「俺様は天国から来た悪魔だ!あんたに幸せを運びにやってきた!」
突如光の中から現れたのは悪魔
悪魔がやってきたのは一人の若い女性のもとだった
「はぁ? 天国なのに悪魔?意味わかんないんですけど」
「いや、悪魔って名前なんだよ。実際は天使だから」
「なにそれ新手のナンパ?てかそのコスプレちょーウケる!」
「好きでこんな服着てんじゃないよー!こういう白衣的なもの着てないと天使っぽくないでしょーが」
「ふーん。じゃぁその頭の上のドーナツは?」
「これはリングだよー!なんで頭に食べ物乗せなきゃいけないの?非常食?逆に新しいでしょ」
「まぁ良いや。それよりあんた天使なんでしょ?」
「おお!久々に来たよこの流れ。あのおばあさん以来だよ、こんなにすんなり信じてくれたの」
「誰がばあさんだって?」
「いやいやいや、誰もあんたのこと言ってねーし。そんな口調のおばあさんがいたら、ある意味俺よりも神秘的だよ」
「まあね~」
「褒めてねぇーつうの!」
「で、私の願いでも叶えてくれるの?」
「まぁね。直接的に叶えるわけじゃなくて、幸せになるために少しサポートするくらいかな」
「へぇ~。じゃぁお金ちょうだい」
「あのー話聞いてた?どんだけストレートな願いだよ」
「じゃぁ金持ちにして」
「意味一緒じゃなーい!逆にイヤラしいよその願い!」
「それじゃぁ~玉の輿にして」
「それは自分で探してよー!もっと可愛らしいお願いあるでしょ?好きな人と付き合うために手助けして!とか、告白するための勇気をちょーだいとか」
「そんな願い無いし。それじゃぁ一つだけ叶えて欲しいことがあるの」
「おお何なに?教えて教えて」
「私を殺して」
「………え?」
「だから、私を殺して」
「ど、どうして…?」
「もう生きてるのが嫌になったの。平和な世の中って言われてるけど、実際心の中まで平和かって言ったらそんなことないんだよ。」
「なにがあったの」
「…はぁ。もう直ぐ、私病気で死ぬの。どうせもう死ぬって分かってるなら、今死んだって後悔ないわ」
「望みを失ってどうすんだよ!この世には奇跡があるんだから!なんで死にたいなんて言うんだよ!」
「もう…いいの」
「…まだ何か、理由があるでしょ」
「…さすが天使。嘘は付けないのね。…私ね、大好きだった彼に捨てられたの。お腹に子供がいるって分かった時、とても嬉しかった。けど、彼は逃げた。初めから本気じゃなかったのね…。もう4年くらい前の話。ずっと立ち直れなくて、やっと立ち直れたと思ったら、病気で死ぬって…。ねぇなんで?不公平じゃない?あんたが天使なら神様もいるんでしょ?どうしてこんな不公平な人間にするのよ!…教えてよ……」
「…神様は関係ないんだよ。自分の人生は自分が主役なんだから。神様はそのサポートにすぎない。どんな困難にも立ち向かって行ける、それが人間でしょ」
「…そうだね。じゃぁ今ここで私の病気を治してとかお願いしても、無理なんだ」
「それは自分で乗り切るしかないんだよ」
「わかった。それじゃぁ一つだけ願い叶えて。私の産んだ子供に会いたい」
「…ええ??自分が育ててるんじゃないの??」
「ううん。親に反対されたけど、どうしても産みたくて内緒で産んだの。その後、施設に預けたわ。私といるより幸せになれると思ったから」
「…なるほど、わかった。早めに探し出すからな」
「急いでね。私もう永く生きられないから」
3日後
「本当にここにいるの?」
「おうよ。天使の実力なめんなよ」
「それで、どの子なの?」
「すぐそこにいる、ピンクのワンピースを着た女の子だよ」
「…あの子が……私の…」
「そう、君の子だ。明るく元気な子だ」
「……そっか」
すると少女がこちらに気付き走ってきた
「おねえちゃん、ここでなにしてるの??」
「え?あ、あの、ただ見てただけよ。あなた、お名前は?」
「愛っていうの!先生が、たくさんの人に優しく出来るようにって付けてくれたんだって!」
「愛が溢れてるのね。良い…名前ね」
「おねえちゃん泣いてるの?」
「ううん泣いてないよ。ちょっと目にゴミが入っただけ」
「だいじょうぶ?」
「うん!ありがと!…そうだ、あなたにこれあげる。このクマのキーホルダー。これね、私が小さい頃にお母さんがくれたの。あなたにあげるね」
「ほんと!良いの?」
「うん!あなたは良い子だから」
「おねえちゃんありがとう!」
「それじゃぁ愛ちゃん、またね」
「ばいばい!おねえちゃん!また来てね!」
「ばいばーい…」
「優しい子だったな」
「うん。わたしの子だとは思えない。純粋で、明るくて、笑顔が素敵で…」
「君にそっくりだよ」
「ありがと。…ねぇ悪魔さん。私、もう少し頑張ってみようと思う。死ぬのはいいけどさ、もう一度愛ちゃんに会いたいもん」
「それでこそ人間だ。奇跡は起きるものじゃなくて、起こすものだから」
「ありがとね。願い叶えてくれて。これで死んでも後悔ない」
「そうか。それは良かった。それじゃぁ俺は次に行こうかな」
「うん。わかった。ありがとう」
「それじゃぁな!元気でな」
「じゃぁねー悪魔さーん!」
『これで、また一人心の苦しみを救えた。さぁ次に行こうかな…」
キキーッ!ガシャーン!!
『!?!?』
「おい事故だ事故だ!」
「救急車呼べー!」
『まさか…』
「おい!大丈夫か!どうしたんだ」
「あ…あくま…さん…。さいごの…さ、さいごで、事故っちゃった…。へへ」
「笑い事じゃねーよ!待ってろ!今救急車くるからな!ごめんな!助けてやれなくて!事故を防いだりくらいの力しかもってないんだ…」
「あ、あくまさん…」
「どうした?」
「わたし…死にたくないよぉ…。もっと生きたい…生きて…あの子と暮らしたかった…」
「…ば、ばか!…し、しなねぇーよ!もうしゃべるな!わかったから」
「わたし、汚れてるから…だから、神様が…あの子と…愛ちゃんと会ったことに…おこってるのかな」
「汚れてなんかいない!!君は誰よりも、どんな人間よりも清らかだ!!死んじゃだめだ!」
「…わたし…、生まれかわったら……天使になりたい…。あくまさんのよう…に…優しくて、あの子と…ように愛に溢れた…て、天使に……」
「死ぬなぁー!!!!」
13年後
「ねぇ愛、愛の鞄に付いてるそのキーホルダー。ずいぶん古くない?」
「これ?これは私のお守りなの。なんかこれを持ってると、温かい気持ちになれるの」
「ふーん。誰から貰ったの?」
「もう小さい頃のことだからあまり覚えてないんだ。でも優しくて、綺麗な女の人がうっすらと出てくるの。私はあの時から、こんな素敵な人になりたいって思ってたなぁ」
「その人だれなんだろうね」
「さぁ、でも…たぶん…」
「ん?なあに?」
「なんでもなーい。…あ、あれ?」
「どうしたの?」
「今窓の外から誰か見てたような…」
「あー!ごまかす気だな!」
「そうじゃないってー!ほんとだってばー」
「さぁてと、愛の溢れる世界を作りに行こうかな」
「はい!悪魔さん」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名Kさん
作者怖話