中編5
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共同戦線 決戦−後編−

「あのさ、カールが死んだのって…交通事故…なんだよね?

あいつに殺されたって一体…」

息を調え 少し落ち着いた俺は、気になっていた事を聞いてみた。

「そうですね、表向きには…交通事故です。

だけど僕は あいつに殺された!

この交差点の、真ん中まで引っ張られて…トラックにひかれました。」

カールは交差点を指差して言った。

「トラックの運転手は 自殺だと言いました…。

そりゃそうですよね、僕がフラフラと道路に出て行ったようにしか見えなかったんですから…」

「カール…」

「親はそれを絶対信じませんでした。

だって僕は、その二ヶ月前に心臓移植を受け成功したばっかりで…やっと大学も普通に行けると 喜んでいたんですから。」

「心臓移植!?」

「僕はあいつに負けてしまった…!

でも、ゆうや君。あなたの事は守ってみせる。絶対に!」

「俺だって、俺だって!カールを守ってやるよ!」

直後、オッサンが叫んだ。

「静かに!…来たぜ あいつが…」

!!

交差点を見ると 何か黒い物が落ちていた。

いや…あいつが道路から顔を半分出していたのだ。

ゾクリと背中が寒くなる。

「クク…クククク…」

嫌な笑い声を発しながら、あいつは静かに姿を表した。

カールがあいつに近づいて行く。

「お前は絶対許さない!僕に心臓をくれた人の為にも…お前をのさばらしておくわけには いかないんだ!!」

「クク…オマエ シッテル…クククク…ワレガコロシタ…クククククク!コワレヤスイ カラダ…」

「ずいぶん余裕だね、シノさん…」

カールが顔を近づけ、囁くように言うと あいつの笑いがピタリと止まった。

「ギッ…!?」

「僕が何も調べずにここへ来たとでも 思ったのか?

お前の名前は…シノだ!」

「ギィィイィィ!…ワレノ…ナヲ ナゼ!」

あいつは明らかに動揺していた。ニタニタ笑いは消え、恐ろしい形相でカールを睨みつけている。

「これが何かわかるか?」

カールが鉄串のような物を取り出す。

半分くらい錆びていて、まるで血がこびりついているかのように見えた。

「お前はこれで、自分の親を!夫を!子供を!殺したんだろう!!

そして自らの命も…」

そこまで言った時、あいつが凄まじい声をあげた。

「ギャャャァァァァアアーーー!ヤメロ!!イウナ!コロス!コロスコロスコロスコロス!」

そう叫びながら少しずつ 後ろへ下がって行く…

それに気づいたカールが、あいつの首をガシッと掴む。

「逃がすか!」

そのまま後ろに回り、あいつに抱き着く格好になった。

そして あの鉄串を体に突き立てる!

いや、寸前のとこであいつがカールの腕を掴んでいた。

「グゥゥ…」「…くっ!」

お互いの力が均衡しているのか、どちらも身動きが取れない…!

カールに加勢しなければ!

俺が動こうとすると、オッサンが慌てて止めた。

「馬鹿!お前があいつに近づいたらカールの邪魔になるだけだ!

お前は生きてる人間なんだからな!」

「…じゃ、じゃあ!俺はここで見てるだけかよ!

何か出来ないのか!?」

「お前にしか出来ない事はきっとある!でも、それは今じゃない!」

「そんな!だけど俺…」

その時カランカランと音が聞こえてきた。

見ると あの鉄串だった。

その横にはカールの腕…

あいつ!カールの腕ごと吹き飛ばしやがった!

「カール!!」

「駄目だ!…来ちゃ駄目です。大丈夫ですから…」

苦しそうに、でも優しくカールは俺に言った。

「クククク…ダイジョウブ〜?ダイジョウブ〜?アハハハ!アーハハハハ!」

鉄串が離れた事で安心したのか、あいつは勝ち誇ったように笑いだす。

「笑っていればいい。お前は僕と このまま消えるんだ!」

カールの体が光りだした。

「まさか…道連れに消滅する気か!?」

「消滅!?なんだよ、それ!」

「自分の体ごと消えちまう気だ!」

なんだって!?

「やめろカール!お願いだからやめてくれよ!」

暴れるシノを抑え込みながら、

「これしか手はないんです。」

と悲しげにカールは微笑んだ。

「おじさん…僕にはこいつを完全に消す事は 出来ないかもしれない…。

その時は…お願いします。」

それを聞いたオッサンは、静かに頷いた。

「ちょっと待てよ!待ってくれカール…!」

すでにカールは光に包まれ、眩しくて直視できない…

「僕…あだ名をつけてもらったの、初めてなんです。ちょっと恥ずかしかったけど…すごく嬉しかった…」

「カール!?」

直後、パンッと何かが弾けるような音が聞こえ 光は消えた。

そしてそこには、胸から下を無くしたあいつが転がっていた。

カールが…消えてしまった…!?

なのに なんであいつがまだいるんだ!

「ウゥゥウ…オノレ…オノレェー!」

あいつは俺を見つけると、はいずりながら向かってきた。

「オマエヲクラウ!ワレハキエヌ…クククク!」

こいつのせいで!こいつのせいでカールは二度死んだんだ!

俺はシノを蹴り上げた。が、足は虚しく宙を蹴り あいつをすり抜けただけだった。

そんな!俺からは、こいつに触る事さえ出来ないのか!?

「バカメ…ムダダ!オマエハシヌノダ」

そのまま足を掴まれてしまった。足首に激痛が走る!

「うあぁっ!離せよ!」

しかしますます力は増し、メリメリと骨がきしむような音がする…。

その時、チョビが飛び出して あいつの腕に噛み付いた。

「ギャアッ!!マタ オマエカ!」

そしてオッサンが、拾ってきた鉄串を あいつの額に突き刺した。

「ギャアァァァァァァ!」

ジュウッと 奴の額が焼けるような音がする。

「オノレェ!オノレェェェ!イタイ アアァアイタイ〜!!」

めちゃくちゃに暴れ、あいつの爪がチョビを引き裂いた。

「チョビ!あぁ… チョビー!」

チョビは短くナー…と鳴くと、砂のように崩れていった…

チョビまで!気づくとオッサンが、あいつに握られている!

血走った目でシノは、オッサンを握り潰そうとしていた。

「ぐっうぅ…ゆうや!刺さりが浅かった!これを…ガァ!」

額に刺さった鉄串は、今にも抜けそうになっている!

俺は立ち上がり、その鉄串に向かって走りだす。

するとシノは、まるで超音波のような声を発し 俺の体を止めた。

な、なんだこれ!鼓膜が破けそうだ!

足が石のように動かない…

なんで…なんでだよ!あと一歩なのに!

ここで動けないなんて、だったら俺の力は なんの為にあるんだよ!!

動け!動け!動け!!

「動けーーーーー!!」

俺は天に向かって叫んだ。

ふっと、俺の両耳を誰かの手が塞いだ。

体が動く!俺はスローモーションのように 鉄串に手を伸ばすと、それを押し込む。

ズズッと鉄串はなんの抵抗もなく 入っていった。

シノは声もなく溶けるように崩れ、最後は黒いチリとなって消えていった…。

俺はあの手の温もりを知っている。

ばあちゃんだ…

静まりかえった交差点に、俺以外には誰もいなくなっていた。

オッサンも…消えた…。

あとには、呆然と立ち尽くす俺がいるだけだった……。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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