私が小学生の時、家には「誰か」がいました
その「誰か」は私以外には見えないようで、暇があれば私はその人と遊んでいました
その人はたまに缶入りドロップをくれて、私はその人が大好きでした
喧嘩した日はいつもその人に相談していた記憶があります
その人は男の人だったような気がします
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その人は父が傍を通ると、いつも父を睨み付けて、何かをぶつぶつ呟き、決まって後から私に言いました
「〇〇(私の名前)はあんなお父さんでも好き?」
私はいつも頷いていました。するとその人はいつも罰が悪そうな顔をして、ドロップをくれました
幼心に私は、何故あの人が父を目の敵にするのか、真剣に考えていました
しかし、むこうはその人が見えていないようですし、私が一人で遊んでいると思っていました
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ある日、また私がその人と遊んでいると、父はむしゃくしゃしていたのか、私の目の前の壁を蹴り
「少しは一人遊びも止めろ!」
と怒鳴り、階段を降りていきました
その人を見ると、父の足が目に当たったのか、目から血が出ていました
私はその時、怒鳴られた悲しさやら、その人の怪我を見た怖さやらで、大声で泣きました
「大丈夫。大丈夫だからね、〇〇」
その人は私の頭を撫でたあと、父の名前を呟き、
「〇〇を泣かせた罰だ。俺と同じ目に遭えばいい」
と低い声で唸るように呟き、私に笑いかけて缶入りドロップをくれました
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次の日でした。私の父が病院に運ばれたのは
原因は眼球の破壊でした
その出来事以来、その人が現れることはなくなりました
けれど今も不思議なことは、教えてもらった筈のその人の名前が思い出せない事です
作者ジキル