中編3
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霊能者の憂鬱

霊子は頭を抱えていた。

「ん~何でだろ。

これに一体

どんな意味があるっていうの?」

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彼女は、

死者からのメッセージを受けとることができる

特殊な能力の持ち主。

いわゆる霊能力者だ。

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その能力は、

物心がついた頃には、

すでに備わっていた。

彼女は、

生まれながらの本物の霊能力者であった。

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そんな彼女だが、

今、仕事上で

非常に頭を痛めている事柄がある。

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日頃から心霊写真の鑑定を行っているのだが、

数週間ほど前から、

怒濤のごとく

心霊写真の鑑定依頼が

殺到するようになったのだ。

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しかし、彼女を悩ませているのは、

決して依頼件数の多さではない。

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依頼のひとつひとつが、

とにかく、

いつもと勝手が異なるのである。

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通常、本物の心霊写真であれば、

そこに写った霊体から、

何かしらのメッセージが発せられているものだ。

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しかし、

今、寄せられている心霊写真は

本物の心霊写真であるにも関わらず、

メッセージを一切受けとることが出来ないのだ。

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奇妙な共通点はもうひとつあった。

写り込んでいる霊体は

地縛霊や守護霊、

悪霊などさまざまだが、

シチュエーションがどれも似通っている、

ということだ。

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なぜか、

写り込んだ霊体は、

感情を圧し殺したような表情で、

人や物の陰から

顔を覗かせている、

というものである。

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彼女には、

この奇妙な現象の理由が

どうしても解き明かせず、

かれこれ数週間も

頭を抱えていたのである。

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本物の霊能師というプライドがある彼女には

強いポリシーがある。

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それは、

霊から受け取ったメッセージを、

嘘偽りなく、

依頼者に伝えるということである。

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それが、結果として

依頼者を傷つけたり、

悲しませることが

あったとしても…。

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そんな彼女にとって、

そもそもメッセージすら

受けとることが出来ないという、

現在の状況は

非常に耐え難いものだった。

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「この奇妙な現象の理由を

何としても突き止めたい」

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そう強く願う一方で、

その解決の糸口すら見いだせない

自分自身の不甲斐なさや無力さに

押し潰されそうになっていた。

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息が詰まりそうになった彼女は、

気晴らしにテレビのスイッチを入れ、

沈み込むようにして

ソファに腰を掛けた。

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その時だった!!

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たまたまテレビに映り込んできた映像と、

例の心霊写真の一枚一枚とが、

激しくフラッシュバックを起こし、

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彼女の脳裏に

稲妻のような激しさで、

奇妙な現象の答えを

導き出したのだった。

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そして、

彼女は腹を抱えて大声で笑った。

彼女は悟った。

「最初から意味なんて無かったのね…」

と…。

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笑い疲れ、落ち着きを取り戻した彼女は、

ひとり、呟いた。

「霊の世界でも

トレンドに乗っかるってことがあるのね。

やっぱり奥が深い世界だわ」

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「でもね…」と、彼女。

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「真実を話したところで

依頼者は絶対に信じてくれないし、

怒らせてしまうに決まってる…」

彼女は

再び頭を抱え込んでしまうのだった。

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そんな彼女の背中に、

テレビ画面から発せられた「そのフレーズ」が、

何度もこだましていた。

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「はいっ!

ひょっこりはん!」

Concrete
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