私、美紀は高校三年の時、両親と旅行中事故に遭いました。
助手席にいた私は重傷で済みましたが、前の席にいた私の最愛の両親は亡くなりました…
病院のベッドでその事実を医師から聞いた時、どうせなら私も…と何度も思いました。
なぜなら身寄りは一切なかったので、天涯孤独でした…
そのまま施設に引き取られました。
施設のスタッフや私と同じく引き取られた子達はとてもいい人達でしたが、両親の死を乗り越えるのが難しく、笑えても心は孤独のままでした。
私はもう一生一人でいい…と、施設の近くで必死に毎日働き、21の時に部屋を借り、施設を出ました。
一人でいいと誓いましたが、ある人の言葉だけが、私の心の中に優しい光が入りました。
同僚の2つ年上の友也です。
彼は、私の過去を全て打ち明けてもなお、私を受け入れてくれて、私は初めて他人に好意を抱き、付き合い始めました。
友也は付き合いだして数ヶ月経った頃から、暗い顔して何かを考える事があり、私は浮気や私に不満があるのか不安になり、何度問い詰めてもその理由を話してくれずにいました。
それ以外は最高の彼なので、いずれ話してくれるだろう…と友也を信じ、毎日幸せでした。
ある時、私は風邪で寝込み近くの病院へ行きました。
高熱で意識も飛び飛びの中、医者に思わぬ事を言われました。
「…薬は出しますが、紹介状を書くので、必ずここの病院に行き診察を受けてください。」
何?
何か重度の病気なの?!
とても不安になりました…
友也に相談したら、なぜか真剣な顔で俺も行かせてくれ…と…
後日、風邪は治ったけど、友也に付き添ってもらい、指定された時間に、指定された大学病院に行きました。
指定された受付はなぜか心療内科…
入ると医師の他に女性の方。
心理カウンセラー?
なにそれ?
意味も分からず絵を書いたり、質問に答え続けたり…
訳のわからない診察を受けた後、医者とカウンセラーに言われました。
「非常に言いにくい事ですが、あなたは両親を失った時のショックから解離性同一性障害になった可能性が…」
解離性…何?
「わかりやすくいうと、多重人格です。あなたの中に別の人格が複数います。」
呆然とする私。
隣で泣く友也。
「風邪の診察の時、あなたは無意識に別の人格に変わり、ひどく暴れたそうです…」
その後も医者は話を続けたが私は耳に入らなかった…
帰り道、友也に言われた。
「ごめん…付き合いだして美紀の異変に気付いたけどどうしていいかわからなくて…これからは一緒に…完治できるように頑張ろう…」
泣きながら抱き締められたが、私はまだ心の病だと実感できない…
だが部屋に帰り、部屋を隅々まで探したらベッドの下、クローゼットの天板外した奥から揺るぎない真実が出てきた。
ベッド下からは、明らかに私の趣味じゃない露出の高過ぎる服と化粧道具。
クローゼットの上からは、どちらも探してた破れた私の服や切り刻まれた私と友也が写った写真と…
小さな…包丁…
怖くなり、
すぐに友也に電話した…
意味がわからない!!
私は私じゃないの?!
私の中にいるのは誰?!
お願いだから消えて!!
私が本当の私????
・?・・?・・?・
・・誰・誰・誰・・
・・・ははは・・・
・?誰は私は誰?・
・・・ははは・・・
・・誰・誰・誰・・
・?・・?・・?・
わ…た…し…は…だ…れ…で…す…か…?…
友也が来るまで不安でしょうがなく、部屋の隅で一人泣き続けた
約束の時間を30分も過ぎてるのに、友也がなかなかこない…
電話したら、玄関から携帯が鳴る音…
ちょうどきたのかと思い、走って玄関に行くと、そこには胸から血を流した友也が倒れてた…
脇には先ほどの包丁が真っ赤に染まり転がっていた…
訳もわからず泣き叫び、友也の胸へ手を差し出したら、まだ触れていないのに私の手は血で染まっていた…
頭が混乱し立ち尽くす…
《邪魔だから殺したの…》
急に頭の中で声が響き、
驚き頭を抱え壁へもたれかかる
《前から…気にくわなくてね……私を消そうとするなんて…許せないから……他の“奴ら”は…さっき…いなくなったよ……》
何?!
何なの?!?!
あまりの事に自然と涙が…
《邪魔者は全員殺してやる》
《あとはあんただけ…》
『クチュ……』
………え…?
床に転がっていたはずの包丁が、私のお腹に…
「では別れを切り出した所、彼が逆上して殺されかけたんですね?」
「はい…そうです。」
「腹を刺され、抵抗したら彼の胸へ刺さったと…わかりました。後日改めてお話を伺いにきます。お大事に…」
病院のベッドで
刑事に話す私……?…
…これで…
…やっと1人になれた…
…笑う私………
怖い話投稿:ホラーテラー Shadyさん
作者怖話