中編5
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狂~セワアロ語~

この世で一番怖いのは人間だ。

__高二の頃の出来事だった。

正直、入学する前はヤンキーに目をつけられないか心配だった。

そんな心配を他所に俺は平和な学生生活を送っていた。

あの事件が起こるまでわね…。

残念ながら学年に1人だけ虐められているA(仮名)という女子がいた。

高一の夏頃からイジメが始まったらしい。

Aも大したもんで休まず登校していた。

高二の頃はクラスが一緒だったこともあり、イジメ現場をよく見た気がした。

イジメなんかしなきゃいいのにと思うが、面と向かって止めることはできなかった。

多分俺以外にもそーゆう人はいただろうけど、皆見て見ぬフリをしていた。

教師ですら、真剣に対応していなかった。

こういう人達はイジメが世間に知られると、気づきませんでしたとか言って誤魔化すのだろう。

そんな大人達に失望感を抱いている時、俺の目の前でイジメが行われていた。

イジメをしている奴らは同じ学年で男子のX(仮名)、女子のY(仮名)、Z(仮名)の3人だった。

高二になってからイジメはエスカレートしているように思えた。

Aは殴る蹴るなどの暴行を加えられていた。

(この世で一番怖いのは人間だ。平気で人を傷つけ、それに快楽さえ感じてる。)

もちろん周りは見て見ぬフリ。

(この世で一番怖いのは人間だ。傷つけられている人を前にしても助けようとしない。)

結局は俺も見て見ぬフリをしている。最低な人間だ…。

そんなことを考えていると、Aが蹴られてバランスを崩し、机に頭をぶつけた。

イジメている奴ら、X、Y、Zは授業が始まりそうになると何処かへ行った。

俺は頭をぶつけて座り込んでいるAが流石に心配になり、声をかけてみた。

『大丈夫?』

『………。』

Aは無言で自分の席に座った。

(無視かよ)

そう思ったが、口には出さないことにした。

次の日、学校に着くと黒板に落書きがしてあった。

何人かは黒板のほうを見ている。

18782+18782=

そう黒板に大きく書かれていた。

『何あれ?』

友達に聞いてみた。

『わからん、ただの落書きだろ。』

確かに誰が見ても落書きだ。

ただ、気になるのは全クラスにこの落書きがしてあったらしい。

そんな落書きのことはみんな忘れ、いつも通りの一日が始まった。

トイレに行こうと思い廊下を歩いていると、Aがまたイジメられていた。

いつものことだったので通り過ぎ、トイレに向かった。

用をたして教室に戻ろうとした時、まだAがイジメられていた。

イジメているやつはいつものX、Y、ZでそのうちのXがAの首に腕を回している。

Aは苦しそうに手をほどこうともがいている。

それでも周りは見ないふりでX、Y、Zに至っては楽しそうに笑っている。

これは流石にヤバイんじゃないかと思い、声をかけた。

『なあ、それはやり過ぎじゃね?』

これでも一応顔は広いのでそいつらと何回か遊んだこともあった。俺も笑顔を作りながら半ば冗談のように装って、止めようとした。

『そおか?』

Xは"首を締めたら人は死ぬ"という事を知らないのだろうか。

Aは白目になり今にも気絶しそうだった。

これくらい大丈夫だって~、とY、Zもヘラヘラしている。

こいつらには良心というものがないのだろうか。Aとは全く親しくなかったが、どこからか怒りが込み上げてきた。

『ゴホッゴホッ』

咳き込みながらゼーゼーと息をしている。

いつの間にか、Aは解放されていた。

『コラァお前らなにやってる!』

後ろを振り向くと怒鳴りながらくる教師がいた。

X、Y、Zの方に目をやると、もう居なかった。

(その逃げ足を他に生かせばいいのに)

Aに大丈夫か?と声をかけ、あっさりと次の授業があるであろう教室に入って行った。

『保健室で休んどきなよ』

Aはコクンと頷いた。

なんとなく保健室まで見送ることにした。

2人とも無言だったが保健室の扉の前で、

『私推理小説とかに出てくる暗号が好きなんだ。イジメてくる奴らも見ないふりをしている奴らも皆嫌な奴、あなたなら止められるかもね。』とAは呟いて入っていった。

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彼女は何を言っているのだろう。普通に考えてイジメのことだろうけど、残念ながら俺は正義のヒーローじゃないんだ。

翌日、事件は起きた。

Aが包丁を振り回し、42人の生徒と止めに入った2人の男性教師が負傷した。

中でもX、Y、Zは傷が深かったため病室で息を引き取った。

俺も危うく刺されるとこだった。

Aは血まみれで寄ってきて、

『こないだイジメを止めようとしてくれたでしょ?私あなたのこと好きになっちゃった』

こんな状況で狂ってる。

『狂ってる。頭おかしいぞ』

恐怖心からか思わず声が震えた。

『狂ってる?狂ってるのはどっちよ!人を平気でイジメる奴らやそれを見ないフリしている奴らのほうじゃない!!』

にんまりとした表情から一転、鬼のような形相でAは包丁を大きく振りかざそうとした。

その隙に教師が止めに入ったのだった。

あとになって知ったのだが、

18782+18782=という落書き。計算すると37564になる、語呂合せで読むと【皆殺し】

つまり、嫌な奴+嫌な奴=皆殺し

あの時これを書いたのはAで、もしかしたらこの事件のことを止めてほしかったのだろうか。この事件の被害者はAなのかもしれない…。

そんな事件も、時間が経つに連れて徐々に薄れていった。

俺は、大学に入り無事に卒業。

そしてそこそこの会社に就職した。

残念ながら単身赴任中であまり会うことが出来ないが、今では妻と子も出来て幸せだ。

たまに高校時代の友達と飲みに行ったりもする。

風の噂で聞いたのだが、Aはあの事件以来おかしくなってしまいこの辺の精神病院に入院しているらしい。

あと、最近少し困ったことにストーカーにあっている。

カーテンの隙間から外を見ると、女がこちらを見て立っていた。

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その語呂合わせ小学校で流行ったなぁと懐かしんでしまいました

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