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短編2
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ピチャッ…ピチャッ…

10年ほど前のこと。

私達は大学の映画サークルの活動で、廃屋となった洋館に向かっていた。

建物の所有者の同行を条件に撮影の許可は得ていた。

『建物を弄るのは構わないけど、土地は別の人のだから、立ち木や塀は念のため触らないでね』。

現場に向かう車中で、同じ説明を何度も繰り返す建物オーナー。

土地の所有者とは音信不通らしいが、正直どうでも良かった。

浮かれていて、その拘り様に疑問すら感じない有様だった。

期待通りだ。雑木林の中の開けた土地に洋館が寂しく佇むという、ホラー映画にはこの上もない好条件だった。

洋館自体は朽ちてはいるものの普通の建物に見えた。

内部も長く使用されてなかったが故の痛みがあったりホコリが不快であるという程度で、我慢できないほどの問題はない。

明らかな違和感を感じたのは中庭だった。

そこの片隅に立っていた枯れ木から出る言い知れぬ暗い雰囲気に悪寒を感じずにはいられなかった。

とはいえ、撮影するには至れり尽くせりの現場だったことに私も満足だった。翌朝目覚めるまでは…だが。

機器メンテ兼カメラマン係の私は早朝4時にそれらの整備に一足先に起床した。

眠気まなこだったが、何気なく中庭に視線が向く。

私の叫び声に驚き起きてきた他メンバーも凍り付いた。嘔吐し泣き崩れる女性メンバーに手を差し伸べてやる余裕すらなかった。

あの木にぶら下がって振り子のように揺れる、もの言わぬ主となったオーナーを目の当たりにしたのだ。

当然の反応なのかもしれない。

首吊りの亡骸の有様は噂ながらに聞いていたが、予想を遥かに上回っていた。

穴という穴から滴り落ちる体液で枯れ木の根元に溜まりができていた。

あの…、

『ピチャッ…ピチャッ…』

という音を一生忘れることはないだろう。

後日談は余計かもしれないが記しておく。

当然、我々は警察の取り調べを受け、建物オーナーとの関係を散々聞かれたのだが、まるで犯人扱いであった。

顎の縄の搾痕が下から引っ張ったかの如く深かったためだ。

そして事件から2日後、あの木の根元から白骨死体が発見されたニュースを見る。

土地の所有者の他殺体だった…。

下から引っ張ったのは…。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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