私が学生時代にアパレルショップで販売員をしていた時です。
当時ある駅ビル内のショップで働いていた私は、学校のない休日に早番のため午前中の若干混雑している電車で通勤していました。
その時、運良く座席に座れた私は携帯をいじっていました。
ふと横に座っている女性を見ると、失礼な話なのですが、目の腫れぼったい少し不気味な顔つきで、思わず目を背け不快に思われないよう携帯の画面を見るようにしてました。
すると彼女の腕が私のバッグにぶつかったので、抱え直そうとしたら彼女の手首に庭付きの家が描かれていたので少し不思議に思いました。というのも、描かれていた家はとても可愛らしいもので絵本に出てくるようなイラストだったので、その手首に描かれた家に関しては怖さはなかったからです。
目的の駅に着き、そのまま駅ビルに向かうため改札を通ると、少し気になった私は彼女を無意識に探していました。
次の瞬間、改札から上手く通れなかった際に鳴るピンポンという音がしたので、視線を向けて見るとどうやら彼女が引っかかってしまったみたいで、後ろに並んでいた他の利用者が立ち往生している状態でした。
ここまでならよくある光景なのですが、彼女は一度引っかかってしまっているのにも関わらず、何度も何度も同じようにパスケースをあて嬉しそうに笑っていたのです。
その様子を見た周りの利用者には、眉間にしわを寄せている人や、舌打ちしている人、不気味に感じている人など様々でしたが、私は何故かとても怖くなり急いで駅ビルへ入って行きました。
勤務時間に入り、お昼時ということもあり館内全体の客数が少なくなった時、私は別のスタッフと話をしていました。
お店がオープンする前に今朝の出来事をそのスタッフに話をしたこともあり、再びその話題になりました。
怖い話が好きな彼女は、もしかして幽霊じゃないの〜?なんてからかってきましたが、私は、いや、幽霊改札通らないでしょ。と突っ込む程度で、病気の人なのかなと頭の中で考えたりしてました。
すると話をしていたスタッフが、いらっしゃいませと店頭に出て行ったのでお客さんが来たと思い、私もレジチェックを済ませ店頭に出たら思わず固まってしまいました。
今朝見かけたその女性がニヤニヤ笑いながら商品を見ていたからです。
私の様子を見て話しをしていたスタッフも悟ったのか、少しぎこちなかったものの、私を庇うように接客をしてくれとても申し訳なく思いました。
しばらくしてスタッフが私の元に来て、ごめん、無理、会話にならないと伝えに来ました。私はどうしようと困りながらも、よく考えたら今朝彼女のいる場に居合わせただけで何もされてないじゃん。と思い、スタッフに変わるよと伝え彼女の元へ向かいました。
何かお求めのものはありますか?と当たり障りのない言葉を恐る恐るかけると、彼女はニヤニヤしながら、あなたの着てるワンピースどこ?と聞いてきました。内心怯えながらも、こちらになりますと案内すると、彼女は試着したいと言ったのでフィッティングルームへ案内しました。
怖かったので私がスタッフの方へ向かう頭でいたのを察したのか、ここで待っててよ。と言われ、気を紛らわすため近くの商品をいじっていると、フィッティングルームのカーテンが開く音がしたので目を向けたら驚きのあまり、腰を抜かしそうになりました。
そこにはカーテンの間から顔だけ出してニヤニヤしながら前に乗り出している彼女の姿があったのです。
恐る恐る、どうかされましたか?と声をかけると、こっちへ来て。と言われ微妙な距離間を保てる位地まで近付きました。
すると彼女は突然、
今朝隣座ってたよね?
いくつ?
私の家見た?
どうだった?
可愛いね、化粧の仕方教えてよ、
私ね人が見えるんだよ、すごい?すごいでしょ。
みかん食べる?
皮むいてあげようか?
と一方的に喋り出し、あまりの怖さに何も答えられませんでした。
私が恐怖のあまり固まっていると、館内にいた警備員を連れたスタッフが駆け寄って来ました。
今すぐ当ビルからご退場下さい。スタッフが困惑しております。と警備員の男性が間に入り、その日女性は終始ニヤニヤしながら店を後にしました。
その日から彼女は、店の外からこちらを眺めていたり、私が一人の時はアイプチで拡げた腫れぼったい自分の目を見せに来たり、レジにみかんが置いてあったりと、何かと関わってきました。
あまりの酷さにスタッフ、駅ビルの人と
一緒に交番に届け出をしました。
それをきっかけに店長が私に気にかけて下さり、都内の店舗への配属を手配してくれました。
転属に近づくにつれ彼女の姿は見かけなくなりましたが、私はフィッティングルームでの彼女の姿が今でも頭から離れません。
カーテンの隙間から見えた彼女の上半身は何も身につけてなく、素肌にはたくさんの家が描かれた村が出来上がってました。
水車や灯台、処刑場みたいなものや、教会など何をモチーフにしたのかわかりませんが、どの場所にもみかんの木と思われるようなものが描かれており、その村には村民が一人もいない状態でした。
人が見えるんだよ。
その言葉とどう関係があるのかわかりませんが、人間が1番怖いです。
長いお話を読んで頂き有難う御座いました。
心霊的なものではありませんが、今後私が経験した怖い話にそういった内容のものがあるので、機会があれば載せていきたいと思っております。
怖い話投稿:ホラーテラー タバス子さん
作者怖話