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中編3
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動物園(半壊)

※動物園(半怪)を読んでからをお勧めします

もう長い事ここにいた気がする。ここは動物園、どんよりとしたしみ一つない霧が晴れるのを私は見たことがない。

あの夢をみてから生きた心地はしなかった。罪をいつ犯すのかと自分の行動にびくびくと怯える毎日、動物園の檻に私はすでに囚われてしまっていたのだ。

それこそ死ぬまで、それこそ。

寿命はまっとうした。もっと早くに死ぬと思っていたが、いやもっと早くに死にたかった私にとってこの長い月日はもうひとつの地獄だった。

結局、これといった罪などひとつも私は犯さなかったのだ。

しかし今私は「猿」というプレートが掛かった檻の中で吊るされている。

死後になって理解した私は園長にいった

「はい、私は罪深いことをしました

それは確定した未来を知った私が苦しみ続けたように。私が告げる未来によって人を苦しませた事です」

吊るされて血が昇った頭で考える、ただ吊るされているだけの私ができるのは思考くらいだ。

いつこの罪から私は開放されるのだろう?

ここに入れられた者はこんな事を考えるのにも飽きてしまっただろう

そもそも私は未来なんて見えていなかったのかもしれない、長い永遠の時はこんな疑問さえ突きつける

私がもっていたのは天生的な論理能力だったのかも

いや、そうであった。思い出してしまった

思春期になり私は好きな人ができた

でもわかっていた彼は私の事など好きになどならない

優れた論理能力が意識とは関係なく答えを出す

彼の行動ひとつひとつから推測する。気付けば気味悪がられていた

なぜ?

私は生まれながら人を観察して次にどんな行動にでるのか無意識に推測してしまう

それこそずっと彼を見つめて、それこそ。

以来私は自分のこの能力をコントロールすることに努めた

こんな事もあったな

友達と口論の末

「貴方はもうすぐ死ぬ」

こんな心無い事も言ってしまった

当時仲も良く私の未来が見えるという能力を一番に信じてくれた彼女は冗談だったという私のいう事は信じなかった

私の予知を信じた彼女は気に病み自分で命を絶ってしまった

確定した未来なんてないのになんて私は愚かだったのだろう彼女は私が殺したのだ

私の罪は確定した未来を告げる事によってその未来に人を縛り

つける事

本当はそんな超自然的な能力じゃないただ人を見極めて論理的に相手の行動を推測する事だけだった

じゃあ私は冤罪なのか?

そんな事は無い私はそれでも自分が人を苦しめたと理解している

そもそも誰が自分達のした行いを悪いと決めるのだろう

神?仏?天使?園長?

ここに居る人間はあたかも神様や大きな存在によって導かれたと思っている

それは違う自分がここにくる事を潜在的に望んだから

私は友人を自殺に追い込んだ事、にも関わらず占いによって人々を苦しめた事を心の底で罪だと思っていた

聞いて欲しい貴方のした行いを悪いと決めれるのは貴方しかいない

そして喜んで

自分の行いを罪と思える事を

私の真っ赤なおでこに涙が伝う

動物園という地獄の中で私は救われていた

ふと頭に昇っていた血が引くのを感じる

あのどんよりとした霧は晴れていて

私にだけ動物園の門が開く音が聞こえた

目を開けると虹の橋のたもとで微笑んでいる女性がいる

「貴方を許します、だから自分を許して

さあ一緒に橋を渡ろう」

怖い話投稿:ホラーテラー さいとうさん  

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