中編3
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不幸を呼ぶ男-後編-

今まさに女が一人の男を殺そうとしている。

「ゆるせない、ゆるせない、ゆるせない、絶対にゆるせない。」

女は目が血走り、目の瞳孔も限りなく縮小しているように思える。

その表情はまさに都市伝説級の化け物に匹敵する。

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女の名前は大橋なみ。今年25歳になったばかりの市役所で事務職をしている女である。

女はとにかく某アイドルグループのある男が好きで、将来結婚するならその人以外ありえないと高校生の時から公言していた。

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容姿は傍目から見て美人の部類に入るであろうが、これまでの人生において彼氏がいたことはなかった。

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大学を卒業し大橋は市役所の公務員となった。

公務員になった理由は楽で、定時で帰れて、安定しており、アイドルグループのライブに行きやすいからだったが、現実は残業もあるし、楽な仕事などあるはずもなかった。

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さらに不運なことに有名なパワハラ上司のいる課に配属となってしまい、大好きなアイドルグループのライブに行く気力も削がれて行ってしまっていた。

そんな折に配置換えで小山がその課にやってきた。大橋は思った、あの人、アイドルのあの人に似ていると。

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正直客観的に見て小山がそのアイドルと似ているかと問われれば、全く似ていない。

しかし小山の醸し出す雰囲気がおそらくは大橋の琴線に触れたのであろう。

それからの彼女は小山が事務処理でハンコを使っているときに手を絡ませたり、わざと帰り道を合わせたりして急接近した。

「彼は私と結婚するに違いない、絶対に離さない」そう大橋は脳内で毎日のように反芻しては行動に移していた。

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ある日、ついにデートまでこぎつけた大橋だったが、結果は散々なものだった。小山から女として魅力がないと言われたり、俺はモテている、お前は軽いと罵られたのだ。

それでも諦めきれず、猛烈に急接近し付き合う運びとなった。

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付き合い始めてから、1週間で、彼女の中に大きな猜疑心が生まれた。

それは小山が何人もの女と付き合っていて、自分もそのうちの1人なのではないかと。

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そう思うようになったきっかけは、小山の醸し出す雰囲気と、俺はモテているの言葉であった。

一度生じた疑惑は留まることなく彼女の心を侵食し、ついに付き合って調度1ヵ月目の日に彼女の中で勝手に確信に変わった。

・・・彼女は小山を自宅に招き、男を永遠に自分のものにするべく、殺害を決行しようとした。

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女は「貴方の全部私が受け止めてあげるから、ここから出て行ってはいけないの。貴方は沢山の女の人がいるかもしれないけど、私には貴方しかいないの。

それに、私が貴方をやらなくても他の女の人に必ず同じことをされるはずよ。なら愛が一番深い私でいいじゃない。」と男に言った。

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「ちょっと待て、なぜそうなるんだ!」男は怯みながらも、女に問う。

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shake

「てめぇが自分で言ったんだろぅぐぁあああ!!」もはやこの世のものとは思えない形相になった女は手に持った包丁をいつでも振りかざせる体勢と気迫である。しかし、、、

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「グサッ」・・・

男はとっさに近くにあったボールペンで女の首を横から刺したのだ。ボールペンの隙間からまるで注射器で血を抜き取っているかのように、血が溢れだした。

「俺も同じこと思ってたんだ・・・」男は呆然としながらぼやいた。

不幸を呼ぶ男-後編-

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