長編20
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F子の影

オヤジがしきりにF子の下のほうを見ている

何を見ているのだろう

「オヤジ、どうした?」

「いや・・あのな・・F子ちゃんの影・・・なんとなく薄いと思ってしばらく見てた・・でもやはりほかの連中よりも薄い気がする」と心配そうな顔

「え・・・影?・・・」と私もF子の影を見た

確かに薄いような気はする

しかし、照明などによって影は薄くなったり濃くなったりはする

「オヤジ・・今さっきF子がいた場所に立ってみろよ」

「お・・ここの位置だったよな」

「そ、そこそこ・・・」

「どうだ?」

「あ・・・確かにオヤジの影とF子の影の濃さは全然違うぞ・・・」

「やはりな・・・」

オヤジはしばしば考え込みをし始めた

影がどうしたっていうんだろう

「おい・・・この前のSちゃんの失敗写真な・・・F子ちゃんの部分すごくブレてたよな・・

今、その写真を持っているか?」

「いや・・・持ってないよ」

「メールに添付して送ってもらえ」

「そうだな」

私はオヤジからの催促でこの前の写真をメールに添付してくれるように頼んだ

しばらくするとメールが来た

「オヤジ・・・きたよ・・・ほら」

「おう!!・・・どれどれ・・・やはりな・・・」

「あのな・・・ブレてる部分・・・よく見てみろ・・黒くなってないか?」

「どれ・・・あ・・・たしかに・・黒い部分があるよな・・・」

「だろ・・・それが恐らく影の部分だろうと思う」

「え?・・・影?・・影は下にできるだろ」

「いや・・この場合はな・・影といってもな・・・F子ちゃんの全身の影が外へ出ちゃってるんだよ・・・」

「意味が分からん・・・どういうことだよ?」

「つまり・・・この黒い部分が勝手に外へ出てる・・F子ちゃんの体が少し薄くなったということだ」

「え・・・わからん」

「魂が少しづつ抜けていってるんだよ・・・ちょっとな・・やばいな」

「うそだろ・・・」と私は驚いた

オヤジも本当に困った顔をしていた

今のところ、F子は元気

「もう少し様子を見よう・・・」とオヤジは腕組をして考え込んでいた

「それとな・・・あの黒い車の件な・・・こりゃ・・・大波乱が起きそうだぞ」とオヤジは腕を下ろして私に言ってきた

元捜査課長が黒い車の所有者を探し出してきた

オヤジはその所有者の名前を聞いて激怒した

元捜査課長も「オヤジの普段の怒り方とは全然違う」と私に言ってきた

私たち一族は5つの一族に分かれている

①まず本家のおアキちゃん一族(本家)

②そして妹のおハルちゃん一族(分家)

③財閥の分家の一族

④財閥の分家の親族の一族

⑤財閥に嫁いで財閥との親族となった一族

ちょっとわかりにくいけれど大雑把にこんな感じ

問題なのは⑤の親族の中でY家

なぜか単に財閥に嫁いただけなのにY家が筆頭になっている

オヤジとおふくろの結婚に猛烈に反対したし私とS子の結婚の時も猛反対し

電話までしてきた

オヤジは切れてそのY家へ怒鳴り込んでいった

オヤジとY家の因縁はそこからはじまった

それとY家の家業が不気味で仕方ない

占いなど占星術で一応は成り立ってるみたい

だけど・・・「裏を返せば呪詛を生業をしてるはずだ」とオヤジは言った

つまりY家とオヤジの一族は真反対の関係なのだ

この一連の不可思議なことはすべてY家がしてるんじゃないかとオヤジは疑ってる

私も一度だけ一族会議に出たことがあるけれど二度と出たくないと思った

雰囲気が陰気臭い

とくにY家の家主の不気味なこと

衣装もそうだが全身から何か陰気くさいオーラが出てる感じだ

時折見せる不気味な笑顔

一体何を考えてるんだろうと思うようなあの顔

目と目があったときに背筋が凍るような感覚はなんだ

ほかの③④は無関心なのか白けきったような顔をしていたな

①②は親戚付き合いをしているので気心が知れている

こんな感じだ

おふくろに万が一があるといけないので運転手は私がしている

本当はオヤジが運転手なのだが逃げて代わりに私が運転手になった

東京の本社の地下2階で会議は行われる

一族しか通れない専用通路を通り外部の人間と接触できないようになってる

おふくろも「まさか」という顔をしていた

おふくろは父親の死について「何か変だ」と言っていた

一応病死となっているが昨日までシャキッとして働いていたのに翌日の寝室で死んでいた

母親も全然気づかなかったという

ただ・・葬儀の時に父親との別れの際に棺桶に入っている父親を見て唖然としたらしい

顔があざ黒く死に化粧をしてるはずなのに顔が白くならず担当の人も悲鳴を上げたという

おふくろは「毒殺」されたような感じだと言っていた

晩年の父親は過労のためだと思われていたがよく貧血を起こしていた

日に日にやせ細っていったように思えるとおふくろは顔を下に向けて話してくれた

それを聞いたオヤジは「あいつらじゃねーのかよ」と吐き捨てた

私もオヤジの言う通りなように思えた

おそらくおアキちゃんのときも相当反対したように思える

「百姓の娘を財閥の嫁になんぞ」というような感じでね

相当、結婚してからのおアキちゃんは苦労したと思う

そして・・・最終的には・・・長男と・・・

おアキちゃんの娘が残って婿をとり何とか一族として残った

しかし、生まれてくる子はすべて女子

やっとおふくろの時に私とF子が生まれた

でも私は総帥の器でないと一族会議やおふくろからも言われた

私もとても総帥という職務ができるとは思えない

サラリーマンが関の山のように思える

しかし、おふくろもいずれは引退する

そのあとに必ず一族で争うことになる

だからおふくろは孫である仁を次期総裁として時間があれば仁に総裁としての勉強を教えている

仁はまぁまぁの成績だが口がうまい

口がうまいのはオヤジの血を確実に受け継いだなと思う

おふくろは正式には発表をせずに密かに仁に帝王学を教えてる状態だ

今狙われているのはF子なのかもしれない

オヤジは命を引き換えててもF子を守ると言っている

それが影の薄さと失敗写真の中の黒いもの

必ず繋がってるはずだ

私はこの一連を出来ことをメールに書き和尚様に送った

和尚様から電話が来た

「なんという・・・わしゃはその一族の方を存じないですけれど・・・何か「闇」という部分で相当な負のエネルギーを持った一族だと感じましたわい・・・財閥一族の争いはどこの財閥でも起きてましょうに・・・しかし、この一族は呪詛を使えるということは元々はきちんと財閥一族を守るために敵対する敵に対して呪詛を使っていたはず・・・それがなぜ・・裏切るような行為をし始めたのか・・・わしゃの感じだとやはりおアキちゃんの嫁入り問題が発端のような気がしますわい 相当な本家と分家の争いをしたに違ないないですわい

その呪詛からの一族から「娘を」と推薦はしたはず・・・当時の本家の考えはわかりませんが最終的にはおアキちゃんを選んだ・・・わざわざ当主と息子がお寺まで足を運んだようですからな・・その当時の本家の勢いはすごかったのでしょうに・・・でもなにかひっかかるんですわい・・・いやぁ・・・この喉まで出かかってるんですわい・・本当におアキちゃんの時から?・・・」

「う・・・和尚様と同じように考えていました・・・もっと古くから本家との確執があったんではと・・・確か本家の商いは江戸時代は呉服屋だったはず・・・それも江戸幕府草創期から・・だったかな?・・・それが明治時代に入り時代の流れによって一気に大きくなったんだと思う・・まぁ三井・三菱・住友には及びはしないけど・・それでも明治政府の役人たちが集まってきていたからそこそこの力はあったはず・・・」

「江戸幕府草創期とは・・・ウチのお寺も建立されたのが戦国時代末期ですわい・・・まぁお寺と財閥は同時は関係していなかったはず・・はず!?・・・おアキ・おハルちゃんの頃からのはずだけど・・・お寺にも村の出来事などの古文書ばかりだし・・繋がっていないはずですわい・・・その一族とも関りはないはずですわい・・でも・・・その一族が財閥一族とどのあたりで繋がったのか気になりますわい・・・」

「それなんです・・・おアキちゃんが関係していたらそんなにあんな感じになるとは思えないんですよ・・もっと古くからの鬱積が積もりに積もってあんな感じで口を出すようになったとしか思えない・・・それに今までかかわってきた中で一番古いのは平安時代・・・やはり・・・平安時代に一族たちが何をしてきたのかということですよね・・・和尚様のいる場所も何かしら関係がある土地だと思います・・・一度おハルちゃんたちの長老たちに聞いてみます」

「平安時代ですかのぉ・・・うちのオヤジはこの寺の建立は戦国時代末期だと聞いておりましたからのぉ・・・その前にお寺があったのかもですわい・・・わしゃも一度檀家衆に聞いてみますわい」

どこであの一族と本家が繋がったのだろう

どうしてもキーワードは「平安時代」としか思い浮かばない

おハルちゃんの子供は5人

一番末っ子(五番目)の末裔がS子・S君の一族

一番目から二番目の末裔はすでにいない

三番目の末裔は遠く九州にいる

四番目の末裔は滋賀県にいる

月に1回の東京本社へおふくろが行くときについでにその末裔の長老に聞いてみよう

もう歳も歳なので早く聞かないといけない

その話をS君にしたら「俺もついていく、いや連れていけ」ととても気になってるようだ

するとS子・F子も「アニキ!!Sアニキが行くなら私もついていく」と言い出し「おっちーー!!!パパ!私も行くんだぞ」とオイオイ・・・・

「え!パパとママ、どこか行くの?」と楓が話を聞いていたらしく割り込んできた

「東京!!私も行きたい」と言い出した

「あたちも楓姉ちゃんについていくんだぞ」「カナも・・・」

もはや家族旅行じゃないか・・・

偶然なのか和尚様から電話がかかってきた

「わしゃ・・・来週に用事で東京へ行きますわい・・F君もどうですか?」

「え?・・・今、家で東京へ行く話をしていたんですよ・・・行く日はまだ未定ですけれど・・来週ですか・・・・そうですね・・・和尚様も一緒に行きましょう」

「なんと!!・・・ぜひぜひ・・・」

偶然!?・・・何かに誘われてる感じだ

とにかく東京へ行かないとな

マイクロバスと私のボロ車でいざ東京へ出発

まさにピクニックだ

緊張感が全然ない

家族全員がいりゃそうなるよな

無事に東京へ入りおふくろの本社ビルへ着いた

本社の社員が整然と並んでいた

まさか・・マイクロバスで来るとは思っていないらしく

社員たちがざわついていた

常務が私を見て慌てて社員たちに声をかけて並びなおした

私はボロ車から降りて常務の横に立った

「お坊ちゃま・・・お久しぶりです・・・専用車で来ると思っていましたよ・・まさか・・マイクロバスで・・・」と小さな声で私に声をかけてきた

「常務、今回の本社訪問は会議もそうだが私たち一族の問題も含んでいます・・・

今回の総裁は神経がビリビリしていますから慎重な対応をお願いしますね」と答えた

「は・・はい!お坊ちゃま」と顔から脂汗がにじんでいるのが分かった

マイクロバスからおふくろいや総裁が下りてきた

社員全員が深々とお辞儀をした

マイクロバスは専用の駐車場へ移動させた

ボロ車は社員に運転してもらい同じ専用駐車場へ

ビルへ入り専用のエレベーターで最上階の社長室へ

私とおふくろは無言のまま最上階に着いた

少し休憩をして私とおふくろは会議へ出席をした

例の一族も来ていた

相変わらず不気味だ

時折笑みを浮かべてる

会議そのものはスムーズに流れていった

会議が終わりおふくろが「あ・・いつもの・・不気味で仕方なかったわね・・」と私に小声でつぶやいてきた

「同感です」と私は答えた

下では専務と常務とS君たちが待っていた

「総裁・・・」と専務がおふくろに声をかけた

「専務、常務、おつかれさま、ありがとうね」と言い本社ビルから出た

おハルちゃんの5番目の子孫である長老の関係者が待っていた

長老の孫にあたる人らしい

その人は頭を下げておふくろに「電話をもらい非常に驚きました

おじいさまはぜひお会いしたいと申しております」と言い頭を下げた

お孫さんに案内されて長老のいる部屋へ入った

S君・S子にとってひぃおじいさんにあたる

「ひさしぶりだのぉ・・・お二人とも大きくなって・・・この前会ったときはたしかまだこんなに小さい時だったかのぉ・・・」と満面な笑顔で話しかけてきた

「おじいさま・・・お元気そうで何よりです」とS君は頭を下げた

「おっちー!!!!じっちゃ!元気なんだぞ」といつもの能天気な挨拶

「おおお!!S子かい・・うんうん・・○○(S子の母親の名前)は元気にしているのか?」

「ママは元気なんだぞ」

「そうかいそうかい、いいことだ」とS子を見ながらニコニコしていた

「○○様(長老の名前)、おひさしぶりでございます」とおふくろが頭を下げた

「おひさしゅうよの・・随分苦労しているようじゃな・・・話は孫から聞いた

あの一族にはわしも好かん・・・何かと文句を言ってくる・・・わしの一族はおハルばあさまの一番下の子供の子孫だから何も言えない立場じゃが・・・悔しくてな・・・」

「はい・・お気持ちは察します・・ところで・・・」とおふくろはあの一族と私たち一族の関係を聞いた

やはり・・・あの一族は私たち一族と姻戚になる前から祈祷師みたいな生業をしていたらしい

今の財閥が江戸時代、呉服屋として商いをしていた時にどうやら知り合いになったようだ

その知り合った男は色々な呪詛をつかいこなしていたらしい

その男は当時の主に「この店を見事、商売繁盛させてやるぞ」と主を説得させて祈祷をしたらしい

祈祷が見事に当たったのか店はどんどん繁盛し始め江戸後期には町一番の呉服屋として町の顔役になっていた

もちろんこの祈祷師には相当な贅沢をさせた

その祈祷師に嫁が来た

そしてその夫婦に娘ができた

それから数十年後に娘は成人して綺麗な女性になっていた

呉服屋の主のところにも息子が生まれて成人をした

お互いに幼馴染で気心がしれている

周りはいずれ結婚するだろうと期待をしていた

ところが・・・この呉服屋の主はこの2人の結婚についてはすごく反対をした

主はこの祈祷師の真の狙いがわかったからだ

お店を乗っ取ろうとしていることに気づいた

主は早々にこの祈祷師一家を追い出した

もちろん祈祷師一家は泣きながら許しを乞うた

だが主は鬼のごとく追い出し祈祷師一家はその町からも追い出された

だが・・・・やはりこの息子と娘は好いていた

娘のお腹には子供ができていた

その祈祷師が「養育費を出してもらえないか」と主に頼み込んだ

もちろん主は断った

「お前の娘のお腹の子供など関心はないわ!この泥棒め!どこまでも図々しくまとわりつくんだ!」と激怒をしたようだ

それを聞いた祈祷師は

「おまえ!だれのおかげで今の地位にいられるんだ!このわしの力があったからだろ

わしを利用しただけだろ!おのれ!絶対にお前たち一族は許さんぞ!」と言いながら自分の首を刀で切り落とした

それからだ・・・私たち一族は男子が生まれずに女子ばかり生まれてくる

呉服屋も傾き始めいまや破産寸前

時は移り江戸幕府はなくなり明治時代

その主の息子が跡を継いで何とか危機を乗り越えて財閥へと大きく成長させた

その息子は娘と別れたあとにすぐにほかの女子と結婚をした

その主の息子の息子がのちにおアキちゃんをお嫁にする

その娘の子供が成人して改めて父親と対面をし息子として認められた

つまり2人の兄弟が出来てしまった

その娘の息子は性格が暗く陰気くさい

主はその性格をとても嫌った

主はその陰気くさい息子を別荘がある長野へ行かせた

それがあの忌々しい一族の祖となった

「なんと・・・それで・・・あの一族は何かと邪魔をしてくるわけか・・・

もしかして・・おアキちゃんの病気も・・・あの一族が呪いをかけたのか・・・」と私は口を滑らせてしまった

「これ!声がでかい!聞かれているかもしれん」と長老は激怒した

「F!気をつけなさい」とおふくろにも叱られた

「あの一族は戦国時代、忍びだと思っておる・・・だから・・壁に耳あり・・なんじゃよ

おアキさまの病気は過労が原因だとは思うが・・まさかのぉ・・・

ありえん話ではないが・・・証拠がないのではな・・・」と長老は首をかしげながら話をした

「おじいさま・・・」と長老の孫が耳元でなにかヒソヒソ話をした

オヤジはしきりに窓を見ていた

長老と長老の孫も窓を見て長老は納得した顔になった

「婿殿も・・・気づいたようじゃな・・・」とオヤジに声をかけた

「あぁ・・いたな・・」とオヤジは返事をした

「せがれよ・・・今さっきの会話をもろに聞かれた・・・間者だよ・・口を少しは慎めよ」と言われた

「江戸時代かよ」と思った

いろいろと長老の話を聞いた

やはり長老にあってよかった

江戸時代までの私たち一族の一部がわかった

「S子よ・・・その口癖はおハルばばさまによく似ておる

まるでおハルばばさまがいるようじゃのぉ・・・

わしが幼少のときにおハルばばさまの膝に乗せられて昔話をよく聞かされた

不思議な話もよく聞かされた

一度おアキおばさまにもあいたかったのぉ

聞いた話では相当な美人だと聞いていたからのぉ」

「おじいさま・・・この方がおアキちゃんです」とS君はスマホの画面を長老に見せた

「お・・・この方か・・・凛として美しい・・・本家の人間がほれ込むのもわかる気がするのぉ・・・んん・・・」と長老はF子を見た

「そこの娘さん・・・おアキ様によく似ているのぉ・・・」とF子を見つめていた

「はい、私の娘です・・・」とおふくろはF子を紹介した

「おじいさま・・はじめまして、F子と言います」とF子は挨拶をした

「総裁の娘子なのか・・・瓜二つではないか・・・そっかそっか」と何度も頭を揺らしていた

さらにS君はおハルちゃんがお寺にいた時の写真を見せた

「これがおハルちゃんの幼少の時です、おじいさま」

「おお・・・かわいいのぉ・・・わしはおばばさまのおハルばばさましか見たことがなかった・・・ほぉ・・」と葵を長老は見た

「長老、私の孫娘です」とおふくろは説明をした

「お・・S子の娘かい・・・そっくりだのぉ・・・」と長老はニコニコした顔で葵を見ていた

「じっちゃ!葵なんだぞ!」と葵は長老の横に立った

「おおお・・・そのしゃべりかたはまさにおハルばばさまじゃ・・・」

長老は葵を膝の上に座らせた

「こうやってわしもおハルばば様の膝の上に乗せられて話をよく聞かされたわいのぉ・・

わしもついにはおハルばばさまの年齢になってしもうた・・・」と葵の頭をなでながら少し目から涙が出ているようにも見えた

私は例のF子の写真を長老に見せた

「こ・・これ・・は・・・」と長老は長老の孫を呼んだ

「はい、おじいさま・・・こ・・・これは・・・おじいさま・・・大至急、手配をします」

「そうしてくれ・・・すまんが・・・みんな・・明後日までわしの家に滞在してほしい

」と大きな声を出していた

「F・・よ・・・後で、詳しい説明はする」と長老から小声で話してくれた

夕方になり屋敷で夕食になった

長老一族と私たち一族の夕食会

大人数での食事で両家とも賑やかな食事となった

夕食後、私とオヤジとS君は長老に呼び出された

部屋には長老とお孫さんがいた

「今さっきの写真の件でお呼びしました・・・詳しくはおじいさまがお話しされます」と頭を下げた

「さぁて・・・あの写真のことだが・・・婿殿は大体の察しはついていると思うが・・

あまり時間的に余裕はなさそうだな・・・明日、わしの大親友でこの手の件については詳しい者を呼んだ・・・明日の夜には・・解決するとは思うが・・・しかし・・あの忌々しい一族め・・・」と長老は苦々しい顔をしながら話をした

「長老よ、本当にそいつにまかせていいのか?俺の大事な娘だぞ、もし失敗したらお前たち一族をすべて抹殺するからな!」とオヤジの鋭い目と怒声が響いた

「まかせておけばいい・・・それよりも・・・わしが一番気になるのは・・・楓とやらの娘っ子だ・・・わしが見たところ相当な力を持っているように見えた・・・その力、将来、コントロールができなくなるほど力を持ちそうだ・・・それが心配だ・・・明日、その力を少し弱めるように写真とあわせてしようと思う」

「あ・・・さすがは長老だな・・・俺もそれを心配していた・・・F子よりも力は必ず超えると思ってる・・・コントロールできないほど力を持っても仕方ないからな・・・そうしてくれ」

「うむ・・・婿殿の一族の力が楓とやらの娘に見事、受け継いたようじゃな・・・半面・・

かわいそうに思う・・・楓とやらの将来は・・・やめておこう」と長老の目には悲哀が漂よい私とオヤジを見ていた

「まぁ・・・すべてわしらの一族にまかせておけばいい・・・ここにいる間はゆっくりとして過ごせばいいじゃろ」

「まかせたぜ、何かあれば俺も手伝うぜ、どちらにしろ相手は手強い・・・

せがれよ、屋敷の四隅にお守りと塩を置いてこい、それで少しは結界の力で時間は稼げれる・・・Sちゃんよ、F子のそばから絶対に離れるなよ、何が起きようともF子を守ってほしい」

「おやっさん・・・どういうことになっているか俺、全然、わからん・・・けどF子は俺が守るぜ」

「まかせたぞ、F子を幸せにできる奴はSちゃんしかいない」

「おやっさん・・・」

「せがれよ、楓ちゃんをしっかりと守れ、もちろん、他の者も見ててくれ、明日の夜は大荒れになるかもしれん・・・もしも・・・もしも、になったら全員この屋敷から退去だ、全員無事に生き残らないとな・・・マイクロバスとあのボロ車、いつでもこの屋敷から出られるように準備はしておいてくれ」

「オヤジ・・・俺もよくわからん・・・明日の夕方にはおふくろや娘たちをマイクロバスに乗せて屋敷から離れた場所へ避難させておくよ・・・」

「そうしてくれ・・・F子ちゃんと楓ちゃんの代わりの紙人形をくそ坊主に作ってもらう・・」

夜遅くまでいろいろと話し合いをした

話し合いも終わり

私とオヤジとS君はおふくろたちがいる部屋へ戻った

娘たちはもう寝ていた

和尚様とおふくろとS子とF子が心配そうに起きていた

「おっちーーー、遅かったんだぞ、何かあったの?パパ?」

「いや・・・今日の夜についていろいろと打ち合わせをしていたんだよ・・・」

「アニキ、今日の夜に何が起きるの?」

「心配しなくてもいいよ、夕方におふくろたちはマイクロバスに乗って少し離れた場所にホテルがある、そこですこし待っててくれればいい」

私は事の詳細をおふくろに話をした

おふくろの顔が段々と血の気が引いていくのが分かった

和尚様にも話をした

紙人形を作ってくれるように頼んだ

もう夜の3時過ぎになっていた

今日の夜に備えて寝よう

朝早くに屋敷内がざわついていた

「なんか・・・騒がしいな・・・」と私は目を覚ました

屋敷内の人間がパタパタと走り回っていた

「おい、せがれよ、マイクロバスを玄関の前に置いて来い、みんなこの屋敷から離れるぞ」とオヤジのでかい声

ここの屋敷の人間は早々に離れていた

残ったのは長老と孫

私とオヤジと和尚様

昼前に長老が呼んだ人物が来た

見た目は・・・もろにホームレス

私は内心

(大丈夫か・・・)

長老はその人物に頭を下げ居間へ通した

何やら長老はホームレスの耳元でボソボソと話し込んでる

「なるほど・・・わかった・・・今夜・・・だな」

「コソコソと天井の裏にいるんじゃねぇ」とオヤジが天井を見上げて怒鳴った

ガタガタと天井裏から物音がした

「相変わらずだな・・」とホームレスの男はつぶやいた

「ところで、神使い・・・お前の娘の件だが・・・あの忌々しい一族とは関係ないみたいだ・・というより・・・あの娘・・・いや・・・」とホームレスがオヤジに向かってしゃべりだした

「おい!関係ないだと・・・一体あれは何だよ」とオヤジは語気を強めて言った

「あれは・・・死期が・・近づいている証拠だ・・・神使いも薄々わかっているんだろ・・それを認めたくないだけだろ」

「うっ・・・・」とオヤジは口を噤んだ

やはり・・・死期が近づいていたんだ・・・おアキちゃんの死んだ年齢に近づいてきてる・・私の頭は真っ白になった

「神使い・・・気持ちは察する・・・今夜・・・そのことも含めて祈祷はする

だが・・・わしの力も限界がある・・それは神使いもわかるだろ」

「あぁ・・・わかるさ・・・祈祷師よ・・・」とオヤジはホームレスの男を睨みつけていた

え・・このホームレス・・祈祷師なのか・・・

「おい!長老!!なんでこいつを呼んだ!」とオヤジが怒鳴った

「婿殿・・・言いたいことはわかる・・だがな・・・相手が相手じゃ・・・」と長老はオヤジを見つめていた

「ちっ・・・よりによって・・あの忌々しい一族を呼ぶとはな・・・くそっ」とオヤジはホームレスの男を睨んだ

「まぁ・・・あんたらはわしら一族を嫌っているのはわかる・・・とくにあの主に対しては・・・

まぁ・・いずれ・・あやつも・・・いなくなる」と祈祷師は意味深なことを言った

「いなくなる」・・・・その時は意味がわからなかった・・・

よりによってあの忌々しい一族の人間だったのか

オヤジが怒るのもわかる

あの祈祷師を信用していいのか

「もともとわしら一族は本家を守るのが役目

だが一族の一部には不満な者がいるのも事実

そいつらが暴走して色々と問題を起こしたのも事実

特に神使いの結婚のときには相当なことをした

もちろんちゃんとした理由があってこそだ

神使いの一族とわしら一族は正反対の位置にある

その神使いのお前が本家一族に入り込むことでわしら一族の役目が終わるのではという危機感があった

案の定・・・本家はわしら一族から縁を切ると言い出してきた

もちろんわしら一族は反対をした

あの主がわざわざ本家のあの屋敷へ乗り込んでいった

長時間の話し合いをしたが本家は縁を切ると言うばかりだった

あの主が帰ってきて一族の前で断られたことを告げた

一族は怒りに満ち溢れた

それから毎晩・・・本家の主を呪詛した

効果が徐々に効いてきて・・・病死した・・・」

え・・・やはり本当だったのか・・・こりゃおふくろには言えない

「おまえら!!やはりおまえらだったのか!!!」とオヤジは大きな声で怒鳴った

「病名はヒ素中毒死だが・・本当はわしらの呪いじゃで・・・・あの男が死にあの男の嫁が総裁になった・・・・これでわしらを切ることは無いだろうと考えた・・・

だが・・・現実は違った・・・あの嫁も・・・縁を切ると言い出してきた

一族はまたあの嫁を呪詛して殺せばいいと毎晩呪いの言葉を唱えた

ところが・・・呪いが全然効かない・・・

「おかしい」と言うことになり一族の長老の婆さまに事の次第を話をした

婆様はそれを聞いて気絶した

気絶から目を覚ました婆様は怒りが収まらずに

「おまえたちは愚か者の集団か・・・効くはずはないぞ!!!

お前たちは「おアキ様」に呪いをかけているんだぞ」と婆様の怒声で集まった者たちは一様に動揺が走った

「しかし・・・婆様・・・「おアキ様」と言うけれど・・・呪いをかけているのは今の総裁です・・・」と一族の誰かが反論をした

「愚かなことを・・・・今の総裁は「おアキ様」がお守りしているんじゃ

つまり・・・お前たちは自ら本家の人間を呪おうとしたんじゃぞ

守護霊である「おアキ様」に効くはずはなかろう

呪詛しているのはもうバレているぞ

おおお~~~なんということか・・・・おまえたち・・・覚悟せよ

必ず一族から死人が出る・・」と婆様は言い放ちまた気絶した

一族は大騒動になった

しばらくしてから当時の主が死んだ

表向きは息子・・・今の主が殺したといわれているが・・違う

本家からの返りの呪いで死んだ

だから・・・今の主は本家を相当恨んでいる

F子とやらの娘は「おアキ様」の生まれ変わり・・・影が薄くなってるということじゃな・・・

今夜、どうにか・・・してみるか・・・うまくいくかどうかは・・・保証はできんぞ」

なんという恐ろしい一族だよ

Concrete
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