短編2
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夜中、軽い尿意を覚えた俺は、一階にあるトイレへと向かいました。

うちのトイレは洗面所と浴室と兼用のタイプで、入り口を入ると右手に浴室の扉があり、左手に洗面台。その一番奥にトイレがあります。

俺は廊下の灯りを頼りに手探りで洗面所の電気を点け、奥へ進もうと一歩踏み出しました。

そのとき、ふと洗面台の方を見ると、鏡の中に見覚えのある人影が見えたので、ハッとして後ろを振り返ると、浴室のドアの前に姉が立っていました。

「な、なんやねん。姉貴か」

「……風呂入ってたん?」

髪の毛が少し濡れてたので、そう思ったのですが、姉はずっと黙ったまま無表情で俺を見てきます。

少し気味が悪かったのですが、早く用を足して寝たかったのもあって「飲み会か何かで酔っ払ってんやろ」と、無理矢理納得し、

「髪の毛、ちゃんと拭かな風邪引くで」

それだけ伝えると、そのまま奥へと向かい、トイレのドアを閉めました。

「変な姉貴やな……」

今まで何回か酔っ払った姉の奇行を目にしていた俺は、そのときは大して気にもせず、呑気に用を足していました。

それから、ふと姉に聞きたいことがあったのを思い出し、用を足し終えたあと、外に居るはずの姉を呼んだのですが、返事がありません。

あれ?物音とかしてなかったし、まだ居てるはずやねんけどな?

不思議に思い、ドアを開けて覗いてみたのですが、やはり誰も居ませんでした。

さすがに、そのときは「まさか」という考えが頭をかすめ、正直怖くなった俺は、すぐにでもこの疑問が嘘だということを証明しようと姉の部屋へと急いだのですが、ドアを開けてみると部屋の中は真っ暗で姉の姿はどこにもありませんでした。

それからすぐに姉に電話をかけ、たった今起こった出来事を伝えると、

「んなわけないやんか。うち、今日は友達んち泊まってんもん」

今でもあの鏡越しに見た、無表情の姉の顔が、頭にこびりついて離れません。

怖い話投稿:ホラーテラー マラムートさん  

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