私は俯いて歩く癖があった。
その癖を直した今でも、光を背に受けて歩くと、自らの影と目が合うことがある。
表現は可笑しいが、それが適切だろう…。
後輩に誘われ参加した飲み会…。要するに合コンであるが、初めてそのような場に足を運んだためか、雰囲気に馴染めないでいた。
その様子を察してか、そうではないのかは、分からないが、向かいに腰を下ろしている女性が話し掛けてくれた。
彼女との出会いは、ごくありふれたもの、その後の付き合いも、ごく普通の恋人同士であったであろう…。
永遠の別れは、唐突に訪れる。
なぜかは、避けておこう…。
とにかく彼女は死んだ。
弱い私は、その後、ただ沈んだ日々を送るだけだ。
悲しみからではない。
あのときはそうだったが、今は、決してそうではない。
恐怖からである。
彼女ではない。
いや、むしろ彼女は被害者であろう。
『影が…ね…』。
ふ、と落とした視線に、哀愁めいた様子を感じた私の呼び掛けに対する彼女の応えだった。
今、それは、私の影の中にいる。
充血したあの目が、いつも私を見据えているのだ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話