2才年上の兄貴はバイト感覚で“拝み屋”“祓い屋”みたいな事をしてる。
そういう家系らしいのだが、俺はしてない。
そんな兄貴は周りから親しみを込めて、『あにやん』と呼ばれている。
これは『あにやん』から聞いた話。
いつもより遅めの帰り道。
駅前のアーケードを歩いてたら、
『カラン… カラン… 』
下駄の音がアーケードに広がっていた。
兄(俺も下駄は履くけど、冬やのに寒くないんか?
……元気やなぁ。)
って、思ったらしい。
暫く歩いて歩道のある広めの道路に出て気付いた。
兄(……!?
…まだ、聞こえる。)
立ち止まって周りを見回した。
遠くにチラホラ人影が見える。
音も……聞こえる。
歩いてきた道からのようだ。
さっきよりも音が近づいている。
後ろを見るが誰もいない。
いくつか角を曲がり、気付く。
また近くなった。
次の角を曲がり、自販機の影に隠れた。
『カラン… カラン… 』
すぐ側まできたっ!
次の瞬間…
兄(ゴラ゛あぁぁぁっ!!)
いつものように俺の部屋でだべっていた俺とAとBは、兄貴からそんな話を聞いていた。
兄「『コラァ!』って言おう思ったら…
『まいどっ、いらっしゃいっ!』
…って自販機が喋りよったんや…
……ビビったで。」
『なんやそれっ!?』
思わず3人でツッコミそうになった。
A「…それで音は何やったん?」
兄「丁度おっちゃんが歩いててな……
いきなり俺が出てきたもんで、
『おおっ!?』
…って軽くビビってたわ。」
そら、いきなり暗闇からこんな兄ちゃんが飛び出てきたらビビるやろなぁ。
兄「『なんもないですよー』顔で、おっちゃんやり過ごしてな…
そしたら…
『カラン…』
…て聞こえたから見てたら…
おっちゃんの後ついてくんや…
……音が。
どんだけ見ても、音の主が見えへんねん。
……不思議やったわ。」
俺「…見える方が怖くないか?」
そう聞いた兄貴は、
『ドンッ!!』
と、壁を叩いた。
一瞬固まる3人。
兄「コレ…何の音?
……壁叩いた音やな。
見てたから知ってるわな。
…でも不意に音だけ聞いたら…
……ビビらんか?
しかも、目の前で音がするのに…
…音の正体が見えないんやで。」
すると、ガラッと扉が開き…
妹「何の音やっ!?
びっくりするやろっ!!」
隣の部屋の妹が怒鳴りこんできた。
一瞬固まる4人。
暫く間を置き…
兄「……なっ?
……こういう事や。」
なるほど。
壁叩いた音と下駄の音…
全然違うし、例えになってないやん…と思ったが、言いたい事はわかった。
音の元がソコにあるのに、
音の正体が分からない。
たしかに、気持ち悪いかもな。
結局、音の正体については、
兄「たまに同じ時間に出歩いた時に気にしてたけど……
…あれっきりなんやよね。」
…とのこと。
兄「そのうち捕まえたら、おまえらにも聞かしたるわな。」
…と、言って妹に連れられ部屋を出て行った。
A「捕まえるって。」
B「頼もしい〜。」
……期待してます。
怖い話投稿:ホラーテラー 徳銘さん
作者怖話
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