私は人をこれほどまでに愛したことは今までになかった。
『好きです』からはじまる当たり前の恋愛をしてこじつけのような理由で最後は別れる。
初めて付き合った人から数人は同じ恋愛を繰り返していた。
だけど医学部で知り合った彼を私は心底好きになり愛し、愛しいが故に彼を手離したくはなかった。
だから彼に最後のチャンスを与えることにしたの。
彼はいつものように私以外の女を今日も部屋に連れ込んでいた。
いつも知らない女から着信が入る度私の心は傷ついていたのに…
女が部屋から出てくるのが見える。
女が私を見つけ近づいてくる。
私はその女にお金を渡した。
彼に弛緩剤を飲ませるように頼んでおいた、その女は私の友人なのだ。
きっとあと数分もすれば彼は弛緩剤が効いて動けなくなる。
最後に彼はどんな決断をするだろうか… もし彼が私を見放したら私は彼と一緒に死んでやるわ。
部屋の電気が消えて数時間… 私は手にした包丁を持ち、合い鍵を使い彼の部屋に入った。
包丁を彼のお腹に押し当て問う。
『私と寄りを戻すか一緒に死ぬか選んで』
私は眠りから覚めた彼に涙を流しながら問いかける。
彼の頭はパニックで思考は正常ではないだろう。
でも私はこらえきれない気持ちを彼に吐き出す。
『どうして私を捨てたの?』
包丁の先を彼のお腹に震える手で押し当てる。
『弛緩剤飲ませたの。今日あなた合コンだったでしょ。私の友達に頼んでコンビニで買った水の中にいれたんだよ。体動かないでしょ。』
必死にもがいて体を起こそうとする彼に無駄な抵抗だと教えてあげた。
彼は私よりも早くなんとかしたいと思ったんでしょうね…
寄りを戻すと言ってきた。
『もう浮気しない?』
私は彼の目をじっと見つめ問いかけた。
彼の目は私すら見ていなかった目をそらした状態で彼は『しないよ…』と一言呟く。
私の中で何かがプッンと音をたてて壊れる。
『助かりたいだけだろ!!』
彼の顔を覗きこみ怒りをぶつける。
『あなたは嘘をつくと私の目をみない。』
私の両手は彼のお腹に目一杯の力で包丁を刺そうとしていた。
恐怖からか彼は既に気絶していた…
数センチ刺さった包丁を抜くと少し彼のお腹から血がでていた。
私は彼のお腹を手当てすると精神的な疲れから彼の側で倒れるように寝てしまった。
怖い話投稿:ホラーテラー 早瀬裕也さん
作者怖話