天体観測(字数制限クリアバージョン)

短編2
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天体観測(字数制限クリアバージョン)

恋をした。

同じ学校の女子学生だ。

図書館で本を読み耽る姿に一目惚れしたのだ。

「星に興味があるのですか。今度お話しませんか」

勇気を出して送った手紙に彼女はすぐ返事をくれた。

「喜んで」

それから毎日のように図書館で会っては夜空の星々について語り合った。

淡い青春の一ページになる筈だった。

あの日が来るまでは…。

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ある日、彼女から手紙を受け取った。

「今夜は十五夜ですね。とっておきの場所で一緒に月を見ませんか」

僕は舞い上がった。

「デートのお誘い?二人で夜空を眺めて、そして…」

沸き上がる妄想を堪えながら返信した。

「喜んで」

人生最高の瞬間だった。

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が、その晩、祖父が急逝したとの訃報が。

まだ連絡先を交換していなかったので

「ドタキャンだけど理由を聞けば許してくれる筈。今度ちゃんと謝ろう」

そう心に決めていた。

が、その願いが叶うことは永遠に無くなった。

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翌朝のこと。

葬儀の準備で慌ただしい中、衝撃の出来事が。

彼女が亡くなったのだ。

ニュースによると昨夜、特急列車に轢かれたという。

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あれから一年。

今、とある秘境駅に来ている。

板を張り付けただけの素朴なホームの片隅に菊の花束がそっと置かれていた。

今夜は十五夜。

一人で夜空を眺めていた。

「なるほど。本当に綺麗だ」

たった一つの外灯に照らされた無人駅。

まっすぐに伸びる線路。

両脇に連なる赤蝦夷松の防風林。

澄んだ光を放つ十五夜の月。

それらが織り成す光と影のコントラストは絵画のよう。

彼女が見せたかった光景は本当に美しいものだった。

一粒の涙が頬を伝った。

そのとき、僕にはハッキリと見えた。

線路の向こうに佇む彼女の姿が。

恋い焦がれ、会いたくても会えなかった彼女が、手を伸ばせば届く距離にいるのだ。

僕は思わず線路に飛び下り、彼女のもとへ駆け出した。

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「昨夜、ろう学校に通う男子学生が特急列車に轢かれ死亡する事故が起きました。この場所は一年前にも同じろう学校の女子学生が…」

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