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中編3
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吐寫物

「1等が出ました!1等が出ましたー!」おばあさんは驚きと喜びのあまり心臓麻痺を起こしそうになった。

そう、彼女は福引で見事1等を当てたのだった。

町起こしほどの小規模なイベントだったのだが1等は、海外旅行だった。

行き先は韓国で旅費もたいした額にはならないけどおばあさんは生まれてこの方日本から出たことがないのだ。

夫が生きていた頃は、戦争がどうのこうのだからと言われ続け結局いけなかったのだが、そろそろ肩の荷を降ろしてもいい頃だろう。

偶然チケットは3枚あったので娘と電話で相談した結果、息子とあと黒目がくりくりっとした娘の孫と自分で3人で行くことにした。

出発日、当日おばあさんは、あわてふためいていた。

「バッグ!バッグ!・・あぁ!もう!」部屋中をやたらと探し回る。

なんと、おばあさんは、すっかり海外旅行のことを忘れていたのだった。

それなのになぜ突然思い出したのかというと、朝息子に「かいがいりょこうは?」と言われたからであった、全く情けないのばかりである。

「はぁ・・はぁ・・とにかくパスポートも持ったし、とにかく準備完了ね・・」ようやく彼女の準備は整った。

あとは息子、おばあさんは息子を呼びに隣の部屋のリビングに向かった。

「いくわよ!あっ!なによっその気味の悪い本っ」息子はリビングのソファーに座り込んで本を読んでいた、表紙がなんともいえない異質感をかもし出している・・

「うーんとね・・うん・・いこう!」おばあさんは急ぎ足でデカイずうたいの息子の手を握り、きちんと玄関を施錠したのであった。

しかし乗り物も本当に便利になったものである。つい、この間まで車がどうとか言っていた時代だったのに・・

時代も変わったなぁ・・とつぶやきつつ、おばあさんは息子と両隣で指定席に座っていた。

若干、宙に浮くような感覚に軽い吐き気をもうしたが、それよりも今日の朝、飛び起きた身だ、とても眠い・・

おばあさんがゆっくりと眠りにつこうとした瞬間だった・・どこからかギャーギャーわめき声が聞こえる。

「全く・・うるさいもんだ・・」おばあさんは赤ん坊だから仕方ないと思いながらもしかりつけてやりたい気分になった。

しかし、おばあさんはそれよりも何か思い出さないといけないモヤモヤが浮かびあってきた・・

赤ん坊・・あかん・・あっ!そうだ!孫を家に置いたままであった!娘の息子を預かって一緒に連れて行くはずだったのに、すっかり忘れていた。

おばあさんは不安になり、隣で本に熱中している息子に「孫を連れてくるの忘れていたわ・・」とつぶやいてみた。

すると息子は意外にも安心した様子で「だいじょうぶだよ!ぼくがちゃんとつれてきたよ!」と答えた。

そのとき、飛行機がグラグラと揺れた、息子はどうやら酔ったらしい、息子は読んでいた本にはいてしまった。

「あぁ!もう本なんて読むから!大丈夫?」はいた後の落ち着いた様子を見るとどうやら大丈夫らしい。

しかし、おばあさんは息子の吐寫物をみて叫んだのであった。

「カニバリズムについて」という本の上には胃液で溶けかけた幼児ほどの真っ赤な指とこちらを鋭く睨む黒目のくりくりっとした目玉があった・・

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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