暗い夜道、帰宅途中。
昼間でも薄気味悪いと評判の公園。
一画が林のようになっていて、確かに薄気味悪い。
でも、いつもそのすぐ側を通って帰る。
そこを通るのが一番近いからだ。
時刻は深夜2時。
口の中のガムは、もうすっかり味が無くなっている。
シンとした公園。
気味の悪さで、自転車のペダルをこぐスピードが自然と上がった。
――ガサッ
不意に物音がした。
急ブレーキの耳障りな音と共にタイヤが地面を擦る。
――ガサッ……ザクッ
――バリッ……ズルル
――ゴキリ……クチャクチャ
茂みの中。
何かの影が忙しなく動き、妙に生々しい嫌な音がする。
何かに似ている音だ。
――ブチッ……クチャクチャ
なんだ……
背筋を刃物でなぞられたような、ゾクっとする寒気。
ふと、口に入ったガムが気になった。
これは……
軽くガムを噛む。
――クチャ
そうだ、この音に似ている。
何かを噛む音……食べる音だ。
何を?
こんな夜中に、公園の茂みの奥で。
何を咀嚼しているんだ?
茂みから目を離せない。
この向こうで、何かが何かを食べている。
――ゲフゥ
大きなゲップ。
食事は終わったようだ。
ガサガサと音がして、何かの影が茂みの奥へ消えて行く。
……何を食べていたのだろう
恐怖が引いて、出てきたのは好奇心。
耳をすまして、もう何もいないことを確認する。
……よし
自転車を降りて、恐る恐る茂みに近づく。
自転車から取り外したライトを頼りに、茂みの奥へ。
その時、何かが足に触れた。
……?
ライトを下に向ける。
そこには無惨な姿に変わり果てた、犬の死体があった。
うげぇっ……
吐き気が込み上げ、思わずガムを飲み込みそうになる。
犬は綺麗にバラされた後、食べられたようだった。
几帳面に解体され、僅かに肉片の付着した骨が部位ごとに並べられている。
つまり、これは人間の仕業……?
そこまで考えた時点で、思考能力を失った。
視線を感じたのだ。
何処から?
咄嗟に横を見ると、闇の中で輝く二つの黄色い目が、こちらを見つめていた。
怖い話投稿:ホラーテラー かるねさん
作者怖話