中編4
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サードシーズンvol4

薬局へ行く、と元江は言った。

「薬局?別にどこも悪いところはないじゃないか?」

「色々と必要なものがあるんだ」

そういって元江はアジトを後にした。

数時間程すると元江は膨らんだ袋を両手に携えていた。

「なんだ?それ」

「硝酸、脱脂綿、硫酸・・・・色々」

「ああ、それとお前に言われた通り、小さなビシュラを仕留めてきたぞ」

ビシュラというのは、元江が怪物たちに付けた名前だった。

元江が子供のころに見ていた子供向けアニメ「グリーンモンスター」に出てくる、おどろおどろしいモンスターの名前が由来だ。

元江が子供のころはなぜか「グリーンモンスターを見ていいのは六歳まで」という暗黙の了解があり、小学三年生までグリーンモンスターを見ていたのは、当時の元江にとってささやかな秘密だった。

「狩りに使う道具ってところかな」

元江はまるで楽しみを後で取っておくような口調で言った。

小さなビシュラは弱点である後頭部のゼラチン質の部位をボウガンで貫かれ、糸の切れたマリオネットのように事切れている。

外骨格に添わせるようにナイフを滑らせると、糸を立てて外骨格ははがれた。

そうして露わになった皮膚にナイフを食いこませると赤黒い血が散ったが、構わず作業を続けた。

そして器用に、声帯の内側にあった骨を取りだす。

二つの貝が向かい合うように重なり、四つの穴が見えた。

まるで人体模型の心臓を取りだしたようだ。

「なんだ、それ?」

赤城が興味深げに聞いた。

元江は骨に付いた血を拭うと、管楽器のように口で空気を吹き込んだ。

するとビシュラの鳴き声にそっくりな、低く唸るような声が響いた。

「すげえ、笛みたい!!

俺にもやらせて!!」

赤城は、元江が口を付けたのと別の穴をくわえ、息を吹き込んだ。

すると、高くさえずるような音が響いた。

「これを使ってビシュラをおびき寄せる」

元江は確信に満ちた口調でそう言った。

アジトの前の路上で、二人を乗せたバイクは走っていた。

後ろにいる赤城は先ほどの声帯の骨を、かざすようにし、ビシュラの鳴き声のような音が響かせた。

「そろそろかな」

元江がそう言ったのを合図にしたように、三つの足跡が近付く。

二人の後ろ追うようにして走るのは、猟犬のようなビシュラだった。

猟犬の群れは瞬く間に、バイクとの距離を縮める。

「赤城、いまだ!!」

赤城はバックから、いくつかの包みを取り出し、後ろの猟犬に向かって放り投げた。

少し間をおいて包みは爆発し、猟犬たちは炎に焼かれた。

この爆弾は元江が稀人のアドバイスをもとに、廃墟となった薬局から拝借した薬品で作ったものだった。

バイクは緩やかに減速し、数十メートル進んだところで止まった。

「大成功」

アジトへ戻った二人は、先ほど仕留めたうちの二匹を携えていた。

先に狩りを終えて帰ってきた稀人は、ガラスのなくなった窓から外を眺めていた。

「稀人、どうしたんだ」

赤城は稀人の後ろから、窓の外の様子を覗きこむようにしてみた。

「昨日から大勢の人間が、学校があった所にいる。

おそらくあの校舎を居住区にしているんだろう」

稀人が指さした先には、目を凝らすと幾つもの人影が見えた。

「本当だ!!

生きてる人間があんなに・・・・」

赤城は目を見開くように、驚きの声を上げた。

「おい、合流しようぜ!!

赤城は二人の方を振り返り、そう言った。

「いや、駄目だ。

敵かもしれない」

元江は言い聞かせるように言った。

「敵って・・・・どう見たって人間だろ?」

赤城は少し抗議するように言い返した。

「同じ人間だからといって、味方とは限らない。

奴らの目的が分からない以上、しばらくは様子を見ないと」

稀人も元江と同じ意見らしい。

元江は何か言いたげだったが、言葉をひっこめた。

不意に、羽音のような音が、アジトの上で響いた。

まるで何十本もの傘を、一斉に開いたような音だ。

「!?」

赤城が身を乗り出すように外を見ると、大きな影がその上を横切った。

それはまるで太古の地球に生息していた、翼竜のようだった。

「何だアイツ!?

ビシュラか!?」

稀人や元江たちもその翼竜に釘付けになった。

そしてその翼竜は、人々にいるコロニーの方へ向かっていた。

「どうする」

元江が肯定文のようなイントネーションで、呟くように言った。

「どうするって、何を?」

上ずるような声で赤城は聞き返す。

「助けるかどうか」

元江のその問いに答えるかのように、稀人は外に飛び出した。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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