中編3
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動物園(迷子)

気づくと僕は靄がかった動物園に居た

確か、今日は遠足の日だった筈だ

朝早く、お母さんにお弁当を作ってもらい

友達と一緒に食べるであろうお菓子を持って

いつもよりちょっと早めに学校に行き

バスに乗って出発した

行き先は動物園だ

そこまでの記憶はある

いつの間に動物園に着いたのだろう?

辺りを見回したが靄のせいでよく見えない

かろうじて、檻が見えるだけだ

檻にはプレートがかかっていて

そこには「象」だとか「蛇」だとか「豚」だとか

表示されているだけで

何の説明も書いていなかった

「みんなぁ~、せんせぇー、

 どこいるのぉ~」

僕は、できるだけで大きな声で叫んだが

返事はまるで返ってこなかった

寂しさが募る

子供の僕にとっては園内は結構広く

どこをどう歩いているかも解らなかったけど

僕は歩き続けた

ふと遠くから誰かが歩いてくる

見覚えがある姿だ

その瞬間、僕は嬉しくなって

駆け出した

「せんせい!!」

先生も僕をとわかったのか

小走りで駆け寄ってくる

「良かった!!こんなところに居たのか」

先生は心配そうな顔をして言った

「せんせい!!」

僕は先生に抱きついてもう一度叫んだ

「はぐれたかと思って、心配したじゃないか!!」

「ごめんなさい!!」

「いや、いいんだ。こうして会えて、安心したよ」

そういうと先生は僕の手を握ってきた

先生の手は暖かく、何となく安心した

僕と先生は、一緒になって暫く歩いた

「せんせい…」

「なんだい?」

「いままで、ごめんなさい!!これからいい子にします!!」

「ん?どうしたんだい急に?」

「ううん、せんせいに会えて嬉しいんだ」

「そうかい。私も君に会えて嬉しいよ。本当にはぐれなくて良かった」

はっきり言って僕は、問題児だった

新任だった先生の言う事をいつも聞かなかったし

イタズラもいっぱいした

先生の靴を隠したり

先生の給食に虫を入れたり

僕一人のせいではないけど学級崩壊もしてたと思う

極めつけはPTAで先生を困らせるために

お母さんにわざと先生の事を悪く言ったりもした

でもこんな時は、やっぱり大人が頼りになる

「ねぇ、せんせい。他のみんなは?」

「ん?クラスの皆かい?さぁどうだろうね。多分ここに来ないと思うよ」

「え?みんな、ぼく達をおいてどこか行っちゃったの?」

「そうだね、私達とはどこか違うとこに逝ったと思うよ」

その瞬間、先生は僕の手を急に強く握ってきた

「いたい!!、いたいよ。せんせい!!」

先生の手を必死に振り解こうと

暴れながら、僕はようやく思い出した

あの時、動物園に行くバスの中で

僕は、いつもどおり騒いで先生を困らしていたんだ…

僕の席はバスの最前列で

先生が僕を注意しに来たときに…

僕は思いっきり先生を蹴飛ばしたんだ…

先生はその拍子にバランスを崩して…

そして、運転手さんのほうに転がり込んで…

「せんせい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」

「いや、いいんだよ。誤らなくて。

 君はこれから一緒に私と罰を受けるんだ」

 

「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

「ほら周りの檻を見てごらん?」

気づくと、そこは最初に僕が居たところだった

さっきと違うのは靄は晴れていて

檻の中が見えるようになっていた

「象」と書かれた檻には石を背負った人たち…

「蛇」と書かれた檻には体中を布で巻かれた人たち…

「豚」と書かれた檻には身動きがとれないほど太った人たち…

僕は驚きのあまり何も言えなくなった

「みんな、悪い事をしたからああなっているんだ

 君と私も悪いことをしたんだから

 ああなるんだよ…さぁ、行こう

 クラスメイト、バスの運転手さん、バスガイドさんを

 殺してしまった罪を一緒に償おう」

先生は、遠くの人影に向かって指を指した

「ほら、よく見てごらん

 向こうから歩いて来るのがこの動物園の園長だよ」

先生はますます強く僕の手を強く握って

号泣する僕を引きずり始めた

「園長さ~ん

 見つかりました~

 この子が私がさっき言っていた悪い子ですよ~」

正気を失いそうな意識の中で

僕は思い出していた

運転手さんに倒れこむ時の先生の笑い顔を…

※ 以前の投稿「動物園」を読んでいないと解らない内容だったかもしれません。

失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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