『おい、起きろ』
朝3時私は兄のその一言で起こされた。
私『何?』
兄『今からツレとカブトムシ取りにいくから、おまえも用意しろ』
兄は二十歳。
いい年にもなってカブトムシ取りなんて…そう思う人もいるかもしれないが、まぁ友達と遊びにいく口実だ。
私『…わかった。』
家の前には、一台のハイエースが止まっていて中に入ると、兄の友達が5人程乗っていた。
まぁいつものメンバーだ。
私もちょくちょく誘われる事があり、皆一緒にいると年上って事もあって、結構楽しかった。
地元から約1時間半かけてようやく山に到着。
暗い入り口が口を開けていた。
山の奥の方へ、ずんずん進んでいく。
山に入って30分、目的地へ到着。
辺りは真っ暗で、ゆらゆらと木々たちが奇妙にゆれている。
車のライトと懐中電灯だけが頼みの綱だ。
さぁ行くぞ、その誰かの声で外にでる。
木に蜂蜜を塗り、待機。
また木を見に行く。
はいゲットン。
二匹ゲットン。
皆ワイワイ楽しんでいた。
と、その時物凄い突風が吹いた。
ヒュオオオオオァァァ
ザザザザザザザザザ
木々が物凄い勢いで揺れる。
すると、向こうの方から足音が聞こえてくる。
ザッザッザッザ。
皆固まっていると、男性が歩いてきた。
歳は40半ばで、体付きはがっちりしていて作業服?のようなものを着ている。
最初は皆びっくりしていたが、まぁ私達と同じ様な目的だろうと思っていた。
懐中電灯を持っていない所から見て、近くに何人かいるのだろうと思っていた。
兄『…こんばんは。虫とりですか?』
男『違うよ、キャンプしてるんだ』
兄『へ~こんな所にキャンプ場なんかあるんですか』
男『すぐそこだよ、そーだ!こっちへ来なよ、もてなすからさ。』
兄は皆の反応を伺って一言。
兄『お邪魔します。』
私はどうもその時から嫌な予感がしていた。
何故なら喋り方がどうも変だ、機械的というか棒読みというか。
顔が笑っていなく、無表情なのだ。
しかし私に権限は無く、付いていく事に。
車はそこに置いていき、歩く事30分ようやく着いた。
遠い。
こんな所から懐中電灯無しで普通私達の所までこれるか?
多分皆同じ事を考えていただろう。
着いた場所は、キャンプ場ではなく川の横にテントを張っているだけだった。
しかも一組だけ。
兄『あの…キャンプ場じゃないんですか?』
男『穴場なんだ』
兄『はぁ…そうすか』
テントに近づくと人がいた。
ガリガリに痩せている女性と、男の子と女の子。
子供骸骨のように痩せている。
軽くお辞儀する私達。
女性『さぁ…こっちへいらっしゃい、おいしいお茶でもどーぞ。』
一同『ありがとうございます』
喉が渇いていたためか、一気に飲み干す。
『ごちそうさまでし…』
ここから記憶が無くなる…
気が付くと私は大きい火の横に1人座っていた。
まわりを見渡しても、兄達は居なく、あの家族が無表情で座っていた。
私の方を見ていた。
私『あの…皆はどこに行ったんですか?』
男達は何も言わず、無言で首を傾げる。
知らないと言わんばかりに。
子供達はニヤニヤしてこちらを見ている。
ヤバイ!
私は足の先から鳥肌が立っていた。
みんなどこいったんだろう。私を置いていくわけがない。
まさか食べられたんじゃないだろうか、嫌な事だけが頭に映る。
すると子供達が『ままお腹空いたよ』
女性『そろそろご飯にしましょ』
私の顔を見ながら言った瞬間に、私はとうとう恐怖を堪える事ができず、逃げ出してしまった。
車のあったほうへ、覚えている限り走った。
後ろを振り返ってもついてきていない所から見て、追っては来ていない。
しかしいくら走っても車は無い。
山のなかを方向も分からずにただ泣きながら走っていた。
何時間走ったのか、辺りは一向に明るくならない。
もう朝が来てもおかしくない。
私は恐怖と焦りでその場へへたりこんでしまった。
下を向き泣いていた。
すると後ろの方から、歩く音が…。
私は兄だと思い、木から少し顔をだしてみた。
!!!!
さっきの奴らだ。
探している、私を…。
私は泣くのを堪え、必死に息を殺していた。
男『ララララ~ララララ~』
女性『うるさいわね、聞こえたら逃げられるじゃない』
子供『そーだよ、久しぶりのご飯だよ』
男『すまんすまん。ついな…さっきのも美味かったからな、つい気持ちが高ぶってしまって……なっ』
兄の事だ…。食べられたんだ。
必死に気持ちを押さえようとしたが、押さえ切れず、声がでてしまった。
『うわ~』
バッ!と一斉にこっちを見た。
女性がニヤっと笑う。
子供が叫ぶ。
『いーーーたーーー』
私はまた、ダーーと走りだす。
後ろからも追い掛けてくる。
私は恐怖で足がもつれるのを必死に耐えて走る。
足はガクガクでいつ転けてもおかしくなかった。
『ララララ~ララララ~』
男は歌いながら走ってくる。
泣きながら走る私。
すると前の方で何かが光った。
車だ!
兄もきっと乗っている。
私は車の方へ走っていく。
後ろからは奴らが追い掛けてくる。
車の助手席のドアを開けようとした瞬間!
ガッ!
鍵が閉まっている。
運転席には兄が乗っている。
私『兄貴~兄貴!開けてくれよ!奴らがくるぞー!』
私は泣きながら叫んだが、兄は前を向いたまま無表情だ。
私『おい!兄貴開けろー!』
兄の顔がこちらを向いた。兄の顔半分が無い。
兄『おまえも、食われろよ。ぎゃっはっはっは』
私『うわぁぁぁ』
私は尻餅をついた。
と、後ろから肩を叩かれた。
後ろを見たら、奴らがいた。
『いただきまーーーす』
奴らが一斉に飛び掛かってきた所で、めが覚めた。
私『ウワァァァァァ』
兄『うぉ!なんだ一体、どうしたんだよ。』
気付いたら車の中で、丁度山に着いた所だった。
夢を見ていたのだ。
兄『着いたぞ、起きろ!』
辺りを見渡す。
あれ?見たことがあるような…。
しかし夢の内容は全く覚えておらず、軽くデジャブだーなんて流していた。
しかし木に蜂蜜を塗り、少し放置してまた木を見に行く。
ゲットン、二匹ゲットン。皆楽しんでいる。
と、足音が聞こえてくる。ザッザッザッザ
1人の男が現れた。
その顔をみた瞬間、夢が全てカムバックした。
私は声を張り上げた。
私『ウワァァァァァ、兄貴!早く逃げろ~』
最初は皆、私の可笑しな行動にポカンとしていたが、私の必死さに負けたのだろう。
皆車に駆け込み、引き返した。
そして、車の中で私は、夢の全てを話した。
勿論笑い話にされたが…。
帰り道中、山の中に小さな川が見えた。
誰かキャンプファイアーをしてるのか、焚き火のようなものがあった。
それをじっと見ていると、奴らがいた。
炎の横には、見知らぬ誰かが座っていた。
奴らがはその誰かを見て、笑っているように見えた。
終わり
怖い話投稿:ホラーテラー トーマスさん
作者怖話