短編2
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集合写真

ボクのクラスには、とても影の薄いヤツがいます。

別に性格が暗いとか、友だち付き合いが悪いとか、そういうわけでもないのに。

とにかくこいつは運が悪いんだ。

どんな風に運が悪いのかというと、幼稚園から高校まで、一度もまともに行事に参加したことがないんだ。

誰しもが思い出の中にある様々な学校行事…例えば運動会や学芸会、遠足、さらには入学式や卒業式にいたるまで…。

驚くことに、そういったものに、たったの一度でも参加した試しがないのだ。

なので、必然的にクラスメイトと共有する思い出が少なく、ついつい影が薄くなってしまうのだ。

参加できない原因は色々ある。

一番多いのはインフルエンザ。

登校を拒否されちゃいますからね。

あとは親戚の不幸、さらに骨折入院なんてのもある。

で、当たり前なんだけど、行事には付き物の集合写真にも、一度も写ったことがない。

本人が主役の入学式や卒業式ですら、だ。

だから、集合写真といえば、彼には定位置がある。

写真の左上の丸枠の中だ。

そういう写真、誰だって一度は見たことがあるでしょ?

そんな彼だが、今はもう、会うことができない。

突然の不幸だった。

正月早々、亡くなったんだ。

交通事故だった。

気が弱いけど、誰にでも好かれるタイプのヤツで、クラスのみんなが悲しんだ。

葬式にはクラス全員が参列した。

式の最後に撮る集合写真は普通、親族だけで撮るものだが、遺族の配慮でクラスのみんなが入れてもらえた。

で、先日、その集合写真が出来上がってきたんだけど…。

間違いなく心霊写真だった。

ボンヤリと浮かぶ煙のようなもの…。

そのシルエットは、まさしく彼本人だった。

そりゃあ、みんな驚いたさ。

ただ、不思議と恐怖は感じなかった。

でも、それを見たボクらは、驚きの感情以外に、悲しいような、可笑しいような、複雑な心境になったんだ。

なぜなら、彼が写りこんでいたのは、やっぱりというか…定位置の左上だったから…。

Concrete
コメント怖い
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雪さん(親しみを込めて敢えて「さん」づけ)コメントありがとうございます。
雪さん含め、ここは投稿者のレベルが半端なく高いですね。
過去の作品をひととおり投稿したら、皆さんの作品をじっくり読みあさりたいと思ってます。
文章力はないので、お恥ずかしいのですが、「ゲームキッズ」の渡辺晧弐さんとか、ショートショートの神様の星新一さんとかを愛読していて、最後の一行でハッとなるような、アイデア重視のものを書いていけたらと思っています。
今後とも末長くよろしくお願いします♪

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SSモノはとても好きなので、楽しく拝見させて頂きました。
初めまして、雪と申します。
私もまだまだ新参者ですが、今後ともお見かけすることがあれば仲良くしてくださいね!
次回執筆、楽しみにしています♬

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