中編4
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コンプレックス

これは聞いた話なのだが、友人にAというヤツがいる。このAは前の会社で知り合ったのだが、今はそいつもその会社を退職して別な会社に勤めている。

このAの会社にコンプレックスの塊みたいな人間がいるらしい。

その友人曰く、仕事はかなり出来るとまではいかないもののそれなりに出来て、大した特技はないものの人付き合いもそこそこするし、会話も面白いって訳ではないが不快に感じたこともない。

つまりは至って【普通】なのである。この特技も何もない普通というのが、本人には耐え難いコンプレックスみたいで、この方をコンプレックスのイニシャルを取ってCとしたい。

Cのこの悩みの相談をAは友人Bとで聞いていた。Aは「俺も特技も何もない普通の人間だよ!」って言おうと思ったが、雰囲気的にそれを否定され「Aは◯◯が出来るじゃん。俺は…。」みたいなことを言われそうだったので止めた。

Aは黙って聞いていたのだが、Bが途中で「普通が1番だよ。それって特技じゃん!」と言う。Bは見た目も良く、仕事も出来、話も上手いため、人望がある。Cにとっては一番羨むと同時に憎い人物かもしれない。

Cはこの一言に「Bには分からないよ!人が真剣に相談しているのにもういいっ!」と言い、怒って帰宅。AとBはやれやれみたいな顔で見合ってそのまま帰宅。

翌日、会社に行ってみると、Bの机の上に置いていた会議の資料が見当たらない。周りに「知らないか?」というと皆知らないという。課長が「おいおい。勘弁してくれよ。」と一言。Bは「共有フォルダに入れてるから大丈夫です。」と言い、パソコンを操作。その時、AはCが密かに微笑んだ気がした。

「あれ?おかしいな…。」Bが共有フォルダを見たが、その資料が見当たらない。課長の顔色が変わる。役員含めた大事な会議。その為、Bに資料作りを頼んでいた。

「まっ。いっか。」Bが軽く言うと、USBメモリを取り出した。Bは普段から大事な資料はUSBメモリにバックアップを取っているようにしていたみたいだった。

これが面白くなかったのか、元々微笑んだのが気のせいだったのか、Cを見ると無表情だった。

それ以来、Bの周りでは奇妙な現象が起こり始めた。ゴキブリの死骸が引き出しに入っていたり、Bのゴミ箱に使用済みのペットのトイレ用の砂が入ってたり、Bの合成の裸の写真が机に置かれていたり。

その度にBは気にも止める素振りもない。いつも、はいはい。みたいな感じだ。しかし、周りは違った。女性社員の多くはBのファンであり、憤っていた。

犯人探しが始まる。Aの部署に防犯カメラはない。犯人は皆より早く来ている人間。真っ先の容疑者はAだった。もちろん、面と向かって「犯人ですか?」なんて聞かない。それとなくよそよそしくなり、ついには女性社員の一人から「Aさんって、Bさんと仲が良いですよね?Bさんを妬んだりしたことないですか?」と聞かれた。

「ないよ。どうして?」

もちろん、何が言いたいかは理解している。

「だって、Bさんは仕事出来るし、顔もいいし…。」

これにはAも、俺は仕事も出来なくて顔も悪くて悪かったな。と思ったが、あまり下手なことを言ったりしない方がよい。でも、普通に返答してもかえって怪しい…。というより何をしても結局犯人扱いになるだろう。

しばらくのやり取りの後、Aはついに容疑を晴らしたい一心でCのあの事件をしゃべってしまった。女性社員の多くは納得し、Aへの疑いは晴れた。しかし、今度はCへの女性特有のイジメが始まる。

無視はもちろんのこと、本人に聞こえるか聞こえないか…で、聞こえるようにこそこそ話をする。この光景にAは罪悪感もあったが、しまいにはCがBに陰湿なことをしたのが始まりじゃないか。と開き直った。

約2ヶ月もすると、Cは退職した。

女性社員は表立っては喜びはしなかったが、喜んでいる様子だった。男性社員は最初はそれなりに仕事をしていたCの穴埋めに追われたが、1ヶ月もすると普通になり、Cがいないことに何も感じなくなった。

ある日、AはBと飲みに行った。

それとなくCの話になった。

「お前も色々大変だったな。」

「えっ?何が?」

「Cのことだよ。」

「ああ。あれな、俺の自作自演だよ。」

「えっ?」

「元々、Cがあまり好きじゃなかったの。それなのにあいつがあの時訳の分からんことでキレるからさ。俺もキレて、辞めさてやる。と思ってさ。俺が嫌がらせを受けてる風を装えば、ああなるって分かってたよ。Aはみんなより早く来てたから、Aが犯人扱いされて、AがCのこと言って、イジメに発展…思惑通り。Aもあの時、イライラしたろ?」

「…まぁな。」

本当にこう思った訳ではない。だが、怖くて肯定する他なかった。

そして、その後Aは人間不信になりその会社を退職。精神科にしばらく通って社会復帰。

Aは私に言う。

「今思うと俺もBに辞めさせられたのかもしれないな。」

Concrete
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@鏡水花様
コメントありがとうございます。
サイコパスというのは、実はまわりに溶けいるのが得意みたいですね。
私も見抜く自信はありません。

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