中年のおっさんです。
学がないので誤字脱字を勘弁してくれると幸いだ。
もう四年ぐらい前だったな。
若い頃にお世話になっていた親方の家族の話しだ。
暮れの押し迫っているころだった。
親方の所での仕事仲間だったHさんから電話があった「親方の奥さん倒れて意識が無いらしい」
Hさんの話しをまとめると
植物状態で二度と意識は戻らない。
一週間が峠らしい。
Hさんの話しでは絶望的だ。
しかし奇跡的に峠を乗り越えたが依然植物状態に変わりなかった。
医師の説明では「奥さんの心臓が止まったらそれまでです」
という容態だった。
しばらくしてHさんからまた電話があった。
「親方の奥さん奇跡的に意識戻ってピンピンしてんぞ!」
その知らせを聞いて一安心していたんだ。
お見舞いに行かないとなんて思っていた頃偶然に親方に合ったんだ。
「おう心配かけたな。嫁さん病院移ったんだ。植物状態の人は何ヶ月も居らんないんだよ。だけどなこんどの病院は大丈夫みたいだ」
親方と別れてすぐにHさんに電話した。
「今親方に合って話したら奥さん具合良くなってねぇじゃん!何デマ言ってんだ!」
Hさん「そんなデマ言うか!シャレになんねぇだろ!」
頭が混乱した。
混乱した頭で指を動かし携帯の発信履歴をチェックした。
ない!
ますます頭が混乱する。
確かに自分の家族にはHさんからの電話で親方の奥さんが元気になったって話している。
家族にも確認した。
夢だったのか?
しかしこの出来事は始まりに過ぎなかったんだ。
約一年半後にお葬式の知らせが来たんだ。
親方も心の準備は出来ていたらしく気丈にふるまっていた。
ん?親方のお嬢さんがなんで一人しかいないんだ。
たしか二人姉妹のはずだが。
無事に葬儀も終わり帰路についた。
後日親方に聞いた話しだ。
「実は家の嫁さんは二人目の娘産んだ時に死んでたんだって医者が言うんだよ。出産のショックで脳の血管が切れてたそうなんだ。
確かに出産直後に激しい頭痛で意識不明になったんだよ。それが一夜明けたらケロッとしててさ。
今回の原因もそれらしいんだ。
それから30年も生きていたんだから奇跡なんだってさ。
医者があなた奥さんは素晴らしいって褒めるんだよ。産まれた赤子が心配で30年間も家族の為に奇跡をおこしていたってな。
だからよ嫁さんの心臓が止まるまで毎日病院通ってよありがとうって手握ってたんだよ」
涙が止まりませんでした。
親方の奥さんが倒れたのは二人で旅行に出掛ける朝の玄関先だったそうだ。
本当の家族愛はまだ先にありました。
後日気になる事もありHさんに電話をした。
親方のお嬢さんのことだ。どうして葬式に来てなかったかだ。
Hさんは重い口をひらいた。
「実は内緒にしてほしいんだけどよ。
お嬢さんあぁ二番目のTちゃんな鬱病なんだよ。
もうずーっとまえから」
正直驚いた。
いつも笑顔で明るいTちゃんしか見たことがなかったからだ。
続けて
「病院にも出たり入ったりでな徘徊に放浪癖が酷かったんだ。暗い顔でいつも俯いててよ。だから皆はTちゃんの話しは親方にしなくなったんだよ」
気がついたら電話を切っていた。
ショックだった。
若い頃は少なかれ好意を持っていた人だった。
「Tちゃん」
一人呟く自分がいた。
そしてまた悲劇が親方家族を襲った。
奥さんの四十九日も間近になった頃、親方の所で一緒だった後輩のAから電話があったんだ。
「親方のお嬢さんのTちゃん亡くなってた。俺さぁ奥さんに線香あげて無かったから今日仕事帰りに寄ったらさぁ。
祭壇が
祭壇が二つ並んでてさぁ。一つがTちゃんの写真飾ってあんだもんよぉ」
頭が真っ白になった
まさか自殺か?
Aが続ける
「交通事故だって。
小雨の降る夕方に歩いていた所を乗用車で後ろからだって。
普通なら即死ぐらいの酷い事故だったみたいだよ」
わかったありがとう。
そう言って電話を切るのが精一杯だった。
真っ白になった頭で何とかHさんに電話した
「ふざけんなよ!何でTちゃん亡くなったの黙ってんだよ!」
するとHさんは
「何言ってんだ!Tちゃん亡くなったとかふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」
「すいません。本当みたいです。今日Aから電話があって親方の家行ったらTちゃん亡くなっていたと」
驚いた様子のHさんは
「怒鳴ったりして悪かったな。すぐに親方の家行ってくるよ。知らせてくれてありがとうな」
夜にHさんから電話があった。
「本当だった。暇みて親方の所に行ってくれな」
わかりましたと言って電話を切った。
何で親方にこんな不幸が続くんだ
やる瀬ない気持ちで一杯になった。
後日親方の家にいった。親方はTちゃんの事を詳しく話してくれた。
「お前も聞いてんだろうけどよTは鬱病だったんだよ。
入院しては退院を繰り返してな。
なぜってなTが寂しいって毎日電話してくるんだよ。だから嫁さんが可哀相だって勝手に迎えに行ってきちゃうんだよ。
お医者も俺もお手上げでよ。仕方ないから家にずーっと篭ってたんだ。
そのくせTもよ飽きてくると居なくなってな二、三日帰って来ないんだよ。
で電話かかってきて迎えに行くんだよ。馬鹿らしいよまったくよ。
今回もただの放浪癖かと思ってたんだよ。だけど二、三日しても連絡なくてよ四日目の朝に警察に捜索願いの相談に行ったんだよ。 そうしたらよく似た女性が市内の病院で保護されてますってよ。
病院でTにあったらもう一目見てわかったよ助からないって。
顔なんて形変わってるし肺に肋骨刺さってるし内蔵は何箇所も破裂してたし。
お医者の話しでは今は奇跡的に心臓が動いています。助かる事は難しいでしょう。覚悟してくださいってな。即死でもおかしくない状態で病院に運ばれてきましたと言われたよ。
その晩にTは亡くなったよ。俺が迎えにくるの待ってたんだよな。たぶんよ」
親方はそう言うと写真に目を向けました。
怖い話投稿:ホラーテラー プリン体さん
作者怖話