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中編6
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煙の中

昨日『黒い少年』を投稿した者です。

高校生の分際で書かせてもらったのですが、駄文にも関わらず読んで下さった方には大変感謝しています。

この先何回か投稿させて頂こうと思い、ペンネームも付けさせてもらいました。

まだまだ文才には乏しい身ですが、どうぞよろしくお願いします。

前置きが長くなってしまいましたが、今回も私が中1〜中2にかけて体験した話を書かせて頂こうと思います。

最後まで付きあって下さるとこの上なく光栄に思います。

これは私が中1・2年にかけて体験した話である。

時は中学の入学式まで遡る。

その日、私は早速できた友達と帰路についていた。

すると、道路を挟んだ反対側の歩道の先に一人の女性が立っているのに気付いた。

彼女の髪は、顔を覆い、腰辺りまでだらし無く伸びていて何となく不気味な雰囲気を醸し出していた。

真っ白なワンピース一枚といった出で立ちであった。

私は彼女を特に気にも留めずにそのまま歩を進めた。

その日から彼女は頻繁に私の目の前に現れるようになった。

私は小学生だった頃からサッカーが好きだった。

そのため、地元でも強豪で知られていたサッカー部への入部を決めた。

ギラギラと注がれる太陽の陽射しと鬼コーチの指導の元、毎日のようにグラウンドでボールを追っかけていた。

ある一日練習の日に、コーチから

「PK練習をしろ。外した者は今日一日学校の周りでも走っとけ。」

と言われ、私達はまるで軍隊のように

「はい!!」

と声を揃えて返事した。

一人ずつ順番にゴールに向かってシュートを放って行く。

勿論、キーパーにも罰ゲームは用意されているため、彼は全力でシュートを止めに来る。

私は順番待ちしてる間の、あのプレッシャーから来るPK独特の緊張感が嫌いだった。

そして私の順番が回ってきた。

様々な方向に飛び散ってしまった石灰の上にボールを置き、5・6歩下がり、深呼吸をした。

私はボール目掛けて右足を力いっぱい振り下ろした。

しかし、不運にもボールはバーをかすめて彼方へと飛んで行ってしまった。

私はため息を一つつき、ボールを拾いに走り出した。

まるで追っかけている私を嘲笑うかのようにそれはコロコロと転がっていく。

ボールの先に人が立っているのに気付いた。

その人はボールを拾い、遅れて走ってきた私に快くそれを手渡してくれた。

私は安堵し、感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとうございます。」

小さくお辞儀をしたあとに背の高いその人の顔を覗こうとした。

長い髪で顔が見えない。

真っ白なワンピースを着ている。

『あー、あの時見かけた人だ。』

と心の中で呟いた。

私は踵を返しグラウンドに向かって走り出した。

『それにしてもやっぱり気味悪い人だったなー。』

何ヶ月か経ち、季節は冬になっていた。

練習にも慣れてきた私はその日も練習が終わり、へとへとになりながら自宅に帰って来ていた。

リビングで夕飯を済ました私は、部屋に戻って眠りにつこうと思いリビングを後にし、廊下に出た。

廊下に出ると真っすぐな道が続いている。

その距離は短いため、普段明かりは消されている。

真っ暗な道を進んでいくと、突き当たりに左右に隣り合うように並んだドアが現れる。

左が母の寝室、右が自分の部屋になっている。

母の寝室にはパソコンが設けられており、その部屋のドアが開いていれば廊下からでも見える位置に置かれている。

私は廊下を真っすぐ進んだ。

母の寝室のドアが開いているようだ。

しかし、私は気にも留めるわけもなく通りすぎようとした。

彼女がいた。

パソコンの前に。

こちらをジッと見ているのが顔が見えなくても分かる。

私は背筋に稲妻が走るのを感じた。

途端に危険を察知し、一目散に自分の部屋へ駆け込んだ。

ベッドに飛び込み、

布団の中に隠れた。

私はしばらく恐怖で震えていたが、いつの間にか夢うつつの状態になり気付けば翌朝になっていた。

睡眠不足からか、ダルい体を無理矢理起こし、私は登校した。

彼女はそれから毎日現れるようになった。

慣れというのは怖いもので、私はいつの間にか彼女を見るのに何の恐怖も感じなくなっていた。

しかし、それは何の予兆も無く起きた。

中2の夏、紫外線により肌を真っ黒に焼いていた私は例のように、部活が終わった後に、帰宅し、夕飯を食べていた。

夕飯を済ました私は

「ちょっと調べものしたいからパソコン借りるね。」

と母に断り、リビングを出た。

廊下を歩き、二つのドアが現れたので、私はそのうちの左側のドアノブに手をかけた。

その時だった。

ひどい耳鳴りがし、同時に体が硬直した。

私は内心パニックに陥った。

『えっ!?・・・・・何これ!?どうなってんの!?』

ドアが独りでにゆっくりと開きだす。

金属の軋む音と共に、ゆっくりと中の様子が伺えてくる。

私は目を見張った。

果たして彼女がパソコンの前に立っていた。

しかしいつもと違う。

悍ましい気を彼女は放っていた。

私は額に脂汗が浮いているのを感じた。

背中もびしょびしょだ。

体は未だに言うことを聞こうとしない。

『動け!!・・・頼むから動いてくれよ!!』

しかし体はびくともしない。

目しか思い通りにならない。

彼女はしばらく立っているままだ。

別に何かしているわけでも無い。

途方に暮れた私はこのまま何も起こらずに事が過ぎるのをひたすら祈るだけだった。

しかしそう上手く行くわけも無かった。

彼女の位置がさっきと変わっているのだった。

いや、よく見ると近づいて来ている。

ただ近づいているわけでは無い。

言い例えると

シュンっ・・・・シュンっ

と一定距離を瞬間移動しているような感じ。

彼女の足が動いていないのだ。

私は恐怖のどん底に陥った。

彼女はどんどん近づいてくる。

あと数メートル・・・

ついに彼女は私の目の前にたどり着いた。

背の高い彼女は私の目線に顔を下ろしてきた。

息がかかる。

とんでもない異臭を放っている。

やはり髪のせいで顔が見えない。

彼女は両手で前髪を分けるように指で髪を持ち上げた。

顔が伺えた。

・・・・・・煙??

その顔は煙の上に唇が浮いているようだった。

煙はかなり深いところまで続いてそうだった。

彼女は口を大きく開いた。

次の瞬間、

私の頭はまるごと彼女に食われた。

視界が煙に包まれた。

気がつくと私はさっきと変わらず母の部屋の前に立っていた。

気を失っていたようだ。

ドアが明け放たれている。

部屋の明かりもついている。

私はそれでも

『やっぱり現実のわけ無いよな・・・・』

と思えた。

しかし、やはりパソコンの前に座るのに若干トラウマになってしまった私はリビングに戻って、家族の活気に触れることで恐怖を紛らわそうと考え、踵を返した。

足に何かが絡みついている気がした。

視線を落とした。

私のものとは思えないほど長い髪が何本も絡みついていた。

我を忘れてしまった私は無我夢中で廊下を疾走した。

リビングに飛び込むと母が怪訝そうな顔つきでこちらを見ていた。

「あんた・・・・どうしたの」

若干笑いそうになっているのが伺える。

私 「さ・・・さっき、女の人に襲われて、あ・・・・足にこんなものが・・・」

と言って母に足を見せたが、そこには何もついていなかった。

走ってきたせいで落ちてしまったのか、はたまた幻覚だったのか・・・・

母は口を開いた。

「何言ってんのよあんたは。さっきまでパソコンいじってたんじゃなかったの??。2時間ぐらい向こういたわよ??」

どうやら私は2時間ほど母の部屋の前で立ち尽くしていたようだ。

その後、彼女は姿を表さなくなった。

長い長い駄文になってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー アルミさん  

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