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中編4
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忘れるな!

先日、「叔父と友人」を投稿した者です。霊感はないと思うのですが、どうも私の身内は死んだら夢を見せてくるのか、怖くはないですが夢枕に立った話は幾つかあるので、匿名から黒猫と名を改めて投稿させていただきます。

  

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叔父が亡くなる数年前に、祖父は喉頭癌で他界しました。

といっても、カラオケセットを無理して買うほど歌の好きだった祖父が、声を諦めて手術した甲斐もあって、最初に医師に宣告された余命よりも1年半ほど永らえましたが。

祖父は非常にタイミング悪く亡くなってしまったので、死ぬその時は誰も看取ってあげられませんでした。

脚腰が悪いのを押して祖母が毎日お見舞いに行っていたにも関わらず、その祖母ですら、ついさっき「また明日ね」と帰宅する途中の出来事だったので、看取れなかったのです。うちの家族はその週末にお見舞いに行こうとしていたところでした。

しかも、つい先程までお見舞いがきていたので看護婦さんもナースステーションに戻っていて、病室におらず、個室ではありませんでしたが同室者が居なかった為、祖父は一人きりで亡くなることとなってしまいました。

やはり、それが寂しかったのでしょうか。

叔父が友人達とバイクツーリングに行く予定を立てたその晩、祖父は叔父の夢枕に立って叔父を怒鳴りつけたそうです。

「お前!!その日は俺の命日だろうが!!!」

たしかそのあたりが命日だったような…と思いつつ、正確な日にちを忘れていた叔父は、丁度命日に予定を入れてしまっていたのです。

信心もなければ怖いもの知らずでもあった叔父は、もし命日だったとしても、お盆に皆で墓参りも法要もしたし、出てきたとしても親父だし、とタカを括っていたのです。

が、流石に夢枕にまで立って怒られてはそのまま遊びに行くわけにもいかず、予定を変更して、命日にもきちんとお参りに行きました。

きっと、息子に命日を忘れられたのは、寂しいのと腹立たしかったのとの両方だったのだろうと思います。

余談ですが、そんな祖父が亡くなってから私の身に起きた少し不思議なことを一つ。

祖父が亡くなる数日前に自動車学校の卒業検定に受かっていた私は、公安の試験を控えていました。

学校が一括申込している試験の日程は、お葬式の翌々日。

でも、突然の訃報に、とりあえず喪服となるスーツだけを手に駆け付けた私が試験勉強の物なぞ持って行ったはずもありません。持って行ったとしてもそんな余裕はありませんが。

免許を所持する方はご存じの通り、公安の試験はほぼ丸暗記の100問を、9割以上正答で合格です。ひたすら数を解いて覚えていくしかありません。

しかも学校でやる問題と違うものが10問はあるから、学校では満点取るようじゃなきゃ…と、暗記の苦手な私は学校から復習用のペーパーを渡される始末でした。しかもそれを、試験前日に提出しに来い、じゃなきゃ試験は次回だと言われていました(学校としては合格率100パーセントでいたいので)。

流石に事情が事情だったので提出なしでも試験を受けさせてもらえることにはなりました。親にも、あとは遺品整理や役場への届けだし行ってこい、と送り出してもらえたものの、前日の晩に帰宅という強行軍だったので、睡眠時間を削って勉強しましたが駄目だろうと思っていました。

結果は合格。

正直、自分でも不思議でした。あれだけ学校から駄目だと言われ、自分でも勉強不足を感じていたというのに。

なんて強運……と思いつつ、帰宅する途中の事。

信号待ち中、足元に紙屑がカサカサ転がって来ました。見過ごすにはちょっと大きいので、途中でコンビニのゴミ箱にでも捨てておこうと拾ったら、クシャクシャに丸まった紙は千円札でした。

周囲に歩く人はいません。工事現場など、外にいる人も見当たりませんでした。

合格といい、この千円札といい、祖父の仕業のような気がしました。

正月程度しか他の孫は訪れない祖父宅を、私はわりとよく訪れる所為か、祖父はその度に小遣いをくれようとしていたのです。ですが、私はそれを受け取らず「年寄りがやりたいと言って渡し物は貰っておけ!」とよく言われていたのです。

最後のお祝いと小遣いと思い、ありがたくその千円は貰う事にして、ミスタードーナ○(祖父はハイカラな物が好きだった)を購入しました。

今は祖父と叔父、2人を拝むことになった仏壇。

なにか試験がある時、何処かに旅行に行く時、私は必ず拝んでから出掛けます。信心はこれといって無いですが、2人なら応援してくれると思うので。

思い込みと言われればそれまでですが、けっこう効くものです。

怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん  

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