中編6
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転校生〜第二章〜其の四

「良かった!

今、お前の家に向かってたんだ。」

身に起こる数々の不可解な現象から救って貰う為、来夢の家へと急いでいた僕の目の前に、息を切らせながらそう話す来夢が立っていた。

「来夢…来夢!

何かおかしいねん!

助け…」

「分かってる…。

お前の身に起こっている事は僕にも分かってる。

急にお前の事が心配になってここまで走って来たんだ。

すぐにお前の家へ行こう。」

来夢は僕が話さなくとも全てを理解している様で、取り乱す僕を宥める様に優しくそう言った。

そして僕達は、僕が今必死に逃げて来た道を戻り始めた。

「来夢?

これなんなん?

俺…どうなってんの?」

僕は家へと戻る道すがら、今起こっている現象について来夢に訪ねた。

「分からない…。

でも…お前の家に行けば何か分かるかも知れない…。」

来夢は前を向いたまま険しい表情でそう言った。

家…か。

僕は正直、あんな事があったばかりの家へ戻りたくは無かった。

だが、僕のそんな想いも虚しく、僕達は家の前へと辿り着いてしまう。

恐怖が甦る…。

僕の体が震えているのが分かる。

やっぱ無理や…。

「来夢?

俺…やっぱり無理やわ…。

ようこの家入らんわ…。」

僕は気持ちを正直に打ち明け、家の中へ入る事を拒んだ。

「駄目だ。」

来夢は僕と目を合わせず、ただ一言だけそう言った。

「え?

い…いや…。

俺、めっちゃ怖いねん…。」

駄目だと言う来夢に対し、それでも僕は家への侵入を拒む。

「駄目だって言ってるだろ?

お前はこの家へ入るんだよ!」

?!

来夢はそう言うと僕の手首を掴み、無理やり家の中へと引きずり込もうとする。

「ちょ、ちょっと待てや!

お前何してんねん!

来夢?!

お前ホンマに来夢か?!」

確証は無かった。

だが、少なくともここにいる来夢は僕が今まで付き合って来た来夢とは何かが違った。

不審に思った僕は来夢の手を振りほどこうと必死にもがく。

だが、来夢の力は強く、しっかりと掴んだ僕の手を離さない。

そして、手を振りほどこうとする僕の方へ来夢がゆっくりと顔を向けた。

ワァ―!!!

僕は叫び声を上げた。

さっきまで僕の横にいた来夢は、様子はおかしかったが間違い無く来夢だった…筈…。

だが、僕の方を見るその顔は来夢のものではなく、ニタニタと笑みを浮かべるあの老婆…。

「ツカマエダァァァ〜!!!」

ワァ―!!!!

……………………………………。

「カイ?!

ちょっとカイ?!」

僕を呼ぶ声にゆっくりと目を開ける…。

ぼやけた視界に映り込んで来る真っ白な天井。

「あんた何?!

えらい魘されてたで?

一階まで聞こえてきたしびっくりしたわ!」

声の方へ首を向けると、心配そうに僕を見つめる母親の姿が。

?!

「ち…近寄んなババア!!」

またあの老婆が母親の姿で現れたと思った僕は、ベッドから飛び起き後ろの壁に背中を張り付け、母親から距離を取った。

「は?ババア…?

も…もっかい言うてみぃ!!

誰がババアじゃ!!」

パァン!

僕の頬に衝撃が走る。

それと同時にビリビリと僕の頬を電流が流れた様な感覚が伝わって来た。

ビンタ?!

も、もしかしてオカン?!

ほんまもんのオカンか?!

話し方も仕草も、その全てが僕がよく知る母親そのもの。

だが、僕はまだあの老婆の顔が頭から離れず、母親っぽい女性に対して距離を保ち続けた。

「なんやその顔?!

自分の母親になんちゅう顔してんの?!

はぁ〜…。

もうええわ…ご飯…食べるんやったら降りてきぃ。」

女性はそう言うと、僕の部屋を出て階下へ降りて行った。

部屋の扉が閉まったのを確認してから僕は考える。

よう考えたら、俺何で部屋にいるんや?

家の前であのババアに手掴まれて…ほんで…。

考えれば考える程、僕の頭は混乱し上手く纏まらない。

そして僕はこのままでは埒があかないと意を決して階下へ降りる事を決意した。

階段を降り、リビングの扉に手を掛ける。

またあのババアがおったら…。

僕は躊躇い、暫くドアノブを掴んだままそこに立ち尽くしていたが、覚悟を決めリビングを開けた。

「なんや?食べるんかいな?」

台所に背を向けて立つ女性。

何も変わった事の無いありふれた風景。

だが、僕の足は立っていられない位に震えていた。

リビングを開けた瞬間、僕の鼻にカレーの匂いが入り込んで来たからだ。

ヤバいヤバいヤバいヤバい!

やっぱりババアや!

一刻も早くこの場を逃げ出したい僕だったが、繰り返される恐怖に足がすくんで動かない。

「何してねんな!

はよ座り!」

?!

不意に女性に声を掛けられた僕の体がビクっと跳ねる。

「今日カレーやで?

あんたカレー好きやろ?」

そう言いながら、女性が遂に僕の方へと振り返り始めた。

あ…ぁ…ぁ…。

叫び声を上げようとするが声が出ない…。

そして…。

「はい。どうぞ。」

?!

「へ?

オカン?」

僕の方へ振り返り、テ―ブルの上にカレーを運んで来た女性は、あの老婆では無く僕の母親だった。

だが、まだ分からない…。

いつまたあの老婆に変わるか…。

僕は女性の動向を目で追いながら警戒を強めた。

「まだそんな顔してるんかいな?!

はぁ〜…。

あんたなぁ?

寝惚けんの勝手やけどその辺にしとかな…。

円脱ばらすで?」

やっぱりお母様?!Σ(゜Д゜)

女性のこの一言で、今目の前にいる女性が本当の母親だと確信した僕は、安心からか体の力が抜け、その場にへたりこんだ。

「えぇ加減にせぇ言うたやろ!

寝惚けた思たら次は座り込んでからに!

意味わからんわ!

薬捨てたろか!円脱の薬!!」

?!Σ(゜Д゜)

いや…ちゃうねんオカン…。

色々大変やって…。

薬…捨てんといて…。

そんな僕の心の声が母親に届く筈は無く、僕は用意されたカレーを静かに食べ始めた。

「ん?

あんた何やその目?

えらい赤なってるやん。」

僕の向かいでカレーを食べ始めた母親が、僕の目を見ながら聞いて来た。

「目?赤い?

別に痒いとか痛いとかないねんけどなぁ?」

僕は自分の目を擦りながら母親に言う。

「後で鏡見てみ?

えらい赤いで?ウサギちゃんみたいやわ(笑)

まぁそんなええもんちゃうけど(笑)」

うるさいわババア!

心の中で母親に反撃した僕は、食事を済ませた後、母親に言われた様に自分の目を鏡で確認する。

?!

なんやこれ?!

確認する為に覗いた鏡。

その鏡に写しだされた僕の両目は、真っ赤に染まっていた。

これ…充血どころの話しちゃうやん…。

赤く染まった自分の両目に少し不気味さを感じはしたが、特に症状は無かったので、僕はさっさと風呂を済ませベッドに横になった。

はぁ〜…。

夢にしてはリアル過ぎたけど、やっぱ夢なんやろなぁ…。

良かったぁ…。

疲れていたのだろう。

自分の身に起こった不可解な現象が夢だった事に安心した僕はそのまま眠りに落ちた。

翌朝。

窓から射し込む太陽の光で目を覚ました僕は、ベッドの上で伸びをし、カ―テンを開ける。

うわっ!

カ―テンを開けた僕の目に飛び込んで来たもの…。

それは家の前を歩く沢山の人。

だが、そのどれもが生きてはいない人…。

頭の半分を失った人、胸の辺りにナイフが突き刺さったままの人…。

人と呼んでいいものか分からないそんなモノが僕の家の前を普通に歩いている。

また昨日の続きか?!

そう考えた僕は途端に恐怖に襲われ、慌てて来夢に電話を掛けた。

僕の着信にすぐに電話に出た来夢に対し、昨日僕の身に起こった事、今目の前で起こっている事を捲し立てる様に伝え、すぐに来てくれとだけ言い電話を切った僕。

ベッドの上で呼吸を荒くし、震える僕。

「おい!カイ?!」

?!

不意に窓の外から僕を呼ぶ声がする。

僕は恐る恐る窓の外を見る。

そこには、心配そうな表情で窓を見つめる来夢の姿が。

僕は窓を少しだけ開け、そこから来夢に声をかける。

「お前?ほんまもんの来夢?

にせもんちゃうやんな??」

僕がそう言うと来夢は僕に背中を向け、自分の後頭部をペシペシと叩いて見せた。

「来夢くぅ〜ん!!」

それを見た瞬間、僕は来夢の名を叫びながら玄関へと向かい扉を開けた。

「カ、カイ?!

お前?!その目?!!!!」

Concrete
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月舟様。

リアルでもたまに無いですか?
夢から覚めたと思ったら夢やった見たいな。
良い夢ならいいですけど、こんな夢絶対嫌でしょ(笑)

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むぅ様。

全然そんなつもりはないんですよ!
関西人の日常って言うか…こんな感じちゃいます?

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せらち様。

騙したつもりはありませんよ!
ちょっと…ちょっとだけ茶目っ気を…(^^;

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セレ―ノ様。

怖すぎでしょ!?Σ(゜Д゜)
縫うて…。

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珍味様。

カイ君はどうなってしまうのでしょうか…。
次回で明らかにされると思います。

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