中編5
  • 表示切替
  • 使い方

笑う煙

あれは真夏の夜の出来事でした…

私は高校を卒業したあと、定職に就かないでフラフラとフリーター暮らしをしていました。

当時、私は一人暮らしを始めたのをキッカケに毎日、アルバイトより遊びに一生懸命になっていました

今思えば恥ずかしいのですが、あの頃の私は

「如何に女の子にモテるか?」という事しか考えてませんでした

そんな単純脳みそな若者ですから

【ソフトマッチョになってチヤホヤされたい】

という願望からトレーニングを始める事にしたんです

私、その頃は夜に働いていたので昼間はコウモリの様に寝ていました

だから、仕事が終わった夜中にトレーニングを始める事にしました。

ですが、流石に夜中にアパートの部屋の中でドタバタと音をたてては近隣の方々に迷惑なので、アパートの近くにある

【池】で行う事にしました

その池はとても広く、外周が約1・5km程あったと思います。

外周はレンガ道になっていて、ところどころに電灯やベンチなども置いてあり、昼間はお年寄りが散歩に使っているようでした。

そんな昼間の賑わい様とのギャップのせいか、真夜中の池はシンっとしていて たまに聴こえる水鳥の羽ばたきや、魚が跳び跳ねる音などが妙に気持ち悪く感じました

しかし、頭の悪い私は

「まぁ、丁度いい長さだし 外周走ってタイムでも録ってみっかぁ」

ぐらいにしか思っておらず、準備体操を軽くすませると 夜の散歩道を一人で走り始めたのです

走り始めてから気がついた事がありました

この散歩道の何ヵ所かは

【木のトンネル】の様になっている場所があったのです。

きっと昼間は日差しを遮ってくれる場所なのでしょう

けれど、真夜中は電灯の光まで遮るので、真っ暗闇を走る事になりました

頭の鈍い私は、半分程走った所でようやく怖いと感じる様になり

来た道を戻るか? それとも進むか?

と悩みました

戻るなら、またあのトンネルを走らくてはなりません

進むにしても、道の先がどうなってるのかよくわかってないので、やはり不安です

結果的にどちらを選らんでも同じなのですが、その場で私はタバコに火を点けて休憩しました。

池の柵にもたれかかり向こう岸を見ると、真夏の星空と高台にある住宅地の灯りがちらほらと見えました

しかし、私はその時に妙なモノを目撃したのです

「ん? あれは…虫かぁ」

違和感を感じたのは、向こう岸に見えた場所でした。

先程、私が軽く準備体操をしてた場所にユラユラとした

【モヤ】の様なモノがあったのです

夏場ですから、私はそれを灯りの下に集まった虫の群れだと思ったのですが、何故か納得は出来ませんでした

何故なら、そのモヤは黒いんですよ…

【澄んだ水の中に墨汁をブチ込んだ】

と表現すべきでしょうか

そんなモヤモヤしたものが、私の走った道の後をゆっくりとゆっくりとなぞってくるのが見えました

しばらくはボケっと見ていたのですが、途中からなにか悪いな感じがするので、急いで先の道に向かって走りだしました。

案の定、進んだ先にも木のトンネルがありました。

人間とは真っ暗な場所では弱気になるらしく、私は木のトンネルの中をを駆け抜けながら

【あのモヤに追い付かれたら自分どうなるのか?】

なんてことを考えていました

人気の無い池の外周から聴こえるのは足音と、ゼヒッ ゼヒッという だらしのない犬の様な自分の息だけでした

本来ならば、それ以外は耳に入らない筈なのに、私は後ろの方から何か聴こえてきたのです

……ッ

………カッ

…カッ…カッ…カッ…カッ…

……カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ

女性のハイヒールの音に近い音が、私からそう遠くない場所から聴こえて来たのです

正直、この時私は半分泣いていたと思います

得体の知れないモノが、明らかに自分を追っかけて来ている!

そう感じた時は、自分の足の速さに絶望を感じました

あぁぁヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイくるなくるなくるなぁ!!!

口からヨダレが溢れるのを構わずに私は心臓の限界がくるまで走り続けました

カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ カッ

謎の足音は全くリズムを崩さず、なおかつドンドン大きくなっていきました

私は後ろを振り返る事が出来ませんでした

少しでも速度を落としたら大変な目に会うかもしれないと思ったからです

その時でした

キャアァぁあハハはハははハはハィハハャハハハハハ

凄いヒステリックな女性の金切り声の悲鳴の様な、笑い声の様な恐ろしい声がすぐ後ろから聴こえました

その奇声が聞こえた時、私は絶叫したんだと思います

あとは、転ばないように…捕まらないようにと願って走っていました

怖い 怖い 怖い 怖い

恐怖に負けそうになりそうな自分の目に、希望の光が射し込みました

50m程先にある外灯の下に私の乗って来た原付がありました

あとは、そこに目掛けて一直線。

私は差しっぱなしにしておいたキーを回し、アクセルを全開にするとノーヘルのまま その場からミサイルの様にぶっ飛んでいきました

※ちなみに原付に乗ってからも、しばらくあの奇声は聴こえてました

私は、このまま帰るとあの声の主が追っかけてきそうな気がするので

帰る途中、コンビニに寄り一服してからケータイで今の時間に起きていそうな悪友に手当たり次第に電話をしました

流石というか、同類が三人起きていて 私が一生言うであろう分の「マジでヤバイ」を聞かされたので 某ファミレスに集まる事にしました

30分くらいで全員が集まり、経緯を聞くと 友人がそれを確かめようと言い出したので私は必死にそれを止めました

しかし若気の至りのせいか、どうしてもその場所を見てみたいので昼間に全員で調べに行こうという意見にまとまり、その日は友人宅に皆で泊まる事になりました

最後に

奇声がどんな感じだかイメージし辛いと思いますが、林屋○ー子の笑い声と、ガラスを引っ掻いた音をミックスさせた声だと考えて頂ければイメージし易い(?)と思います

※後日談がありますが、内容が意味不明ですし これといったオチもないので 要望があれば続きを載せます

怖い話投稿:ホラーテラー ケンゾウさん  

Concrete
コメント怖い
0
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ