中編3
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不幸を呼ぶ男-前編-

今まさに殺されそうになっている男がいる。

男の名前は小山礼二。職業は市役所に勤める公務員。傍目から見てごく普通の青少年といった感じだが、歳はすでに28をいったいわゆるアラサーである。

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そんな男がなぜ刃物を向けられ殺されかけているのか疑問に思うかもしれない。また殺そうとしているのが小山の彼女ときている。

一体何があったのだろうか、人々は多くの想像をするだろう。しかし真実は一つである。

その経緯をたどるには小山の過去からお話ししなくてはならない。

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小山は転勤族の子供だった。小学生までは父親の仕事の都合で5回も転校を繰り返した。

皆様も転校生がやってくると聞いた時にはちょっとしたわくわく感があったと思う。それが小山の人生を決めたといっても過言ではない。

小山は行く先々の学校でもてはやされた。小山自身も輪に早く入って友人をつくろうと必死だった。

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転校が始まる前まではガキ大将だった小山は、子供ながらにいろいろ考え笑いをとる方向に走り、わざとバカなキャラを演じた。

その結果、どこにいっても人気者で女子からも男子からも好かれた。特に女子からの人気はすさまじいものが有り、クラスのほとんどの女子が小山のことを好きだった。

よくある面白いやつと、足が速いやつはモテるの法則が発動したのだろうか。

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中学生のころから、父が単身赴任という形をとることによって、転校とは無縁となった。

小山は小学生時代からの延長でやはりバカキャラを演じたが、すぐに不良の先輩の目に留まり、シメられることになった。

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それからの小山はバカキャラを辞め、不良もどきを演じるようになった。

不良もどきといったのは、実際には不良行為はせず、悪ぶっているだけだからである。

なぜ小山が不良もどきになってしまったのか。答えは単純明白

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「皆から注目され、女子にもモテるから」である。

不良の先輩たちを見てそう思ったのだろう。実に中学生らしい考えではないか。

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案の定、周囲の注目を集め、一定層の女子にはモテるようになった。そして高校進学の時になると内申点で有名進学校への推薦入学を果たした。

小山は実に頭もよかった。それまでは成績が最悪と言っても過言でないものだったのにも関わらず、3年生の1学期だけすべての教科で最高の点をたたき出した。

中学校の卒業式では数人の女子からも告白されたが誰とも付き合うことはしなかった。

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小山は「こんなにモテるのならば、自分がすごく好きになった人と初めに付き合いたい」と考えていたからである。

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高校生になり小山のモテているという認識と、周りの認識がズレていることに小山は気づかなかった。

その時の小山は、女子に昼食を一緒に食べようと言われただけで、この女は自分に好意があると考えてしまうほど女子に対して自信があった。

それが原因で女子に対して上から目線で接してしまい、第一印象は良くても、すぐに嫌われてしまっていた。

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これは大学生になっても変わらなかった。結果的に彼女が出来たのは就職してからであった。その時の小山の年齢は28歳。そう今まさに小山を殺そうとしている女こそが小山が初めて付き合った彼女である。

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結末から言えば小山は死にはしないが、生き方を変えざるを得なくなることに繋がっていく。

不幸を呼ぶ男-前編-

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