中編6
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サバイバルゲーム

ある日の正午前。

15年来の親友3人で、久々に集まった。

メガネ、マッチョ、そしてこの僕だ。

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みんな30歳をとうに過ぎているが、集まればゲームやアニメ(というか、ほぼガンダム)の話で盛り上がる、幼稚な趣味を持った大人たちだ。

テンションが上がりまくった僕らは、その勢いで、久々にサバイバルゲームをしようということになった。

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要するに、エアガンを使った戦争ごっこだ。

防護用のメガネやマスクは、メガネがちょうど人数分持っていた。

エアガンは僕が持っている。

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対象年齢18歳以上のマルイ製のハンドガンだ。

ラインナップした全種類を手に入れてやろうと、大人買いしたものだ。

結局、全てを集めきる前にマイブームは去ったが、その数、全部で9丁。

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エアコッキング式のショボいヤツだが、それでも、久々に握りしめるエアガンに、心は踊った。

3人とも迷彩模様の普段着に身を包み、メインウェポン1丁、サブウェポン2丁を装備すると、シュワちゃんやスタローンにでもなった気分だ。

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「いざ!戦場へ!」と行きたいところだったが、なにせみんな30過ぎ…。

メガネと僕にいたっては、所帯持ちだ。

誰かに見つかれば「いい大人がサバイバルゲームなんて」と、冷やかな視線を送られるに違いなかった。

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とりあえず、みんな僕の車に乗り込むと、戦場を探しに、人気のない農村地帯へ車を走らせた。

マッチョは農家の息子で、この辺りの田舎道には詳しい。

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途中、コンビニで買った昼食のパンをかじりながら、マッチョの案内のもと、人気のない山道を進むと、仮想ジャングルにはちょうどいい雑木林を見つけた。

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道路の端に車を停め、3人とも外へ出た瞬間、いくつになっても遠慮を知らないメガネが、いきなり2人に向けて発砲!

たまらず森に逃げ込むと、3人入り乱れての銃撃戦が始まった。

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戦場の緊張感…それはある意味、快感に近い。

久々であれば、なおさらだ。

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マッチョはいつでも冷静沈着。

農家の息子ならではの地の利をいかして、忍び寄ってくる。

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メガネはなんといってもスナイピングが得意だ。

気配を悟られない間合いから、的確に狙いを定めてくる。

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僕は、小柄な体格を逆手にとって、弾丸かわしながら、目標に肉薄する。

高速で迫るBB弾の弾道を予測し、一瞬の隙をついて反撃に転じるときのスリルがたまらない。

3人とも、時間を忘れて、サバゲーに没頭した。

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しかし、昔から極度の方向音痴の僕は、逃げ隠れしたり、どこかに潜んでいる他の誰かを探しに、森の中をさ迷い歩くうちに、すっかり迷子になってしまった。

「一体、ここはどこだ?」

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初めのうちは楽天的だったが、いくら探しても2人の気配はなく、聞こえてくるのは、木々のざわめきばかり。

心細くなった僕は、とりあえず森を出ようと、薄暗い森の中を、さ迷い歩き続けた。

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すると、急に視界が開け、崖のある場所に出た。

しかし、崖だと思ったそれは、急斜面の法面(のりめん)だった。

10メートルほど下には、アスファルトの道路が見えた。

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僕は、少し安心した。

とりあえず道に出ようと、法面に足を一歩踏み出した瞬間だった…。

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石につまずいてバランスを崩し、法面を真っ逆さまに、転げ落ちてしまったのだ。

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「イテテテテ」

一瞬、死ぬかと思ったが、法面と道路の境には、笹が深く生い茂っていて、それがクッションとなったことで、大きな怪我もなく、結果的にあっという間に道路の側まで辿り着くことが出来たのだった。

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しかし、そこで違和感が…。

お尻に何かが触れている…というか、下敷きにしているようだ。

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確認しようと、視線を下に向けると…人形?

それは…

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死体だった!

「うわあああぁぁぁ!」

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それは、紛れもなく人間だった。

僕のお尻の下敷きになって、死んでいた。

「しっ…しっ…死んでるうううぅぅぅ!」

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反射的に起き上がったはいいが、あまりの恐怖に、その場で腰が抜けてしまった。

気持ちとは裏腹に、僕の目は、その死体を凝視してしまっている。

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死体の首は、おかしな角度に曲がっていた。

血に染まった口を大きく開け、白目を剥いていた。

50歳を越えたくらいの男性だった。

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考えたくはなかったが、僕の頭の中を、不吉な考えがよぎった。

「どういうこと?まさか、僕が落ちてきた衝撃で、死んでしまったの!?僕がこの人を、殺してしまったの!?えっ?えっ?ええええぇぇぇぇ!!!!」

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その直後、パニック状態の僕を、さらに追い詰める事態が!!

ファンファンファンファン…。

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遠くからだんだんと近付いてくる、パトカーのサイレン。

警察だ!!

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「いやいやいやいや!僕じゃない!!僕じゃないってば!!………たぶん(涙)」

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この場から逃げ出したかった。

しかし、震えが止まらない足腰は、もう僕の言うことを聞いてくれない。

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しかも、おもちゃとは言え、手にはピストルを握りしめている。

誰がどう見たって、れっきとした不審人物だ。

不審者の言うことなんて、誰も信用してはくれない。

ほどなく、パトカーが僕の近くに止まった。

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僕は、絶望した。

「もう終わった…。僕の人生、今日で終わった…」

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脳裏に、家族の笑顔が浮かぶ。

「妻よ、子よ。お父さん、人間として、一番やっちゃいけないことを、やってしまったよ。ごめんなさい。しばらく会えなくなるけど、元気でいてくれ…」

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ほとんど無意識に両腕を揃えて前に突きだし、覚悟を決めた。

「どうぞ、逮捕してください…(涙)」

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しかし、警察は僕に一瞥をくれただけで、慌てて茂みの中へ分け入り、死体を見つけると、パトカーから一般人とおぼしき中年女性を呼び寄せ、なにやら確認作業のようなことをしていた。

女性は、その場で激しく泣いていた。

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少し経って、救急車も到着。

男性の死体と、泣いている女性を乗せると、サイレンの音を消したまま、Uターンして走り去っていった。

これぞまさしく、「ポカーーーン」というヤツだ…。

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全く事態が飲み込めなかった僕に、現場の後処理に当たった警察官が、色々と説明してくれた。

お陰で、事の顛末を知ることが出来た。

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事の真相なんて、分かってしまえば、たいしたことはなかった。

憶測や推論だけで、事態を悪い方へ悪い方へと考えてしまった自分が、アホらしかった。

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真相はこうだ。

実はこの日の朝、この場所で乗用車2台による交通事故があり、一方の車に乗っていた若い女性が、病院に救急搬送されたが、数時間後、搬送先の病院で亡くなった。

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母親が病院に駆けつけたが、どうしても父親とは連絡がつかなかったらしい。

そこで、母親が言った。

「もしかしたら、同乗していたのかも…」

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その言葉にハッとした警察が、母親とともに、現場に戻って確認しに来たところに、たまたま僕が居合わせたってわけだ。

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もちろん、事故直後に警察が事故処理を行い、必要な確認作業は行っていたが、事故の際、車外に大きく投げ出された父親は、人目のつきにくい道路の脇の茂みの中へ飛び込んでしまったために、不運にも発見されることはなかったらしい。

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現場を見立てた警察によると、男性は車外に投げ出された時点で、即死していた可能性が高いそうだ。

何より、その言葉にホッとした。

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僕、人殺しにならなくて良かったよ…ホント(;^_^A

サイレンの音に気付いて駆け付けた2人と、この場で合流することが出来たんだけど、全てを話したら、大笑いされたよ。

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昔からそうだった…。

僕は、方向音痴だけじゃなく、間の悪さもピカイチだったことを改めて思い知らされたよ。

Concrete
コメント怖い
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「バウムテスト」は、ある意味切ない気持ちにもなる怖バナでしたね。可哀想だよ…とも思っちゃいました。「お祝いの贈り物」は、本当に好きな話ですね。「怖い」と「面白い」が共存できていて、尊敬致しました。
たまには息抜き的な投稿もいいと思います!

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「バウムテスト」「お祝いの贈り物」と、ぐったりするくらいヘビーなヤツを連投してしまったので、ちょっと一息。

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なんだかホッとしました。笑
コミカルでテンポよく読める作品だと思います!

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