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短編2
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御左口 9

常世から私達の信仰の神となって現世に移り住んで守ってくださる方をお招きした。

この地に降りられた神は烏天狗様。

信仰には掟といって、神様と交わさなければならない約束がある。

私達は決められた掟を絶対に破ってはならない。

もし破れば災いが生じる。

以前に余所からこの土地に移り住んできた者が、何も知らずに重要な掟を破ってしまった。

常世には常夜という別の様相を持っている。

常夜は地獄とされる禍や厄災を齎す夜だけの世界。

逢魔時(おうまがとき)と言って怪異のものに出合う時がある。

その時に災いを齎す常夜に住む神が降りてきてしまった。

私達にとって悪魔のような存在だが、古来より客神(まれびとがみ)と呼ばれる神の一種だ。

御左口、或いは赤口とも書いてミシャグチ、シャグジなどと呼ばれ蛇の姿をしている神が降りてきて暴れまわった。

災いを止める為には依代(よりしろ)と言われる、神霊が依り憑く対象物として生贄を捧げなければならなかった。

そしてミシャグチが生贄の骨肉と血を依代とすることで現世にとどまり、現世での信仰の対象として神格化することが条件である。

生贄となる依代の巫として、今の君と年の近い児童をミシャグチは選んだ。

児童がその短い人生を終わらせるのに体を捧げるが、生きたまま食われて死んでいく苦悶は想像しただけでも生贄となる児童や生き残る者達にとって、とても堪えられないものである。

そこでせめてもの罪滅ぼしとして児童が苦しまずにすむように鏡の結界を作り、生贄を捧げる直前に魂だけを鏡の中に封印し、魂と分離された肉体に鮮度があるうちにミシャグチに捧げられた。

さてミシャグチは現世での神となった。しかし現世では同じ土地に2体の神が住みつくことは出来ない掟となっている。

このまま表向きに信仰の御神体をミシャグチにすれば私達にとっては返って厄災が増すばかり。

元々は常夜の神であるが現世の生贄の力を得たことで、昼夜問わず支配できるようになることは絶対に避けなければならない。

そこまでの力を得る為には生贄を食らうだけではなく、互いの魂の一部を差し出して融合する契りの儀式を行わなければならないことがわかった。

そこで私達は知恵を絞ってミシャグチを封じ込める手段を講じた。

ミシャグチは儀式を受けるまで日中は旧トンネルの闇の中に潜んでいる。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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