俺には四つ下の妹がいた。
すごく可愛くて人懐っこくて、人見知りだった俺だけど妹のおかげで色んな人と仲良しになれた。
いつも「お兄ちゃん、お兄ちゃん♪」ってついてくる妹が可愛くて、お菓子買ってあげたり、おもちゃの指輪買ってあげたり。ありったけの気持ちで可愛がったよ。
時は経って俺が19の時だった、もう俺は独り暮らしだったけど、そん時も妹が可愛くてしょうがなかったからさ、心配だし、妹専用のポケベルまで持ってたんだよ。
その年の秋だった、俺に彼女ができた。人見知りだったし、色々あってその子が人生で初の彼女だった。
俺は夢中になった。どっか連れていったり、プレゼント買いたかったから、あり得ないくらいバイトした。
幸せだった。本当に幸せだった。そんな幸せな俺にある日実家からの電話。
妹が死んだ。イジメが原因の自殺だった。
どうしていいかわからないまま、なんとなくずっと見ていなかった妹専用のポケベルを見てみた。
『次いつ帰ってくるの?』
『電話していい?』
『彼女と仲良くしてる?』
『私が居なくなったら悲しい?』
俺は泣いた、泣き続ける内に声は出なくなって、涙も出なくなった。それでも泣き続けた。
妹が死んで二月が経った頃、彼女が『旅行にでも行こう』と言い出した。
俺はこの時死を望んでいた。景色のいい所から落ちてなくなりたい。そう思っていた。
旅行の日、荷物をまとめて出発して、千葉の某所へ。
吸い込まれる様な断崖絶壁、彼女には悪いけどここにしようと決めた。
でもできなかった、あと一歩がどうしても踏み出せなかった。
彼女に写真を一枚撮られて、宿に直行する。
決まった日程を何も考えないまま宿でのんびり過ごした。
旅行から帰って一週間が過ぎた頃、彼女が血相を変えて家に来た。
『できればあまり見せたくないんだけど…。』
おもむろに写真を見る、崖に立つ俺の肩をはっきりと二本の腕が掴んでいる。
『神社にいこう。』彼女はそう言ったが、俺はこう言い返した。
『大丈夫だよ。』
俺は見つけてしまった、その肩を掴む手の小指に光るおもちゃの指輪を。
『守りたかったんだね。』
彼女の一言に、俺は泣き崩れた。
怖い話投稿:ホラーテラー 豆さん
作者怖話