中編5
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作者「現実世界がとんでもなく忙しかったんで本当にすみません。ここから作品の更新ペース上げてくので勘弁してください。それではどうぞ‥」

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楓「今、何かいたような‥?」

舞「気のせいだろ。学校にこの時間に来る奴なんかいねえよ。あ、でも昔はいたか‥」

咲「懐かしいわね。それにしても、百物語はかなり久しぶりじゃないかしら?確か楓の順番だったはずだけれど。」

楓「そうそう。話をちゃんと持ってきたよ。気に入るかわかんないけど‥多分そんなに怖くはないけど、不思議な話。」

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この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

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楓「みんなは小学生の夏休みって言ったら何をするかな?」

舞「あたしは友達とプールとか行ったな。」

咲「私は図書館に通ってたわね。」

楓「うんうん。色々あると思うんだけど、この話は虫取りに言ってたとある兄と妹の話だよ。」

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私が小学4年生のとき、私には一つ年上の兄がいました。その日は夏休みの宿題で昆虫採集が出ていたのと、近所に大きな森があったことから、兄と一緒に蝉取りに行ったんです。自転車に乗れば10分位で行けるような所でした。結構広い森で、木が一杯生えているため、捕まえる蝉に困ることは有りませんでした。

元々兄は生き物にたいして乱雑に扱う所があり、飼っていた金魚の世話も殆ど私がやっていました。この金魚はお祭りの金魚すくいで兄が大量にすくってきたものなんですが。なんでも、兄は生き物を捕まえたり飼ったりするその瞬間が楽しいそうで、その後はどうでもよいそうです。この考えは私には理解出来ませんでした。今思えば、兄の悪癖の一つだと思っています。

この日も、兄は蝉を一杯捕まえるぞ!なんて張り切って、虫かごに虫取り網をかついでかなり意気込んでいました。学校の課題としては一匹で十分でしたし、沢山捕まえるつもりなんてありませんでしたが、兄に対してあまり強く言えませんでした。

そんなことを考えながら森に入ると、案の定蝉の大合唱でした。蝉は種類をとわず、とにかく沢山いました。用意していた蜜なんかつけなくても、網を持って近づいても、蝉は逃げる気配さえ見せませんでした。兄は面白い面白い!なんていいながら小さな虫かごに蝉を次々と押し込んでいきます。小さな虫かごに5匹くらい詰められた蝉は苦しそうで、私は心が痛みました。「ねぇ!もうやめようよ!」そう言い方とき、突然意識がなくなりました。」

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目を覚ますと、目の前に綺麗な真っ白な服をきたお姉さんがいました。多分歳は20位でしょうか。詳しいことはわかりませんが、若くて綺麗な人だなって思った記憶があります。その人は私に話しかけてきました。人の声を聞いて美しいと思ったのは、生涯この時だけです。それくらい、この人の声は美しかったんです。

??「ごきげんよう。蝉を捕まえているのですか?」

妹「は、はい‥学校の宿題で‥」

??「そうですか‥(こういって、この人はすごく悲しそうな顔をしていました。)ところで、その虫かごにいる蝉は、苦しそうではありませんか?こんなに捕まえてどうするのですか?」

妹「あ、それはお兄ちゃんが‥あれ?お兄ちゃんは?」

兄は見当たりませんでした。いつのまにか、あれほど騒がしかった蝉の声も全くなくなっていました。この時、私はここにきて初めて恐怖を感じていました。

??「はい。私は森に来てからあなた方を見ていました。どうやらお兄さんがこれを全部捕まえたみたいですね。そして、こんなにもひどい仕打ちを‥」

そう指差された虫かごは、蝉の数が増えて10匹位になっていました。捕まえられた蝉は必死に足を動かしたりしていましたが、かごに押し込んだ弾みで、体の一部が潰れたり羽が傷ついたりしていました。

??「どうやらお兄さんは蝉が大好きなようですね。だから、私からちょっとした贈り物をしました。これから、お兄さんは蝉の王様です。あ‥あなたは生き物は大切にしてくださいね。本当によろしくお願い致します。」

妹「えっ?それって‥」

私が聞き返そうとしたら、もうその女の人は消えていました。辺りには蝉の声の大合唱が響いていました。兄はいませんでした。

妹「お兄ちゃん!?どこ!?」

私は叫びました。でも、帰ってくるのは蝉の声ばかりでした。私はすぐに捕まえた虫かごを開けました。蓋を外し、一匹一匹蝉を逃がしました。蝉はよろよろと飛んでいきました。最後に残った蝉は、それまでの蝉に比べて非常に大きいものでした。でも、一言も鳴いていませんでした。一番下に押し込められていたせいか、体はボロボロになっていました。

妹「お兄ちゃんなの‥?」

蝉は答えず、よろよろと飛んでいきました。

兄「よう‥」

不意に、後ろから兄の声がしました。

妹「お兄ちゃん!無事なの?」

兄「あぁ‥帰ろう」

兄は帰ってきました。帰って来ましたが、それまでの兄とは別人みたいに変わっていました。性格は内向的、消極的になり、殆ど積極的な活動をしなくなりました。学校でも、別人みたいにおとなしくなったそうです。あと、生き物に対しては本当に優しくなりました。金魚の世話も、自分から引き受けるくらいに。それから、昆虫採集には絶対に行かなくなりました。あの日の事を聞いてみても「うん‥」とかはぐらかされて、教えてくれませんでした。

今、私は大学生になって生活を楽しんでいますが、兄は20歳になる直前に、突然バイクを買って事故にあって短い生涯でこの世を去ってしまいました。結局、あの日の出来事はわからず仕舞いです。でも、あの女の人の声だけは、はっきり頭に残っています。」

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楓「どうだったかな?」

咲「なんというか‥不思議な話ね。」

舞「この兄さんみたいなのって、話だけ聞くとひどいやつだって思うけど、ガキって意外にこれくらいのことやるんだよな。えげつねえし」

咲「子供は残酷なのよね。しかもそれが自覚ないし。ところで、話に出てきた女の人は誰だったのかしらね。お兄さんを蝉に変えてるって事は、普通の存在ではないし。」

楓「多分、この人が蝉の女王様だったんじゃないかな。あまりに見ていられなくなって、出てきちゃったとか。」

舞「虫だって何だって、なんにも考えず傷つけていい訳ねえしな。」

咲「あと、さらっと流してるけどお兄さんも20歳位で死んでるのよね‥まぁ考えすぎだと思うけど。生き物にはできるだけ優しく、ね。」

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咲「中々面白い話だったわよ?」

楓「本当!?ありがとう!頑張って用意したんだ!」

舞「なんつーか、救いのある話で良かったよ。んじゃ。次はあたしの話持ってくるわ。」

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