中編3
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引き寄せる体質

私はサイコな人とよく遭遇する。

以前、一日に何度も酷い目に遭ったときの話だ。

私はその日、仕事で3週間休みナシの激務が一段落し、久々の休日を自宅で満喫していた。

何もしないでゴロゴロしていることに幸せを感じていると、花屋に勤めている母から、工具を買ってきてほしいとの電話があった。

車を所有しているのは家族で私だけで、実家から工具を売っている街中の専門店まで遠いということもあり、嫌々ながらも引き受けることにした。

程なくして街中に着き、立体駐車場に車を止めて目的のお店まで歩いていたときのこと。

祝日ということもあり、人通りが多い。

人混みが嫌いな私は自然と早足になる。

そんな中、前方から来る人混みに不自然な空間があるのが見えた。

段々と近づいていくうちに、それは奇怪な行動をしている人を通行人が避けているのだとわかった。

その人は中腰で、上半身を前後に小刻みにカクカク動かしながら、

『グッチュ!グッチュ!』

と声を出しゆっくりと前進している。

目の焦点は定まっていない。

慣れていなかった私は一瞬戸惑ったが、周りの人のようにそのまま通り過ぎるだけだと思い直し、そちらを見ないようにした。

すぐ近くまで来ると、突然その人が俊敏な横っ飛びで私の前に出てきて指をさしながら、

『変なところに行ってらっしゃる!』

と叫んだのだ。

驚いて唖然としている私を尻目に、その人はまた元の位置に戻り、ゆっくりと前進していった。

周りの通行人は、その人よりも私を変な目で見る始末。

それからなんとか平静を装い、目的の店で買い物を済ませた。

一刻も早く帰りたかったが、とりあえず落ち着こうと喫茶店に入ってコーヒーを注文した。

席についてコーヒーをすすりながら外をぼんやりと見ていたとき、

ギリギリ…ギリギリ…

と歯ぎしりの音がする。

ふと斜め前の席を見ると、ゴスロリ系の女性が、ものすごく怒っていた。

一人でいるようなのだが、両胸の前についている白いポンポンを、無理矢理ひきちぎろうとして歯ぎしりをしているのだ。

その光景に目が離せなくなってしまった私の視線に女性が気がついた瞬間、

目を見開き、四つん這いで床を這うように私に近づいてきて、ゲラゲラと笑い出した。

すぐに店員が気付いて取り押さえてくれたのだが、私は完全に放心状態。

店員に心配されながらもフラフラと喫茶店を後にし、やっとのことで駐車場にたどり着いた。

それから実家の母に買い物を渡し自宅に帰る途中、お酒でも呑んで忘れようとコンビニに寄ることにした。

店内でビールを買って車に戻るまで、時間にして3分もかからなかったと思う。

エンジンをかけ、バックミラーを見た瞬間凍りついた。

スキンヘッドの男が後部座席にいて、ニタニタ笑いながら私を見ている。

声も出せずにいると、

『無用心だね。俺だからよかったけど危ないよ』

と言って出ていきました。

今思えば、いい人なのか?と思ってしまうほど混乱していた。

さすがにもう運転する気力もなく、車の中でハンドルにもたれ掛かり目を閉じた。

店員が何度呼んでも私が起きないので、救急車を呼んだらしく気がついたときは病院で点滴を受けていた。

この後も何度かそういう人に遭遇し、今は少し強くなったような気がする。

以上、体験談ですが、駄文で申し訳ありません。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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