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中編3
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伝言

お風呂に入っていると、たまに小窓から枯れた

か細い声が聞こえていた。

かといってもう父親や弟と一緒にお風呂に入るわけにもいかない年頃。

そんな時は学校で習った歌や当時のアニメソングを

歌って恐怖を紛らわせた。

結果から言うと、この声は幽霊ではない。

声の正体は空き家を挟んで隣りの家の老婆の声だ。

老婆は時折空き地の真ん中で「あ〜……あ〜」と

小さく声を発しながらポツンと立っていた。

この老婆の孫のサトシは私の幼なじみで、物心つく頃から

よくお互いの家の間の空き地で遊ぶ仲。

いつも明るいサトシだが、老婆の前では全く違う態度を

見せていたのを覚えている。

憎悪に満ちたような目つきで祖母をあしらっていた。

サトシの祖母にあたる老婆には昔の優しい面影は既になく、

夜な夜な近所を徘徊し、家族が行方を追う日もあった。

彼の家族も少し疲れていたのか

老婆への扱いも雑で怒鳴りながら家に

連れ戻しているのを何度か見た事がある。

私自身はそんな感情は無く、もっと小さい頃に老婆と

色々お話ししたり、遊んでもらった記憶が強く、

祖母のいなかった私にとって、やさしい理想のおばあちゃんそのものだった。

そんなおばあちゃんもやがて老衰で亡くなってしまったが、

私とサトシは変わらず空き地で遊ぶ。

腰位までの雑草に覆われた夏のある日、

雑草の間から少し傷んだテープレコーダーを拾った。

家にあった電池と入れ替えるとテープは

何事もなかったように回り始める。

音量を上げてみると民謡のような歌が入っている。

まだ元気だった頃のサトシの祖母の声だとすぐにわかった。

だが幼かった私たちは気にすることなく、録音ボタンを押し

「○○のアホー」とか「やっほー」などの

たわいのない声を入れて遊んだ。自分の声が違って聞こえるので、

時間が経つのも忘れるぐらい楽しく、テープレコーダーを持って帰ってしまっていた。

家でも相変わらず、自分の歌声を録音再生して楽しみました。

ある日、何気に再生してみると風の音に混じって「あ〜……あ〜」と

以前お風呂で聞いた枯れたか細い声が入ってました。

すぐ風のみの音になるのですが、キュルキュルと早送りしてみると、

やっぱりまた枯れた声が入っているだけでした。

幼いながらも少し不気味でした。停止ボタンを押そうとしたところ、小さく

「私、見守っているからね……」と少し温かみのある声で入っていたのです。

元気だった頃の民謡の録音とは時期が違うと思います。

ちょっと気になってそのテープレコーダーをサトシに渡しましたが、

彼はこの事を信じません。渡した翌日に彼に聞いてみると、

やっぱり何も入ってなかったの一点張りです。でも彼はひどく動揺し、

それ以上の事を何も話してくれませんでした。

それからもずっとその事が気になり、

数年ぶりにその事を彼に聞いたところ、やっとテープに声が入っているかを認めました。

彼が再生した時は「私、ずっと見張っているからね」と重く濁った声で入っていたそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー 子子午午酉卯酉卯声さん  

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