封印解かれし刻〜宿御一族〜

中編7
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封印解かれし刻〜宿御一族〜

トメが、過去に封印した一体の化け物の封印が解かれた。

歳を重ね、その実力も陰りを見せていたトメには、もはや化け物を止める力は残ってはいなかった。

愛する孫である匠の腕の中で朽ち果てようとするトメ。

そんなトメが最後に匠に約束させた事。

それは、自分の仇を討つな。と言う匠にとってはとても辛い約束であった。

そんな約束を胸に、匠が今、動き出す。

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トメが亡くなって一週間。

匠は一人、旅の支度を始めていた。

行き先は分からない。

だが、その目的はトメを殺めた化け物ただ一つ。

その化け物を自らの手で葬り去る事しか頭には無かった。

「バアサン…。

悪ぃな…。

あんたとの約束…やっぱり守れそうにねぇ。

俺は元々、出来の悪い孫だからしょうがねぇよな?」

トメの仏壇に向かってそう話し掛ける匠。

「じゃ、行ってくるわ。」

匠はそう言うと玄関へと向かう。

「ト…サクラさ〜ん!!

遊びに来ましたよ〜!!」

?!

突然、家の前からトメを呼ぶ声が。

匠は一瞬躊躇したが、渋々、玄関の扉を開けた。

?!

「よ、よぉ…。

どうしたんだ?お前ら…。」

匠が玄関を開けると、満面の笑みで手を振るカイとその横に佇む紫水の姿があった。

カイ「いや〜、匠さんの件以来、サクラさんに会って無かったので、お元気かな?と思いまして。

後、サクラさんの漬物も食べたいですから(笑)」

カイの言葉に、匠は少し悲しそうな表情を見せた。

匠「そうか…。

だが、生憎バアサンは出掛けちまって今はいねぇ。

俺も丁度、出掛けるとこだったんだ。

悪ぃがまたにしてくれや。」

そう言って二人の横を通り過ぎようとする匠。

?!

その場を立ち去ろうとする匠の腕を紫水が掴む。

紫水「匠さん?

その様な下手なお芝居で私を騙せるとでも?」

紫水の言葉に匠の表情が驚きを見せる。

だが、匠はそんな紫水から目を反らし言う。

「芝居?

何の事だ?

悪ぃが急ぐん…」

紫水「匠さん!!

………………………………。

何かが起こっているのですね?

貴方のその様子からしてただ事では無い何かが…。

お願いします。

話して頂けませんか?」

紫水は真剣な面持ちで匠を見据えた。

匠は少し考える素振りを見せたが、紫水の真っ直ぐに自分を見つめる眼差しに負け、諦めた様に二人を部屋へと招き入れた。

匠「何を聞かれても、俺にも分からねぇ。

お前らには、俺の見たまんまを話す。

黙って聞いてくれ。」

匠はそう切り出すと、トメの身に何が起こったのかを二人に説明した。

匠から事の全てを聞いた二人は、暫くの間、放心状態に陥り、何も言葉が出ない。

紫水は下を向き一点を見つめ、カイは堪えきれなくなった涙が頬をつたっていた。

匠「まぁ。

そういうこった。」

匠は平常を装い、無理に明るく振る舞った。

気を落とす二人に気を使ったのだろう。

紫水「それで?

貴方は何処へ行くつもりだったのですか?」

紫水に問われ、匠は無言で紫水を見つめた。

匠のその表情から、云わずとも全てが伝わってくる。

紫水「お一人で行くつもりだったのですか?

老いたとはいえ、あのサクラさんを死に追いやる程の相手に、貴方お一人で闘いを挑むつもりだったのですか?

だとしたら…少し頭を冷やした方がいい。」

!!

紫水の言葉に、匠が怒りを抑えきれず立ち上がった。

匠「頭を冷やせだ?

ふざけんじゃねぇぞ紫水!!

相手が強かろうが一人であろうが俺はバアサンの仇を討たなきゃなんねぇんだよ!

邪魔すんじゃねぇ!」

今にも掴み掛かりそうな剣幕で捲し立てる匠。

紫水「邪魔を…する?

匠さん?貴方、何か勘違いをされている様ですねぇ。

私は一人で行くな。と言ったのです。

サクラさんの仇を討つな。とは一言も言ってません。

貴方一人で荷が重い相手なら、私もご一緒すると言っているのですよ。」

匠「バカ野郎!

相手は何者かわかんねぇんだぞ?!

下手したらお前だって…。

そんな危険な真似させられるかよ!」

匠の言葉に紫水が笑顔を見せる。

紫水「貴方だって何者か分からぬ相手に闘いを挑むのでしょう?(笑)

それに…。」

ピシッ。

場の空気が変わる。

紫水「サクラさんを手にかけたその化け物…。

許す訳にはいきませんからね…。」

紫水は穏やかな口調でそう言ったが、サクラを失った悲しみと、化け物に対する激しい怒りをその胸に抑え込んでいるのは明らかであった。

匠「ったくよ…。

好きにしろ!」

匠は紫水の気持ちを汲み取り、共に闘う事を受け入れた。

匠「だが、カイ?

お前は絶対に連れてかねぇ。

お前にゃ悪ぃが、ハンデを抱えて闘える程、今度の相手は甘かねぇ。

いいな?」

匠はそう言うとカイをじっと見つめる。

カイはそんな匠を真っ直ぐに見返し言う。

カイ「分かっています。

僕はここでサクラさんと一緒に二人の帰りを待っています。

だから、一つだけ約束して下さい。

必ず…必ずここへ帰って来ると。」

カイのこの言葉に匠と紫水は静かに頷いた。

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「ぎゃあ"〜!!」

「は…早くにげ…ぎゃあぁ"〜!!」

町から離れた山中の村に響き渡る村人の悲鳴。

トメを手にかけた化け物は、この村へ姿を現し次々に村人を殺めていく。

大人から子供、果ては犬や猫まで、その視界に写る者全てを標的とする化け物が歩いた後には、両目と口を切り裂かれた数えきれない程の屍が残されていた。

そして、この小さな村で起こった悲劇は、その余りの残忍さと被害者の数から、史上類を見ない大量虐殺事件として、テレビや雑誌で注目を集めた。

そんな中、化け物を探し旅をする二人の耳にもすでにその情報は入っており、二人は事件のあった村へと訪れていた。

村の周りは警察により立ち入り禁止とされ、中へは入れない。

だが、規制の外からでも、大量の血を吸い赤黒く変色した土を見てとれる。

それだけでこの村で起こった悲劇を垣間見る事が出来た。

匠「間違いねぇ…。

あの時に感じた気配と同じだ。」

匠が村の様子を伺いながら言う。

紫水「この気配…。

私達が知る妖の類いとはまるで異なりますねぇ…。」

紫水も村を伺いながらそう言った。

匠「お前もそう思うか?

俺も最初はそう感じたよ。

こいつは、俺が今まで出会った化け物のどれとも違う。

バアサンは一体何を封印してたんだ?」

匠と紫水は村を後にしながら話を続ける。

紫水「分かりません…。

ですが、この化け物…。

私達二人で勝てますかねぇ?(笑)」

紫水が苦笑いをしながら匠に問う。

匠「良くて相討ちか?(笑)」

匠も苦笑いで返す。

二人はそんな会話をしながら山中を歩き、まだ遠くへは行っていないであろう化け物を探した。

どんどんと日は暮れていき、月明かりが闇を照らし始めた頃、それは突然耳に届いた。

「ぎゃあ"〜!!」

「た…助けてくれ〜!!」

山中に響く悲鳴と助けを求める声。

声の感じからしてそう遠くは無い。

声がしてすぐに匠は、それが聞こえた方向へ走り出している。

匠が走って行くのを見て、紫水も匠の後を追いかけようと足を踏み出した。

その時…。

?!

踏み出した紫水の足を何者かが掴んだ。

突然の事で体制を崩した紫水は足元に目をやる。

?!

足元に視線を落とした紫水が見たものは、地面をのたうち回る蛇の様なもの。

だが…その頭の部分は人間の赤子の様な様相。

それが紫水の足を掴み、行く手を阻んでいた。

だが、そんな紫水に気付かず、匠はどんどんと先を行き、その背中が辛うじて見える程にその差は広がっていた。

紫水「やれやれ…。

今は貴方に構っている暇は無いのですがねぇ…。」

紫水はそう言うと二本の指で、化け物の手をそっと撫でた。

キ〜!!!

紫水が指で撫でた途端に、化け物の腕がスッパリと切り離され、その痛みにのたうち回る化け物。

紫水「あぁ…。

匠さんを見失ってしまいました。」

そう言う紫水の視線の先には、もう匠の姿は無かった。

その頃、紫水の身に起こっている事を知らない匠は、声の出所を探し、夢中で山中を駆け回っていた。

そして、遂にその場所へと辿り着いた。

?!

「や…やめろ…やめてくれ〜!!」

やっとの思いで辿り着いた匠の目に、今正に村人を手に掛けようとする化け物の姿が飛び込んで来た。

「ひっ…や…やめろ〜!!」

シュ!

?!

ニタニタと笑みを浮かべながら村人に手を伸ばす化け物。

だが、突然その手が切り取られ、地面へと落ちた。

ギギ…。

切り取られた腕から血を滴らせ、ゆっくりと振り返る化け物。

匠「蛍!

間違いねぇ!

あれがバアサンを殺りやがった化け物だ!」

匠はいつの間にか背後に現れていた蛍に呼び掛けた。

蛍「……。

許さない…。

絶対に…許さないんだからぁ!!!」

蛍の体が青い光を放ち辺りを包み込む。

その時、匠は既に印を結び始めていた。

匠「蛍!!

行け!!」

匠が印を結び終え、術を発動する。

瞬間、蛍はその身を青い閃光へと替え、化け物の胸に風穴を空けた。

正に一瞬の出来事。

何の抵抗も出来ずに術を受けた化け物。

化け物はその場から動く事無く、自らの胸に空いた穴をじっと眺める。

そして。

「この匂い…。

あの女の匂い…?

お前…何者え?」

化け物は匠からトメと同じ匂いを感じ取り、匠の正体を問う。

匠「俺か?

俺はお前を狩る者…。」

匠が握る拳がフルフルと震えている。

トメを手にかけた化け物を目の前にし、その感情を抑えきれなくなっている。

匠「いいか?

よ〜く聞け?化け物。

俺は…。

俺は、宿御一族 一七代目 当主。

宿御 匠だ!!!」

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sun様。

葵さんはどうしましょうか?
ご希望であれば出演希望依頼しますけど?(笑)
さて…この先どうなって行くのでしょうか…。
なんせ、作者のカイという人物はかなりの変わり者ですからねぇ(笑)

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ふたば様。

それいやぁ〜!!(´д`|||)

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月舟様。

カイも大人になりました(笑)
大人しく待っているかは謎ですが…。
絶妙のタイミングで闘いを邪魔しにくるかもですよ?
そうなったら月舟様はイラッとされますよね?(笑)

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ふたば様。

その手がありましたか!!
匠…死す…。
ん〜…ありかも(^^)d

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shibro様。

見てて下さい!
そらもう、匠はブチ切れですから化け物なんか綺麗に畳んで、鶴折ったりますわ!(笑)

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むぅ様。

叔父さん?!Σ(゜Д゜)
えっと…いや…あの…叔父さんはちょっと…(^^;

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珍味様。

カイ、初のお留守番です(笑)
今回は彼には大人しくしといて貰いましょ(笑)

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はと様。

激戦開始にございます!
フルボッコにございます!!

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セレ―ノ様。

美味しくな〜れ!美味しくな〜れ!(笑)

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