に目が慣れてくると、机の上に置いてある小物入れがうっすらと浮かび上がる。

寝る前に指輪をしまった小物入れだ。

よく目を凝らして見ると、それはカタカタと小刻みに揺れていた。

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ふと祖母の言葉が脳裏によぎった。

(もしかしたら、妖精さんが来てくれたのかも知れない!)

ゆかりはデスクライトを点け、緊張で震える手で小物入れの蓋を開けた。

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小物入れの中には、手のひらほどの大きさの人がしゃがんでいた。

首にはあの指輪がかかっていて、時折ゆらりと浮く。

そしてソレはゆっくりと立ち上がると、ゆかりの方を見上げた。

目が合った瞬間、ぞくりと背中に寒いものが走った。

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ゆかりを見上げているソレ。

妖精だと思っていたその風貌は、ゆかりが想像していた妖精とはかけ離れていた。

髪は黒く、全身を黒い布きれのような服をまとい、幼い少女が想像する妖精のような羽など生えていない。

そして人間であれば白目であるはずの部分が、深い紫色に染まっていた。

その紫色の目がじっとゆかりを見つめる。

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蓋に手をかけたまま、ゆかりは金縛りにあったかのように身動きが取れず、ただソレを見ていた。

(妖精さんじゃ…ない…?…なんか怖い…)

怯えた表情で見ているゆかりを、ソレはわずかに目を細めてじとりと睨みつけ、だるそうに呟いた。

『あー…お前、持ち主か…』

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目が合ったまま逸らせない。

「妖精…さん…なの?」

ゆかりはなんとか言葉を搾り出し、ソレに問いかけた。

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ソレはにやりと笑う。

『あー…まぁそんなもんだ。お前、この指輪が大事か?』

ソレはゆかりから目線を逸らさないまま問いかける。

「…うん、き、気に入ったから、ちょっと早いけどお誕生日プレゼントにって…おばあちゃんに買ってもらったの…」

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ゆかりが問いに答えると、ソレは再びにやりと笑った。

『へぇ…じゃあ、コレ、お前にやろうか?』

ソレの言うことが理解できず、ゆかりは言葉に詰まった。

(この指輪は私が買ってもらったもの…私のものなのに…お前にやろうってどういう…)

『もう一度聞く。コレ、お前にやろうか?』

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考える間も与えず再度問いかけられ、ゆかりは無意識に頷いた。

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ゆかりが頷いた瞬間。

一瞬、視界がぼやけた。

ほんの一瞬の出来事だったが、視界が再びはっきりすると、景色がまるで違っていた。

そして目の前には先ほどのソレが自分の何倍ほどの大きさになり、自分を見下ろしている。

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「え…?あれ…?」

ゆかりが目をこすりながら見上げるとソレは一言呟いた。

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『約束どおり、それはお前にやるよ』

その言葉を聞いた途端、首にずしりとした重みを感じた。

いつのまにか首には、白く光る金属の大きな輪がかかっていた。

大きい輪といっても頭より小さいため外せそうにもない。

輪の一部には円形の石台がついている。

その石台にはアメジストがはめこまれ、デスクライトに照らされ淡く光っている。

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「え…指輪…?なんで…」

ゆかりは頭の整理がつかないまま、再度ソレを見上げた。

自分より何倍にも大きくなったソレは、何も言わずにやりと不気味に笑った。

その歪められた目は紫色の部分が徐々に白くなっていく。

ゆかりはいまだになにが起こったのか理解できず、ただ呆然とソレを見つめるしかなかった。

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そしてその視界は、徐々に紫色に染まっていった…

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あんみつ姫様

もったいないほどのお褒めの言葉ありがとうございます(*´ω`*)

サウンドノベル風はテキストの方と違った面白さがありますよね。
とはいえ細かく背景を分けるほどの技術はなく、1〜2枚の画像を入れてみようかなというくらいしかできませんが、次に投稿する際も表紙と背景は分けて入れたいなと思っています。

絵もお話も描くのは、絵に合わせた話を、また話に合わせた絵を描けるのが強みですよね。
技術がまだまだなのでこれからもどちらも精進していきます(*´ω`*)

レイ様
いつもは、読者様として感想コメントを頂戴しておりましたが、本日は、作者様のレイ様へ感想とコメントを送らせていただきますね。
内容に相応しい文章と背景画。構成も流れも無駄がなく、あまりの美しさに思わず感嘆の声が出ました。

私も、いつもは、テキスト形式で皆様の作品を読ませていただいておりますが、今回は、美しいタイトル画に魅せられ、表示を切り替えて読ませていただきました。
mami様もコメントされていたように、冒頭の画面から次の場面に移ったとき、クビにかかった指輪がキラリと光輝くのが印象的でした。

これは、アナログである紙の本では逆立ちしても届かない、まさしく現代のネットサイトならではの「魅せる力」ですね。サウンドノベルにもトライなさるとか。私はPCから閲覧・投稿していますから、サウンドノベル機能が使えなくて残念です。
最近は、絵もお話も描ける作者様が増えて来ましたね。
読書の秋・・秋の夜長、ますます楽しみになってまいりました。

感想につきましては、もう先の皆々様が的確な素晴らしいコメントを寄せておられますので、私は、この辺でお暇(いとま)させていただきます。
これからも、私たちを魅了してくださいね。
どうぞよろしくお願いいたします。

mamiさん

ありがとうございます(*´ω`*)
私もテキストモードで読んでいて、サウンドノベル風な方はわりと後から知りまして...;
せっかくなのでこっちにも画像を入れてみようと思い入れてみましたが、いつもと違うモードにして読んでいただけたなんで嬉しいです。

初めてのお話ですし、オール0も覚悟しての投稿でしたが(お話の一覧見てもアイコンが異色を放ってましたし笑)、皆様に感想やお褒めの言葉をいただいてとても嬉しいです。
ありがとうございます(*´ω`*)

私は、いつもテキストモード(…と言うのでしょうか?画像ナシの文字だけのものです)で読んでいるのですが、レイさんの作品となれば、こりゃ画像付で読まねば!と、久しぶりに画像付で読ませていただきました。
まずは…スゴいです。始めの女の子から変わった時には、本当に宝石だけ明かりがついたかと思うほどに光って見えて…
話が進むにつれ、だんだん不気味な光にも感じてきました。

そして、お話しもすごく面白かったです。
思わず、『あれ?レイさんって、何作か出されてたんだ』と、レイさんのページに確認してしまいました。

画像もストーリーも、とても素晴らしかったです。

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ふたば様

ありがとうございます(*´ω`*)
絵のテイストに関して不安があったのですが、褒めてくださる方が多くいらっしゃって安心しました。

作るキャラはギャグっぽいものばかりなので、なんとか怖い話にできたらまた読んでやってください(*´ω`*)

珍味さん

見に余るほどのお褒めのお言葉ありがとうございます(*´ω`*)

おっしゃる通り2月生まれです笑
2月25日生まれで誕生石もアメジスト、誕生日石もファントムアメジストです。
べったべたに紫尽くしです笑

バンビさん

ありがとうございます(*´ω`*)
キャラの絵や世界観などが先に決まっていたので、違和感なく話は作れました。
脳内でなぜか漫画形式に絵で話が組まれるせいか、文章にするのは大変でした笑

メインは絵ですが、お話もまた書いてみますね(°∀°)

まりかさん

ありがとうございます(*´ω`*)
キャラを作る時はただ可愛いだけのキャラにしたくなくて、ついつい不気味なキャラが増えていきます笑

物語を書くのはほんと難しくて頭抱えました...なのでそう言ってもらえると嬉しいです〜(*´ω`*)

りこ様

お褒めの言葉ありがとうございます(*´ω`*)
この後の展開は考えていませんでした笑
実際の設定はただお礼を言いに出てくるだけの子なのです。
あとはアクセサリーがくすんでいたりすると、磨けよと文句言いに出てくるくらいです笑

他のキャラも考え中なので、お話にできるかわかりませんが、できたらまた読んでやってください(*´ω`*)

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かわいい絵ですね(≧∇≦)
話も怖いし、でも綺麗な言葉でていねいに紡がれていますね
レイさんの描く絵と同じ雰囲気を感じて嬉しくなりました(≧∇≦)
また画像作品、お話共に楽しみにしていますね!

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むぅ様

おお!むーちゃんなんですね(*´ω`*)
お褒めの言葉ありがとうございます。

天然石のお店に勤めてた頃は、スタッフやお客様も霊感のある方が多くて、その影響か少しはそういった現象にあっていましたがいまや零感...
怖い話はまったく思いつかずこういったお話になりました笑

私の考えるキャラは今回のようなホラーな妖精、腐って手足と顔半分が骨になった露出強めのゾンビ女、ガーターつけてるオカマの宝石の精...などなど、クセが強すぎて物語にできるかわかりませんが、物語にできた際にはまた読んでやってください(*´ω`*)

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ロビン様

コメントまでくださりありがとうございます(*´ω`*)
稚拙な文章に絵まで褒めていただいて...とても嬉しいです。
ただ、ドラえもんは...私も負けませんよ?笑

他にもアクセサリーキャラの設定はいくつか考えているので、物語にできるキャラかはわかりませんが、物語にできた際にはまた読んでやってください(*´ω`*)

レイ様の綺麗な文章に引き込まれました。やあロビンミッシェルだ。

素晴らしい画力にも最大級のリスペクトを贈りますと共に、ドラえもんを描かせたら負けませんよ!と少しだけ強がっておきます…ひ…

またのお話も楽しみにしております。