あまり怖くないのですが、不思議だったのでお付き合いください。
今朝のことです。
私はいつもより数分ですが出るのが遅く、前方の車にイライラしながら運転していました。
前の車では、運転席と助手席のシートの間で幼稚園児くらいの子どもの後姿が見え、どう見てもチャイルドシートに座らせるどころか、立って遊んでいました。制限速度は40キロではありましたが、その40キロにも達するかしないかというスピードで、平素そこを通る車は5~60キロ出しているので余計に遅く感じていました。
……子どもが気になって遅くなるくらいなら、ちゃんと座らせろよ。
そうでなくとも遅れ気味で家を出た私は、その車の所為で余計に時間を食って苛々を募らせました。後続車もだんだん溜まり、ズラリと並んでいます。
そのうち、前の車は遅いだけではなく、運転そのものも不安定になってきました。一車線ずつの道ではあるものの、路側帯もあって、中央線を挟んでギリギリに対向車とすれ違わねばならないような狭い道路というわけではないのに、時折、中央線からはみ出したりしながらフラフラ走り出したのです。
遅い上にフラフラ走られては迷惑以外の何物でもありません。付き合っていて突如変な動きをされて巻き込まれるのもごめんですし、平素より遅れて出たとはいえ若干の余裕をもって出ているはずなのに、このままでは仕事に遅刻するんじゃないかというほどだったので、私は対向車が途切れたのを見計らって追い越しを掛けました。
抜き去り際に見た運転手は、若い女性でした。初心者マークは付けていなかったけれど、免許を取ってからさほど経ってはいないだろうというくらいの若さです。だからといって迷惑運転をしていいわけではないですが、幼稚園児くらいの子どもをもっているわりには、十代ギリギリか二十歳そこそこという印象でした。
私の後続にいた車は、対向車がその後なかなか途切れなくてその車を抜くことができず、相変わらずそのノロノロに付き合っています。可哀想になぁと思いつつ、だんだんと自分と距離の開いていく車をミラーでチラチラと見ました。
その時、気付いたのです。
あんなにシートの間で飛び跳ねるようにして遊んでいた子どもがいない、と。
え?と思いつつ、ちょっとしゃがんだりしてシートに隠れているだけだろう、とその後も何度かチラチラとミラーを見たのですが、やはりいません。
やがて、何度も中央線を割りながら、ますます不安定にフラフラノロノロと運転していたその車は、脇道に入って行って見えなくなりました。
あの子どもはなんだったのでしょう。
あの車は、本当に子どもが遊んでいるから変な運転だったのでしょうか。
ギリギリに職場へ駆け込んだ私は冷静になるまで「もしかして……」とは思わなかったのですが、よく考えてみると不思議な体験でした。
お付き合いありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話