気が付けば、電車は終点に着いていた。
会社の仕事の事が、また頭をよぎる…
会社は嫌いだった。
いや、嫌いになったのだ。
理由は、陰湿ないじめ。
ここ3ヶ月、それが続いている。
最初は、座席に花瓶に生けられた花。これはまだ笑える範囲だった。お前等は中学生かよっ?てなかんじで…
それが一週程続き、今度は、俺のデスクに知らない奴が座って、何事も無かったかのように仕事をしていた。もちろん、俺は怒った。…だが、周りも当人も無視して仕事に励んでいた。
何をしても無視された。
必要な書類をコピーしていると一人の女子社員が来て、
「やだ、このコピー機壊れてんのかな…」
そう言って、俺がせっかくコピーした書類をシュレッダーにかけ出した。
女に手を上げるわけにはいかないから、俺は冷静を装って彼女に注意した。
しかし、完全シカト…
もう、毎日がこんな感じだ……………
(くそ、寝てる間だけはこれを忘れられるのに。)
不機嫌に電車を降りると、誰もいない、閑散とした長いホームだけが目の前に広がる。
(一体、今は何時だ?
何で車掌は俺を起こさなかったんだ?)
時計は、午前2時をまわっていた。
(ヤバイ、早く帰らないと、明日寝坊しちまう…
っても、この時間じゃバスは無いし…少し高いが、タクシー使うか。)
開け放たれた電車のドアを背に、薄明かりの灯る人気の無いホームを出口に向かって歩く…
駅前には数台のタクシーが並んでいた。
(どうせなら、一番いい車を選ぼう。)
黒塗りのフーガのタクシーに乗り込み、行き先を告げようとすると、
「……!?ああ、お客さん、大丈夫ですよ。行き先は分かってますから。いつもの場所でいいんですよね?」
(はて?俺はこのタクシーに前にも乗ったのか?)
タクシーのドアがしまり、車は暗闇に包まれた街中へ走り出した。
疲れからか、いつの間にか眠ってしまったようだ。目を覚ますと、タクシーはいつもの場所にきちんと着いていた。
「どうも、運賃は、いくら?」
「え?ああ、お代は結構ですよ。それより、早く本当の居場所を見つけてくださいね。」
「は?はぁ、…」
結局、タクシーは代金も要求しないまま去っていった。
(はぁ…明日がダルい。)
歩き出した時、ふと足下の花束に目がいった。
(そうか…俺は…
そうだった。そうだったんだ…)
3ヶ月前。
会社への通勤途中、この場所で事故に遭って…死んだんだ。
怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん
作者怖話