9月の怖話アワード受賞作品に対するオカルト研究家・ホラー作家でもある山口敏太郎氏による動画書評が公開されました。上位8作品全てをレビューしています。
先月に引き続いてのアワード受賞作品のレビューです。受賞作品の面白いポイントを詳しく解説してくれますので、レビューを見た後は、よりその作品を楽しめるようになります。
また今後作品を作るにあたって、描写方法やストーリーをより盛り上げるための参考にもなりますので、是非ご覧ください。
動画を文字に起こしました。
山口敏太郎です。怖い話グランプリの9月期の書評をやりたいと思います。実は昨日VTRを撮ったんですが、うちの犬が大暴れをするということがありまして、あれはNGということにしました。今回が本当の書評です。
8位:友人宅にて・・・②
投稿者:andy兄
次点扱いなんですけども、まず8位をいきますね。これはですね、andy兄さんという方が書いていただいた「友人宅にて」。
廃墟マニアの方が、非常に霊感強くて心霊現用に巻き込まれるという話なんです。廃墟マニアの方、私の友人にもいるんですけども、よく心霊マニアと間違われて非常に心外だということがよくあるそうですね。
中で非常に面白かったのがですね、「幽霊は幽霊らしく透明でいろ」というセリフが僕は非常に面白かったですね。さらにですね、人柄が出てますね。書かれた方の優しい人柄が出ていて、ついつい色んなことに巻き込まれてしまうというところが、ちょっとコミカルな感じもあって面白い感じがします。なんかね、非常にこの「友人を助けてあげたい」という気持ちが伝わってきてですね、いいんじゃないでしょうかね。
事後物件物なんですけども、そこで執着してる親子の幽霊の話です。それで子供の幽霊が見に来た人の背中にひっついたりするという、そういう話ですね。面白かったです。
7位:貧乏旅行
投稿者:ほらお
何者か分からない者が、人に襲いかかってボコボコにして、レイプをしてしまって、身ぐるみ剥ぐという。まぁ窃盗団の話なんですけども、ちょっと妖怪じみた…こういう話が元になって妖怪になってるのかなという感じがします。
僕も地方出身なんですけども、田舎の怖さというか、地方出身者の怖さが分かる内容になってますね。
タクシーの運転手がいい味を出しているという点がポイントだと思います。ただですね、ひょっとしたら裏のオチがもう1つあって、タクシーのオッサンがですね、売上をあげるためにこういう怖い話を作ってるのかなぁ、といった深読みを出来るオチになってますね。
シンプルな話なんですけども、ショートショートの短編小説のような味わいもあってですね、非常に品が良い出来上がりになってますね。
6位:灰色の森
投稿者:らいと
これすごいですよ。コウモリのような猿のような、身軽にビルからビルに飛び移る怪物が出てきます。これまぁコウモリ人間というんでしょうかね。ちょっとショッカー怪人を連想させる怪物で、実際UMAでもですねマンバットっていう怪物がいましてですね、近い形状の怪物がいるんで、それをモデルにしたのかなぁといった感じもあるんですけども、自殺願望者が見てしまう共同幻想なのか、それともこの主人公の女性の脳内映像が、こういうコウモリ人間のように描写されてるのかなぁといった感じがします。
最後、悲劇的な終わりになってまして、こういう悲劇的な終わりもなかなかホラーとしては面白いという感じがしますね。
なんて言うんでしょうね、心の中に棲むこういう魔物的な描写というのは、僕は今後もっと色々あってもいいと思います。幽霊でも妖怪でもないこういう怪人っぽい、UMAっぽい怪物というのもですね、今後面白いのかなぁと。
5位:友人宅にて・・・①
投稿者:andy兄
悪霊と思わせておいて実は守護霊とかですね、この女の子と付き合ってる彼氏が彼じゃないか?と思わせておいて違う人というね、フェイントのかわしかたが上手い構成だと思いますね。
俗にいう生霊ネタなんですが、設定のうまさで上手くまとめてるような状態です。
andy兄さん、またしてもですね、人に頼まれて事件に巻き込まれてですね、andy兄さんのお人好しぶりでどんどんこういう事件に巻き込まれていくシリーズっていうのが結構面白いですね。心霊界の寅さんみたいに、お人好しでどんどん酷い目に遭っていくというシリーズを今後も期待したいですね。
不動明王の技を使っているという背景が、さっきの作品、今回の作品でだいぶ明らかになってきますので、今後そういったもっと専門的な描写があれば、より一層面白くなると思います。
4位:消える。【姉さんシリーズ】
投稿者:言葉遊びの弟子。
姉さんシリーズ。この姉さんが非常に男前なんですね。気風が良くてですね、その姉さんが霊能者で色んな事件を解決していくという内容になってます。
ある神社に行ったことによって不幸に巻き込まれていくんですが、姿を消してしまう、魔物によって捉えてしまうというという事ですね。小指から消えていくというところが、魔物との契約、魔界との赤い糸みたいな感じがして、ちょっと恐ろしい感じがしますね。
こういった神仏ではない者を祀っている神社は、実は日本全国であります。そういったものに接してしまった姉さんの対応ぶりが面白いですね。非常にクールなところが格好いい。姉さん萌えの人が増えてくるんじゃないですかね。
3位:実は見えていた
投稿者:@ko
これはですね、人と思えたものが霊だった、もう1つ人と思えたものが霊だった、という二段落としです。霊だと思ったら人だったというのも前回あったと思うんですけど、今回は人と思ったら霊だったというパターンの繰り返しの二段落としになってますね。
味わいはね、最後ポケットを見たら、その中にキャンディがあったという点ですね。そこら辺がちょっとオシャレな感じがして、ちょっと余韻を残す気がしています。
廃虚ネタ、そして夜間のバイト中の事件ということで、ちょっと面白いかなぁと思います。
2位:竜雷時雨
投稿者:嗣人
なんとなくね、これね「雨を呼ぶ竜」、小型の竜、親子の竜なんですけども、子供の竜が体に憑依してしまって、それが雨を呼んでしまうというストーリーなんです。雨の竜との別れがですね、ラスカルとの別れみたいな感じで、あらいぐまラスカル的な感じがして、非常に切ないような楽しいような、いい話になってますね。
これまた不思議な霊能者が出てきて助けてもらうという話なんですけど、なんとなく今後新しいシリーズが続いていくかなぁといった予兆があります。この女性との出会いがなんかね、メーテルと哲郎との出会いのように思えまして、非常に気になりますね。今後シリーズ化が期待される作品ですね。
1位:地獄。【姉さんシリーズ】
投稿者:言葉遊びの弟子。
姉さんシリーズ。これまたキャラ推し1本の姉さんシリーズ。もうキャラが完全に活きてますね。自殺者が何度も同じものを繰り返すという、ありきたりのネタなんですけども、それをうまく処理しています。
それで姉さんがですね、やっぱり助けないですね。下手に助けない。もうダメなものはダメだと。アレにハマってるものはハマってるんだ、と言ってもう無視するというか、いい意味で突き放してあげているというところが、姉さんの男前ぶりをうまく表現していると思います。これはですね、姉さん萌えのファンが増えるんじゃないかなと思ってますので、今後も期待できるシリーズですね。こんな姉さんがいたら、ぜひ弟になりたいなと思うのは我々40代男子もそう思いますね。
ということで今回の8作品、非常に粒が揃ってきてますが、実話怪談勢よりもジャパニーズホラーサイドの作品が増えてきてます。来年はジャパニーズホラーと実話怪談を分けていきたいと思うんですけども。ジャパニーズホラーはですね、やっぱり構成とオチというところがメインですね。実話怪談といのはですね、やっぱりオチがメインだと思います。その実話怪談のオチ一発勝負と、構成力とキャラ設定とかで勝負していくジャパニーズホラーのせめぎ合いというのが今後の怖話の争点になると思います。
実話怪談もいいです、ジャパニーズホラーの異種格闘技戦になっておりますけども、今月はジャパニーズホラーの方が優勢であったという感じがしますね。ということで実話怪談勢の巻き返しにぜひ期待したいなぁと思っています。
今月の書評でした。大変僭越ながら書評をさせていただきました。また来月も再来月も、いい作品を読ましていただければ幸いかと思います。以上です、よろしくお願いします。
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