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短編2
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匣の中の夢

夕日が彼方に沈む間際、オレンジ色の輝きは、一層強く空を紅色に照らしだし、町の家々は黒い影となって佇んでいる。刻々と、青く暗い世界が近づいてくる。昼と夜とが移り変わるこの時間が、私は好きだ。

町を歩く。公園では子ども達がサッカーをしていた。団地からはエプロン姿の女が歩いてくる。母親だろうか。じきに子ども達は長い影を引きながら帰って行くだろう。

私自身も、夕日に照らされた影になり影を引いて歩き続ける。

やがて日は沈みきった。街灯に照らされた町なみ。変化の終わった空。私も、もう帰ろう。

先程の公園を通り掛かる。誰もいない公園の中央を、円形に、やはり街灯が照らしている。その中を、何かがチラついた。よく見ると、地面にへばりついて、何かが動き回っている。影だ。小学校低学年くらいの小さな影が、7、8つばかり、動き回っていた。

影は、遊んでいる、という印象を私に与えた。ちょうどサッカーをしている様に、縺れ合いながら何かを追いかけるように一丸と、縦横を走り回っている。

私はその光景を見入っていた。まさか先程の子ども達の置き忘れではあるまい。すると、街灯に照らされた円形の中に、小さな影の3倍はある、大きな影が入り込んできた。

異変は起こった。走り回っていた小さな影は一瞬間、その動きを止め、そして大きな影を囲み始めた。囲まれた大きな影に反応はない。

小さな影は、大きな影に手を伸ばし、むしり始めた。大きな影はちぎられて段々と小さくなっていく。むしり取られた影の破片は、黒色が薄くなって透き通る様に消えてしまった。

私はハッとなって自身の足元を見た。街灯に照らされた私の足元に、影は、なかった。

再び公園内を見ると、そこには何もなく、ただ街灯に照らされた円形の地面だけがあった。

怖い話投稿:ホラーテラー 菊地☆トミーさん  

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