中編4
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転生者

「はぁ。もう少し生きたかったなぁ‥」

こう呟くのは、10分位前まで生きていた14才の少女の魂。とある病気でベッドがら起き上がる事すらできず、数年間苦しみぬいた挙げ句死んでしまったのだ。

「ようこそ冥界の入り口に。裁きはお済みですか?天国行きはあちら‥あれ。ちっ。またこのパターンかよ。あなたはこちらの入り口にどうぞ」

「えっと」

「あーもう。最近こういうの多いんだよな‥あ、失礼しました。私は冥界への案内をしています。人は死ぬと大体その魂は天国か地獄かどちらかに割り振られるんですけど、例外もありまして。あなたはその例外って訳です」

「どういう事ですか?」

「一言で表現するなら、あなたは現世に戻る権利を得ました」

「え!私生き返る事ができるんですか?!」

「そう簡単ではありません。あなたは確かに死にました。元の体に戻ることはできませんが、あなたの魂を別の人間の体に放り込む事ができるんですよ。世の中には死にたいけど死ぬ勇気がないって人間が結構いましてね。そういった人間のリストがあるんです。その人間の魂をこちらで引き取る代わりに、あなたみたいな生きたかったけれど死んでしまった魂を放り込むんです。そうするとどうなるかわかりますか?」

「さぁ‥」

「見た目は死にたかった人のままですが、体の支配権は甦った魂にあるんです。つまり第二の人生が送れるわけですよ」

「あの、知らない人間に転生してもその後の生活がうまく送れるとは‥」

「元の人の記憶はパソコンのメモリーの様に取り出せるように体に保存しておきます。あなたはそれを自由に見ることが出来るわけで‥この辺の説明はかなり難しいので、あんまり説明したくないのですが。説明をお望みですか?」

「いやいいです。多分わかんないし。要は元の人の記憶は見ることができるし、それを利用して私の思うように動けるって事かな?」

「そんな所です。どうですか?この転生をお望みですか?勿論転生先を選ぶことはできませんが‥」

「転生します!多分前よりは良くなるはずですし、もう少し生きたいので」

「わかりました。ではいくつか注意点を。当たり前ですが転生したって事は周りの人間に知られてはいけません。混乱の元ですからね。あくまでも転生先の人として生活してください。

なお、この会話はあなたの記憶として残しておきます。早速注意を破られても困るので。では良い転生ライフを」

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「みか!いいかげん起きなさい!学校に遅れるわよ!」

「うわ。本当に転生した‥えっと、この体の持ち主は黒永みか14才‥あ、年齢同じだ。うーわなにこれ。私いじめられてるの?ノートに落書き‥あ、他にも悪口言われてるんだ。んで親との仲も悪いと‥えなにこれ悪いってこいつが一方的に口聞いてないだけじゃん。体は健康そのものだし」

「なにぶつぶつ言ってるの?最近全然ママとも全然喋らないしどうしたのよ。まったく‥」

「あーお母さん。私これからちゃんとするから」

「早くご飯食べなさい!」

(いじめの程度も金とかとられる訳じゃないし、大した事ないわ。こんなんで死にたいとか元の持ち主どんだけ楽に生きてたんだよ。あー転生できて良かった)

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「あのー先生、最近うちの娘が少しおかしいんですよ」

「おかしいとは?」

「一昔前は全然口をきいてくれなかったんですけど、私とも最近はよく話すようになって」

「良いことじゃないですか」

「成績もどんどん良くなって、この前は友達なんか家につれてきて」

「何が不満なんです?」

「わかりませんか?確かに良い娘なんですけど、なんかこう、元の娘とは違う気がするんですよ。いや、確かに行動とか話し方とかは娘そっくりなんですけど、中身が別人になってそれが娘のふりをしているような‥」

「うーむ。私には判断できませんなぁ。とりあえずこちらの施設を紹介しますので、娘さんを受診させて下さい」

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「次の方、黒永みかさん。入って下さい」

「なんですかここ」

「あーこれね。あなた疑似転生者でしょ。私にはわかりますよ。私その手の専門家ですから」

「‥ばれたら私どうなるの?」

「大丈夫です。普通の人間にバレたら混乱の元ですが。私も疑似転生者なので。2週間ほど前に入れ替わりました」

「え、そうなの?じゃあ私の事秘密にしといてよ。問題起こしたくないし」

「正確な事がわかるまで言えませんでしたが、お母さんにも良い報告ができそうです」

「ばらしたら駄目なんじゃないの?」

「あー、あなたのお母さんも疑似転生者ですよ。こちらは10年位やってますけど」

「うーわ。正体がばれないようにしてたんだ。全然気が付かなかったわ」

「それどころか、あなたの記憶を見させてもらった所、あなたの周りに大勢いますね。あなたをいじめてた生徒、あなたの友達、おや、あなたの父親もみんな疑似転生者‥」

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