中編3
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神の領域

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さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今宵限りの怪奇劇場、同じ話は二度とは聞けない。こんなところに来るからには聞かずに帰る手はないぜ。さあさあ…おや?どうやら満員になったようだ。さあ、そろそろ始まるぜ。今宵の怪奇劇場が。

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ようこそみなさん。怪奇劇場へ、今宵はちょいとリアルな話を、夢物語じゃぁありません。近い将来本当に起こるかもしれないお話。

みなさん、AIって知ってます?みなさんお持ちのスマホにも入ってますよ。そう、人工知能です。すごい技術ですねー。機会が学習して自分で考えるようになる。最近じゃ、人工知能が搭載された囲碁のソフトがプロ棋士に勝ったらしいですね。いよいよ、人工知能が人間の知能に引けを取らない時代が来るんでしょうかねー。

え?面白くない?はいはい、分かってます。怖い話を聞きにきたんでしょ?まぁまぁ、まだ始まったばかりです。ゆっくり聞いてくださいよ。

じゃあみなさん、ゲノム編集はどうでしょう?ほうほう、名前は聞いたことはあるけど、詳しくは知らない。なるほど、まあ簡単に説明しますとね、生物の遺伝子の一部を自由に改変できる技術のことです。でね、この技術、遺伝子組換より断然成功率が高くて効率がいいらしいんですね。この技術を人に応用すれば、思い通りの能力をもたせた子供を作ることができる。これがデザイナーベイビーって言われて、懸念されてるわけね。ともかくゲノム編集を人に使えば究極の人類が誕生するかもしれないんですよ。

え?話が見えてこない?まぁまぁお客さん、これからですよ。これから話そうと思っていたところです。

ところでみなさん、バベルの塔とか失楽園とかはご存知でしょう?

そう、天に届く塔を作ろうとし、神の怒りにふれ、言葉を分断された人間の話と、蛇にそそのかされて禁断の果実を口にし、神の怒りにふれてエデンの園を追放されたアダムとイブの話ですね。

さあ、ここでみなさん、私がいままで長々と話してきた話を全部思い出してみてください。

気づきましたか?人間に引けを取らない人工知能。思い通りの能力を持った人間の誕生。これはまさに、神の領域ですねぇ。

おや?これだけじゃ足りない?ではもう一つ。万能細胞、これはみなさん知っていますよね?そう、あらゆる器官になることができる細胞です。この技術が完成すれば、永遠の命を手にするのも可能かも知れない。

これだけあれば十分でしょう。人類は今、神の領域を侵そうとしている。神の怒りに触れようとしているんですよ。ここまでくればお分かりですね。そう、バベルの塔や失楽園につづき、人類の滅亡が始まるんですよ。

いかがでしたか。今日の話はこれでおしまいです。たまにはこういうのもいいでしょう?それではまたご縁があれば。

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さあさあ、今宵の怪奇劇場はこれにて閉幕。みなさんお気をつけてお帰り下さい。え?次はいつあるのかって?さあ、この怪奇劇場は神出鬼没、いつどこに現れるか分からない。まあ、お客さんがここに通い続ければ、また会うかもしれませんぜ。

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