中編5
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ななしさん

みなさま、今回は一つ不思議なお話をしようと思います。

とても怖い心霊もののお話を期待されていたら大変申し訳ないと思います。

ただ一応少しだけ、怖い要素は含まれております。もしお時間宜しければ、是非お聞きいただければと思います。

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「ここは・・・どこだろう。またか。」僕はいつも夢日記をつけていたせいか、明晰夢というのを見る事が出来る様になった。ただ、場所まではどうも選べないみたいだった。

今回は夕暮れ時だった。とても赤い太陽。周りの風景まで赤みかかっている。

知らない町だった。木が立ち並ぶ住宅街にある道。真っ直ぐ続いているようだった。僕は取り敢えず前に進んだ。

10分程度歩いただろう。少し遠くに学校が見えてきた。僕はその学校を目指した。

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校門の前に辿り着くと夢ならではの不自然さがあった。

まず、学校の名前が見当たらない。次に、ここまで来た道もそうだったが誰もいない。

この時間帯だと、部活をやっている人が居るだろう。小学校であれば児童館等。

あとは住宅街なのだから子供の声だってするはずだ。それが一切無い。

まぁ夢なのだから仕方がないと考えるのをやめ、校舎に入ってみようと思い玄関を開けた。

案の定校舎内もしんとしている。僕はそれでも誰かいないか、校舎内を回った。

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正直夢でしかこのような誰一人いない、という体験は出来ないだろうな、と少し心が昂っていた。

3階で図書室を見つけ、僕は本を読むのが好きなので入ろうとした。

そのとき、初めて人を見つけた。教室のドアにある窓から見えたその姿は少し異様だった。

窓から差し込む夕焼けとは対照的な真っ白なワンピースだと思う。座っているので明確ではないが。髪まで白かった。ロングで窓から入ってくる風に少しなびいていた。

顔は見えない。何故なら狐のお面を付けている。その姿をじっと見ていると相手も僕に気付いた。

目は見えないけど、目が合った感じがした。

すると、「おいで」と手招きをされた。きっと通常ならドアを開けず逃げるだろうが僕はあまりにも綺麗で異様な彼女に逆らえず教室のドアを開け、中に入った。

「何しているんだい?そこに突っ立って。腰かけなよ。」

そう言って彼女は向いに座るよう促した。促されるまま、僕は向かい合わせで座った。

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僕が座ると彼女は見ていた本を閉じた。すると突然

「やぁ。君はどんな話を聞かせてくれるんだい。」いきなりの事で僕は驚いた。

「話って・・・何を?」そう問い返した。「話は話。」意味が分からなかった。

「誰か知らないのに何を話せば・・・うーん、そうだ。まずは名前を教えて下さい。名前だけでもいいので。」

「他人に名前を聞く前にまずは君から名乗ったらどうだい?普通はそうするんだろう?」僕は少し腹が立った。

「そうですね、普通は、名乗ってから聞きますよね。僕は、鈴木。

鈴木孝之(スズキ タカユキ)です。さぁ名乗ったんです。聞かせてください。貴女の名前。」僕は少し苛立ちながら言った。

「名前?ふふ、無いよ。」人に偉そうなこと言っておいて名前がない?

「じゃあ何て呼べばいいんですか!」

「そう怒らないで。好きに呼んでいいよ。」呆れた。聞いておいて好きに呼んでいいとは。

「じゃあ名無しの権兵衛からとってななしさんと呼びます。」少し嫌味を込めて言った。

「可愛らしい名前だね。有難う。」嫌味が通じてない。僕はため息をついた。

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「それにしても君はどうして怒っているんだい?」この人はなんてマイペースな人なんだろうと僕はため息をついた。

「貴女が普通普通というから。」

「普通って言葉?なんでそんなので怒るんだい?聞かせてくれるかな。」どうせ他に誰もいないのだ、良いだろうと思い仕方なく僕は話し始めた。

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「僕は昔から変な人、変わっている、とよく言われるのです。」

そう。僕は『変な人』と呼ばれるのがとても嫌いで腹立たしかった。人一倍普通になろうとすればするほど、『変な人、変わっている』と言われ続けた。変わっているからと言っていじめも受けた。

『普通』ってなんだ。『普通』になりたい。みんなと同じ『普通』に。

「ある日両親がそんな僕を気に掛けて、こういったんです。」

『貴方は貴方よ。だからそんなに普通にこだわらないで。』僕は頭に血が上りました。気が付いたら手が真っ赤で、服も真っ赤。あたり一面も真っ赤。真っ赤な中に両親が血を流して倒れていました。

ああ、思い出した。

僕は台所へ行き包丁を手に取りました。母は悲鳴をあげ、泣いてました。

僕はその母の腹に一突き。蹲った母を倒し、馬乗りになり何度も何度も刺しました。

その後父が帰ってきたのでリビングで待ち構えていました。

母が倒れて血を流しているのを見た父は僕を怒鳴りました。

なので、父も滅多刺しにしてやりました。とてもとても気持ち良かった。爽快でした。

僕汚れた手を洗ってから自室に戻りベットに横たわりました。そうしたら眠ってました。

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「だからここは夢の中なんです。現実の僕は寝ている。」話を聞いた彼女はふむ、と相槌を打ってこう提案してきた

「普通になれる方法を教えてあげよう。この教室を出て、2階にある2年1組の教室に行くんだ。そこではどんな子も普通になれる。」にこりと笑いながらそう言った。

その提案を僕は快く了承した。彼女にお礼を言い、足早に2年1組の教室に向かった。

そこには僕の他に男女それぞれ十数名と先生がいた。さっきはいなかったはずなのに。

ただ僕は先ほどの彼女の提案をうけ早く『普通』になりたいと思ったので、思いっきり扉を開けた。誰もこっちを見ない。変だ。先生が僕の名前を言い、「早く席に座りなさい。」と一言言った。渋々僕はおとなしく席に座った。

「はい、次はこのページをやるよ。」そう言った先生。

だが僕は何もないので隣の子に見せて貰おうと頼んだ。その教科書を見て、驚いた。全部『普通』の文字。いや、『普通』しか書かれていない。異様だった。だがみんな構わずずっと『普通』の授業を繰り返している。逃げたくなった僕は教室を出た。そのはずはまた席に座っている。

その繰り返し。僕がなりたい普通じゃない!これのどこが普通なんだ!

最初はた提案した彼女に憤りを感じた。今ではなにも感じない。

僕は、『普通』から出られない。

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「鈴木孝之。親殺しは罪深いよ。無間地獄ってやつさ。折角反省してたら少しは軽くできたかもしれないってのに。反省してないようだしね。」そう言って彼女は持っていた本、否、手帳を開いて名前を書き込んだ。

ガラ。

「やぁ。君はどんな話を聞かせてくれるんだい。」

Concrete
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mami様

コメントありがとうございます。
何か思いついた時に投稿するかもしれません。次の裁きを。

mami様、御安心下さい!ななしさんに会わなければ良いのです!
mami様、良い夢を見れるよう願っております。

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