中編3
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煙突

「なぁ聞いてくれよ。この町にあんなデカイ煙突なんかあったっけ?」そう同僚に言われた。

俺は何の変哲のないサラリーマンだ。営業でこの町を周り続けているが、そんなものは見たことが無い。

「いや、そんな煙突なんか知らねえよ。てかどこにあるんだよそれ。」

「あそこだよあそこ。ちょっと遠いけどさ。まさか見えないのか?」

‥言われたがよく解らん。そんなもんが有れば目立ちそうなものだが。

「見えねえよ。てか別に煙突があろうがなかろうが俺にはどうでもいいわ。さっさと仕事しろよ。」

「相変わらず冷たいなぁ。でも確かに俺には見えるんだけど‥」

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一週間後。また同僚が例の話を持って来た。

「なぁ前に煙突の話しただろ。最近俺あの煙突に登りたくてしょうがないんだよ。あんまり気になったから、俺その煙突の近くに行ってみたんだよ。そしたら外にはしごがあってさ。登れるようになってて。そん時は引き返したんだけど、それから煙突が気になって気になって落ち着かないんだよなぁ。嘘じゃないぞ。ほら写真」

そこには確かに煙突が写っていた。随分古いが、かなり大きくて高い。側面にはしごがあるが、こんな高さまで登りたいとか正気じゃないなこいつ。

「で?その煙突はまだこっから見えるのかよ?」俺は聞いた。

「逆に見えねえのかよ?!今日は晴れてるからよく見えるぜ。ほら双眼鏡貸してやるよ。あ、これ?最近煙突見てないと落ち着かなくてさ。あんだけ高いとどっからでもこれで見れるんだよ。ほら、あそこの‥」

言われても見えないものは見えない。この辺で切り上げるか。

「わかったわかった。今度案内してくれ。」

俺は仕事に戻ったが、そいつは他の同僚捕まえて同じ事話しているみたいだ。暇なやつめ。

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それから一週間位してから、同僚が会社を辞めると言い出した。

「なぁもう俺駄目だ。あの煙突見てないと落ち着かないし、あれに登る事しか考えられない。明日から登るつもりだわ。今日は挨拶だけしにきた。じゃあな。」

同僚は見るからにやつれていた。でも目つきだけは鋭かった。俺は言った。

「お前正気かよ。みんなもそんな煙突見えないって言ってたんだろ?お前疲れてるんだって。暫く会社休め。そんでまた戻ってこいよ。」

「俺は登るから。」

相変わらず、俺にはそんな煙突は見えなかった。

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それから暫くして、俺はその同僚が死んだっていう話を聞いた。何でも部屋で死んでいたんだが、体はどっから飛び降りたみたいにつぶれていたらしい。

全くわけが解らん。そう思いながら、俺は会社の窓から外を見ていた。

‥なんだあれ。あんなもんあったか?かなり遠いが見える‥そこにはかなりの高さの煙突がいつの間にか存在していた。確かに昨日まではなかったはずなのに。

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最近、俺はあの煙突が怖い。怖いはずなのに気になって気になって仕方がない。俺以外の奴等はそんなもの見えないって言いやがる。俺もあいつと同じ末路を辿るのか?そんなのは絶対に御免だ。あいつは登ったんだ。そうに違いない。それを避けるのは簡単な話だ。登らなければいい。俺も登りきったらああなるのは解りきっている‥はずなんだが。

あれに登りたくて登りたくてたまらない。

Concrete
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