寿命が、来年までと言われた。
どうしようか、考えた。
1年だけ…あと少し思うと同時に、1年間何をすれば良いか困った。
取り敢えず人生を楽しもうと思った。
何が楽しいか…必死に考えた。なかなか、思いつかない。1年間楽しく過ごせる方法…難しい。長いのだ。
取り敢えず、都会で一人暮らしをやってみようと思い、東京に出た。田舎と違って沢山楽しいものもあるだろう。
驚いた。沢山ビルも店もある。ドラマみたいだ…
でも、それも1ヶ月程で飽きた。地元の繁華街が大きくなっただけ…そんな風に考え始めた。
おまけに、素敵な物も沢山お金がないと買えない。
次に、恋をしてみようと思った。きっと楽しいだろう。
でも、なんだろう…男の人と初めて付き合うのは怖い。
ネットで色々検索していると、男装をした女性を見つけた。これだと思った。
ネットで、同性愛者が集まるオフ会に参加し、格好良い人を見つけて、やがて告白して付き合うことになった。
私は正直、その人に惚れていない。でも…
「好き…ん、甘えていい?」
相手に行為があることを、暗示の様に繰り返していると、自然と私は相手のことが好きになると思った。
でも、余りにも相手がワガママで亭主関白タイプなので、嫌気がさした。
ある日、さようならと相手にメールして、怒涛の様な返信が来たけど、そのまま無視した。私には時間がない。
次に、メイド喫茶でアルバイトをしてみた。テレビで見て、びっくりした後一度試してみたいと密かに思っていたから。
店長からはノルマノルマと言われ、お客さんは気持ちが悪いし、全然理想と違った。それ以来メイド喫茶で働く人の見る目が変わった。
気付けばあと、半年残っている。全然楽しめてない気がする。
とにかく、色々な経験をしてみようと、思った。人殺しとか。私は捕まってもどうせ死ぬのだ。関係ない。
実家に一旦帰り、最近産まれた弟を連れ去ると、都会の家に戻った。
取り敢えず、台所のまな板の上に弟を乗せてみる。凄くシュールな光景だ。触るととても柔らかい。スライムの様だ。
包丁で、お腹を刺すと大人しかった弟が、悲鳴を挙げそのまま動かなくなった。
凄い経験をした…
ふと、気づいた。
…何故、私は寿命が一年だと思っていたのだろう。
とても怖い…何故?何故?何故?
実家の両親に連絡した。
「ねぇ、お母さん!私来年死ぬよね?弟が、柔らかくてもう、あれでその…!」
「…は?」
「だから!私の寿命は、来年の6月までだよね?!」
「落ち着きなさい、春香。貴方健康でしょ?タケルに何したの?…最近貴方、お医者様から貰った薬飲んでないでしょ?」
…思い出した。
「貴方、身体は丈夫だからね。あと、80年くらい生きるんじゃないかしら?とにかく落ち着いて」
救急箱の中から、カプセルを取り出し、飲む。頭がクリアになる。また、電話をお母さんに掛け直す。
「貴方また、変な事思い込んでない?薄々分かってたのよ…突然東京に行くって言い出したり。一度またお医者様の所に行きましょう?それと…タケルそっちに居るなら、今から私貴方の家に行くわ」
振り返ると、内臓が飛び出た弟が、まな板の上に乗っている。食材の様に。
…ガタガタ震えてしまう。無言で電話を切ると、私は弟を処理しようとした。食べるのだ…
何故、罪もない弟を殺してしまったのか、涙が止まらない。
腹の中を洗おうと縦に弟を持ち上げると、ダラリと臓器が下に降りた。
「ひ、ひぃ!」
そのまま手を離した。下でグチャリと音がする。
私はきっと、頭がおかしい…でも、それだけでは許されない罰。
「ワガママ…だね。精神病なんか関係ないよ」
誰かがそう、言ってる気がした。
怖い話投稿:ホラーテラー カルトさん
作者怖話