この話は出来る事ならしたくなかった。
一人の人間の人生を変えてしまったからだ。
しかし大人気作家の月凪氏に真っ向から喧嘩を売った上、自分自身の作品も酷評されたの で、この話をする。
先に言っておくが、実体験であり、一切の脚色は無い。
私には月凪氏のような文才は無いが、創作に頼らない実体験の重みと言うものを受け止めて欲しい。
小細工が出来ない、不器用な私から月凪氏への挑戦状だ。
それでは始める。
あの出来事を体験したのは、車の免許を取ったばかりの19歳の春だった。
免許を取り、浮かれていた俺は友達4人とドライブがてら心霊スポットに行く事にした。
場所は県内で一番有名な心霊スポットと呼ばれているトンネルだった。
東海地方の方なら絶対に知っている所だ。
もちろん俺が運転で、隣には親友の浅野。
後部座席には前田とミカちゃんが座った。
トンネルへは山をひたすら登る。
道は細く、すれ違いは困難だ。
途中、私の車の後ろにダンプがついた。
チンタラ走っていたわけではないが、やたらとダンプがパッシングをして距離を詰めてくる。
最初は我慢していたが、その内にダンプはクラクションを鳴らしたり、更に距離を詰めたりしてきた。
若かった俺は頭にきて、車を急停車した。
そして一言文句を言ってやろうと車から降り、ダンプに向かった。
するとダンプの運転手も降りて、こちらに向かって来た。
(喧嘩になるな...)
そう覚悟した俺に対して、ダンプの運転手からの言葉は意外なものだった。
「お前ら大丈夫かぁ?」
俺は拍子抜けし、唖然としていると、ダンプの運転手は続けた。
「お前らの車の天井に女が張り付いていたぞ。しかもお前らの車の後部座席の窓から侵入しようとしてたんだぞ!大丈夫だったか?」
ダンプの運転手に言われて自分の車を見たが、女は見えなかった。
しかしダンプの運転手が言う通り、開けた覚えのない、後部座席の窓が数cm開いていた。
ミカちゃんに確認しても窓は開けていないと言い切った。
続く
怖い話投稿:ホラーテラー 紅天狗さん
作者怖話