これは僕がまだ物心つかないときの母親の話だ
その日は雨が降っており、幼き日の僕をベビーカーに乗せ母は家路を急いでいた
その当時、自宅の近くには災害の為、家は残っているが住んでいた人は死んでいる、誰の物でもないある意味宙ぶらりんな家が存在していた
母はその家が遺品のようなものにしか見えず、縁起の良いものには見えなかった
それに実際、いい噂を聞いておらず『夜になると誰もいないのに家族の声がする』という、にわかに信じ難い噂もあった
その日も問題の家を早足で通りすぎようとしてたが、在るものがまだ綺麗なままの家から見えた・・・
平屋だったその家の窓から遠目に首吊りが見えたのだそうだ
母は想像もしていなかった現実にパニックをおこし気がついたら自宅に帰っていたらしい
数分たって、やっと落ち着いた母が考えたことは、『あれは本物の死体だったか?』だそうだ
幽霊であれば怖い思いはしたけど話のネタになる、だけど本物だったら早めに通報しなくてはいけない、という風に当時は考えたらしい
今思えば黙殺するっていう選択肢もあったと母は笑いながら言う
結局自分の目で確かめるという結論に至った母は、僕を家にいた叔母に預け、問題の家を見に行った
問題の家につき、見えてしまった窓の方に近づいて行って恐る恐る窓を覗いた・・・
母は目の前の光景にため息をついた
ただ単に濡れた子供用の雨具(カッパ)がハンガーにかかっており、フードの部分が頭のように見えただけで、首吊りでもなんでもなかった
母はなんだかホッとしたようなガッカリしたような感じで自宅に帰って行った
その日の晩御飯のときに母は今日あった自分の見間違いについて父に面白可笑しく話したところ、父は箸を置いて顔が青くなったそうだ
気になって母は
母「どうしたの?」
と聞いたら、父は
父「家には誰も居ないのになんで雨具があるんだ?後、なんで家の中なのに濡れて、しかも子供用なんだ?」
と言われるまで、その不可解な現象に気付いていなかった母は父と同じく顔を青くしたそうです
今はその家は取り壊されてありません
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話