中編3
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「古墳の上に建ってるらしい。」

それを聞いた時は、特に何も感じなかった。

ふーん、そっか。

その程度。

だが長く通っている内になんとなく、万更でもないような気がしてきたのは確かだった。

僕はある大学に通っている。

大学の所在地の近くには有名人の古墳や遺跡などがあり、それに応じて昔から変わらぬのどかな田舎が広がっている。

そんな中々情緒深いところなのだが、どこからともなく耳に入る噂、噂、噂。

例えば、僕の通う大学には周囲を囲むように地蔵が配置されている。

正門のところに1つ、大学内に1つ、普通でいう裏門のところに1つ。

「普通でいう裏門」と表記したのは、この大学に裏門は存在しないからだ。つまり大学への侵入経路は正門のみ。

裏から入る道はあるにはある、が、基本的に通行が禁止されている。

学生の大半はこの3つの地蔵しか知らない。

ここで1つの噂話だ。

4つ目が存在するというのだ。

「普通でいう裏門」の近くにあるらしいなどの情報はあるが、誰も地蔵を探したりはしない。

なぜか。

4つ目の地蔵を見つけたある学生2人が、ふざけて地蔵を破壊した。

地蔵を破壊するなど素面にしては中々クレイジーな行為だが、それ以来地蔵の呪いが見つけた学生を襲うのだという。

聞くだけならよくある学校の七不思議だ。

だが学生が怖いのはそこでは無い。

大学敷地内に地蔵が3つあるという、確かな事実が既に怖いのだ。

一言で言うなら「謎」。

この大学には謎が多すぎる。

まず古墳の多い地域で、古墳を思わせる小さな山の上に大学が建てられている事。

何の名残なのか、校内の端にある大きな池。

校舎内の立ち入ることの出来ない階が度々あること(中には外から窓を見る限り明らかに講義室があるものもある。エレベーターの表記は「・」)。

道無き道を進むと現れる大きなトンネル(トンネル内はスプレーの落書きだらけで、その落書きのクオリティの高さからそっちの人間の間で中々有名でもある。但し、学生によるものは少ない)。

校内の自殺者、事故者の多さ。

学校周辺の怪奇現象(ラップ音、ドアなどの鍵が勝手に締まる、電化製品の電源が急に入ったり落ちたりする、など。最初は皆怖がるが、度々起こりすぎるので慣れる)。

そもそも学校周辺の治安があまり良くない。

この間、大学の近くで殺人事件があった。

知っている人は知っているだろう。

近くの高校に通う生徒の先輩A後輩B間で、女絡みのいざこざから先輩Aが後輩Bをバットで撲殺。遺体を川に遺棄する、といった事件だ。(とはいえこれもほんの一部で、この辺りは事件で氾濫している。多いのは盗難や引き逃げだが。)

関係無い話のようではあるが、人の精神を狂わす何かが存在するなら、大学内でも似たようなことがあった。

学生の一人が校舎の3階にあたる場所から跳び降りたのだ。

駆けつけたもう一人の学生が病院に連絡し、重症ながらも大事には至らなかったが、何が驚くのかと言えば、跳び降りた学生は自殺を図ったわけではないのだ。

では何故飛び降りたのか。

「なんとなく跳べる気がした。」

らしい。

もはやネタだ。

思わずツッコミを入れて笑いをとりたい程だが、はっきり言っておく。

跳ばずとも見たら一瞬で分かる。飛んで大丈夫な高さではない。

骨を折るか、死ぬかの2つだろう。

ただの馬鹿だったで片付けるにはあまりに理解出来ない行為である。

もしかしてこの大学での自殺者、事故死者も、そんな突然起こる妙な錯覚から死亡したのでは無いかと思うと少し怖い。

しかし、自殺や前述の跳び降りには1つのルーツがある。

事件が起こるのはすべて夏休み中なのだ。

やはり謎の多い大学だ。

そして今日も、僕はこの謎多き大学へ足を運ぶ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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