最近、僕のいる病室に新しい子が入ってきた、どうやらこの病院でよく入退院を繰り返してる子らしい。
「しばらくの間よろしくな!」
この子(B君と呼ぶ事にする)は僕にそう言った、病気とは思えないぐらいの元気な笑顔だった。
僕はB君とよく話すようになった、夜8時の消灯の後も、ずっと。
B君は、自分の友達の事や家族の事など、たくさんの事を話してくれた。
「Nの周りには面白い友達いる?」
そう聞かれたので僕は自分の友達の事を話した。
本当は全部嘘だ。僕は学校でいじめにあっていて、友達なんて一人もいない。
B君は僕とは違うんだな、何だかとてつもない劣等感におそわれた。
ある時新しい看護士さんが入ってきた、Sさんだ。
「Sさん可愛いな!!」
B君は僕にそう言ってきた。確かにかなり可愛い人だった。
「うん、可愛いね。」
僕はSさんに一目惚れしてしまった。
でもSさんとは夜にしか会えなかった。どうやらお昼は診療室の方で働いてるらしい。僕は夜がとても待ち遠しかった。
ある日、中途半端な時間に目が覚めてしまった、その時僕は見ちゃったんだ。
SさんがB君の髪をなでてる所。
SさんはB君の事が好きなんだ。
そう、僕とB君は違うんだ。B君は明るくて友達もいっぱいいて、それにかっこよくて…
それに比べて僕は、暗いし、不細工だし。勝ち目なんかあるわけないよ…
その日から僕の劣等感は膨れ上がっていった。
そしてある雨の日。8時の消灯後も相変わらず僕とB君は話していた。でも何だかとても嫌な気分だった。その時。
ひた、ひた、ひた。
外から足音が聞こえた。
「なんか外の方から足音聞こえない?」
僕はB君にそう言った。
B君も聞こえたみたいで、少し怖がっていた。急に病室が静かになった。
「もう!いつまで起きてるの!!早く寝なさい!!」
静かな病室に、Sさんの声が聞こえた。Sさんが病室の見回りにきたみたいだ。
Sさんが病室からいなくなった後、足音の違和感を感じつつも僕たちは寝る事にした。
僕は妄想した。実はその足音は幽霊で、B君を呪い殺すために近づいてきたんだって。B君に対する劣等感は、もはや憎しみに変わっていた。
そしてまた中途半端な時間に目が覚めた。その時、B君の横には男の人が立っていた。僕の妄想が実現するのかな、そう思った瞬間。
「もう!Aさん!!何してるの!!」
Sさんが見回りにきた。
「ごめんね、Aさんはたまにこうやって出歩いてしまう時があるの。ちょっと部屋まで連れて行くね。」
そう言ってSさんはAさんと言う人を連れてって出て言った。何だ、幽霊じゃなかったんだ。
そしてしばらくしてからBも病室から出て行った。そしたら外からSさんが入ってきた。
「ちっ、逃がしたか。仕方ない、こいつでいいか。」
意味がわからなかったが、Sさんが僕に近寄ってくる。そのとき看護士さんが来てSさんを取り押さえた。
何だったんだろう。
その数週間後、Sさんがいろいろな病院で人を殺していた、という事実を知った。そしてB君にガソリンを注射して殺そうとした事も。
「あの時Aさんがいなかったらやばかったな。」
B君はそんな事を言っていた。
Aさんは警告していたんだ。余計な事を…B君なんて死ねばよかったのに。
そして今日、B君が退院する。
「またどこかで会おうな!今度は病院じゃ無いところで!」
あー、死にたい、そう思った今日この頃。
怖い話投稿:ホラーテラー とり辺さん
作者怖話